【試乗記】スバルXVアドバンス(4WD/CVT)

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    スバルXVアドバンス(4WD/CVT)

唯一で王道

フルモデルチェンジから3年を経て、再びの改良を受けた「スバルXV」。国内外の有力モデルがひしめくコンパクトSUV市場において、XVだけが持つライバルにはない魅力とは? わが道を行くスバル製クロスオーバーの、唯一無二の個性に触れた。

華やかさが増した(?)エクステリア

スバルXVが新しくなった。といっても、見た目が大きく変わったわけではない。スバルはこまめにアップデートするのを常としていて、小変更ながら着実なリファインを行っている。現行の3代目XVは2017年に登場し、毎年改良を重ねてきた。当初は1.6リッターと2リッターのガソリン車という設定だったが、2018年にハイブリッドシステム「e-BOXER」の搭載モデルを追加。2019年には2リッターのガソリン車がラインナップからはずれ、内外装に手が入れられた。

コンパクトSUVは人気の高い激戦区だけに、強力なライバルたちに立ち向かうためには定期的なアップデートが不可欠なのだ。スバルもご多分に漏れずSUVが販売の主力となっており、XVは屋台骨を支える存在と言っていい。2020年9月に発表されたマイナーチェンジモデルが今回の試乗車だ。最上級の「アドバンス」というグレードで、e-BOXER搭載モデルである。

エクステリアの変化は注意深く見ないとわからない。フロントグリルのデザインが変わっているが、エンブレムの左右に飾りがついた程度。素朴系から少しばかりチャラ顔になった感じで、華やかさは増したように思える。バンパーが大型になったこともあって、SUV風味もアップした。ホイールデザインも新しくなり、ボディーカラーに「プラズマイエロー・パール」が加わっている。

インテリアはスバルらしい実用的な設(しつら)え。使い勝手はいいが、ダッシュボードのセンターに位置するモニターが今となってはこぢんまりしているように感じる。「日本カー・オブ・ザ・イヤー2020−2021」を受賞した新型「レヴォーグ」に大きな縦型センターディスプレイが用意されているのに比べると、いささか古めかしい。マイナーチェンジで根幹の部分を大幅にいじるのは無理なのだろう。細かいことを言えば、使いづらい場所にあるUSBソケットもできれば位置を変更してほしい。

快楽を生むモーターアシスト

e-BOXERというのはマイルドハイブリッドシステムである。ただ、スバルはハイブリッドという表記はしなくなっていて、「水平対向エンジンと電動技術を組み合わせたパワーユニット」と説明している。ハイブリッドという言葉から、過度にエコとか低燃費というイメージを持たれてしまうことを警戒しているのだろう。スバルの強みである水平対向エンジンの電動化バージョンという唯一性を強調するのは、正しい戦略だ。

実際、燃費の面で目覚ましい性能を持っているとは言えない。WLTCモードで15.0km/リッターという数字は平凡なものだ。試乗では600kmを走り、一度燃料補給をしなければならなかった。山道も走ったとはいえ、リッター11km台の燃費は少々物足りない。実家の者がXVの1.6リッターガソリン車に乗っているというwebCG編集部員によると、通勤に使っていて燃費はリッター13kmほどだという。ガソリン車のカタログ燃費は13.3km/リッターだが、乗り方によってはe-BOXERモデルに引けを取らないエコ性能を発揮するようだ。

e-BOXERの価値は別なところにある。モーターアシストの恩恵を感じるのは、日常のふとした場面なのだ。交差点を曲がってステアリングを戻して直進に入った時、あるいは高速道路で混雑を抜けて加速した時。アクセルを踏み込んでいくと、心地よい浮遊感のようなフィールがもたらされる瞬間があった。強烈なスピード感というような種類のものではなく、もっと繊細な感覚なのだ。運転が好きなドライバーにとっては、得も言われぬ快楽である。

ワインディングロードも走ってみたが、箱根ターンパイクのような中高速コースではあまりモーターの恩恵は感じられなかった。絶対的なパワーでグイグイと走るのではない。むしろ小さなカーブが連続するツイスティーな道のほうが楽しめた。思いのほか回頭性がよく、生き生きと元気に走る。

有用なものも、そうでもないものも

e-BOXERモデルには新たにアダプティブ変速制御「e-アクティブシフトコントロール」が採用されていて、ドライブモード切り替え機構「SI-DRIVE」でスポーツモードを選択していると作動する。コーナー進入時のアクセルやブレーキの操作状況からスポーティーな走行を行っていると判断すると、高いエンジン回転数を維持し加速時には積極的にモーターアシストを加える機能だ。今回の試乗でも、ダイレクト感を強めるのに貢献していたのだろう。

マイルドハイブリッドながら、EV走行も可能だ。ゆっくり発進すると、モーターのみで音もなく進んでいく。30km/hを超えたあたりでエンジンがかかり、1600rpmぐらいの回転数でバトンが受け渡されるのだが、その際に不自然なショックがあった。13.6PSと控えめな出力のモーターなので、コントロールが難しいのはわかる。無理にEVモードをつくらなくてもいいのではないかと思うが、商品性を高めるためには必要だという判断なのかもしれない。

運転支援システムの「アイサイト(ver.3)」はもちろん全車に標準装備。ACCには「ECO-C(エコクルーズコントロール)」というモードがあって、選ぶと燃費向上を図ることができるが、追従時の加減速がかなりもったりするので使う気になれなかった。

新しいものとしては、システムによって安全性を高めながらドライバーをサポートする機能が追加された。「フロントビューモニター」である。メインモニターの上に位置するマルチファンクションディスプレイでクルマの前方の様子を確認できる機能だ。駐車時や発進時などで役立つ装備である。

マルチファンクションディスプレイは、メインモニター(というかディーラーオプションで用意されるナビゲーションシステムのモニター)と連動し、それを補完する役割を持つ。駐車場などでは2つの画面で周囲を確認することができるし、ナビを使いながらパワーユニットの作動状況や燃費などの情報を確認できる。2つ合わせればかなり使い勝手がいい。

独創的すぎる操作ボタンの表記

マルチファンクションディスプレイには、フロントだけでなく側方の画像も映し出すことができる。助手席側前方の様子がわかるので狭い道で役に立つが、スイッチがわかりにくいのが気になった。「SVM」と記されているのが「Side View Monitor」の略だとは普通は気づかないだろう。

AKBとかBTSなら知らなくても不都合はないが、機能が不明なボタンは怖くて押せない。ボンドカーのように、運転席が飛び上がる緊急脱出装置だったり後方に火炎を放射する機能だったりしたら困るではないか。センターコンソールに「AVH」というボタンがあり、これも何なのかわからない。「Auto Vehicle Hold」、つまり電動パーキングブレーキを保持する機能だとは考えもしなかった。

まあ、それもオリジナルな技術を大切にするスバルらしいところだと考えることもできる。XVというクルマ自体が、他メーカーのコンパクトSUVとは一線を画した成り立ちだ。背が高いボディーなのに重心の低い水平対向エンジンを搭載しているというぜいたくなつくり。スペースを犠牲にしても全車四輪駆動を貫くところに意地が感じられる。アピールしやすい燃費性能ではなく走りの快楽を追求するマイルドハイブリッドというのも、わが道を行く姿勢の現れだ。

唯一無二の高い技術が詰め込まれていれば、人目を引く奇抜な意匠はいらない。いや、XVは見た目だってなかなか悪くないと思う。エキセントリックさを競うようなデザイン合戦から距離を置くことで、図らずも王道を行く。SUVのワイルドさと日常使いできる簡明なスタイルのちょうどいいブレンドだ。サイズ感も絶妙で、実用性が高い。ほどよい道具感のマルチパーパスなクルマである。スバリストや技術オタクでなくとも、魅力的な選択になると思う。

(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)

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