【レビュー】トヨタ・ハリアーZ プラグインハイブリッド(4WD/CVT)
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トヨタ・ハリアーZ プラグインハイブリッド(4WD/CVT)
やっぱりこのクルマがないと!
実はこれが初取材
もちろん、ロジカルにあれこれ考えたわけではない。ブランディングもありましょう。価格の違いもありましょう。しかし、同じトヨタのラインナップに、同じ「GA-Kプラットフォーム」の同じようなサイズの都市型クロスオーバーが、果たして2台も必要なのか?
……なんでこんなことを思い出したかというと、目の前にいるのだ、ハリアーが。2022年9月発表、同年10月発売の、その名も「ハリアーZ プラグインハイブリッド」である。「え、いまさらハリアーPHEVのリポート?」と思った御仁もおられることだろう。登場は半年も前のおクルマだが、実は試乗するのはこれが初。理由は、取材したくてもずっと乗れるクルマがなかったからだ。「天下のトヨタが、発売から半年以上も人気車種の試乗車を確保できないなんて」と、サプライチェーンの混乱と半導体不足の影響を実感していた次第である。それもまぁ、今は解消されつつあるようですが。
そんなわけで、久々に見(まみ)えた現行型ハリアーだが、まじまじ見ると結構攻めたデザインをしている。薄いアッパーグリルに切れ長のヘッドランプは、SUVのお約束からかけ離れたものだし、サイドビューの抑揚も意外としっかりつけられている(特にリアタイヤまわり)。横一文字のリアコンビランプも、こんなに上下を絞って突き出していたとは。街なかでフツーに見かけるクルマなので気にしていなかったけれど、あらためて見ると、なんというか結構スゴい。
一方で、PHEVならではのお化粧については意外と控えめ。同日に取材した「プリウスPHEV」もそうだったので、もう「PHEVは特別なクルマ!」という時代ではないのでしょう。
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「トヨタ・ハリアー」といえば1997年に登場した都市型SUVのパイオニア。現行型は2020年登場の4代目で、2022年秋にPHEVが追加された。
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外装における差別化は意外と控えめ。ホイールの意匠が違ったり、各部にスモーク調もしくはブラックの装飾が施されたりする程度だ。
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インテリアではダッシュボードとドアトリムに金属メッシュ調のダークレッドパイピングオーナメントを採用。装備類では最大1500W(AC100V)の外部給電システムや、床下透過表示機能付きのパノラミックビューモニターが標準で備わる。
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12.3インチのTFTカラー液晶メーター。試乗開始時はバッテリーがほぼ満充電の状態で、EV走行距離は82kmと表示されていた。
さすがはHEVのパイオニア
走りだしは存外に穏やかだ。最初は「そりゃHEVの『Z』より200kgも重いんだもんな」と思っていたのだが、あらためてカタログを見ると、PHEVはフロントモーターのパワー/トルクが高められていて、システム出力も306PSとマッチョになっている。実際、ドライブモードを変えれば、アクセルペダルをがばちょと踏めば、結構な加速を見せてくれるので(といっても電動車としては驚くほどではないが)、ノーマル状態でのたおやかな走りは、意図的になましたものなのだろう。
その印象を助長するのがパワートレインのスムーズさで、滑らかな転がり感(……といって伝わるでしょうか? 電動車のなかには、EV走行時にクロカンのローレンジみたいな抵抗感を伴うものもあるんですよ)や、アクセルオフ時の唐突感のなさ、穏やかな制動のかかり具合など、とにかくすごく吟味されている。走行モードを変えてわざとエンジンを回してみても、その音・振動はきっちり抑え込まれていて、せいぜい「あぁ、今エンジンかかったね」と気づく程度だった。こうしたあたりは、さすがHEVのパイオニア。上から目線で恐縮ですが、やっぱりトヨタには一日の長があると思う。
乗り心地も、少なくとも走行がかなった横浜かいわいの下道では、まさに快適至極。段差を超えても、交差点をくいっと曲がってみても、とにかく気になるトコロがない。Kカメラマンともども全身全霊でアラを探してみたのだが、それでも「ちょっとピッチングが大きい? ……いや、気のせいかも」といった具合で、結局ハリアーが馬脚を現すことはなかった。
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「AUTO EV/HVモードスイッチ」と「EV/HVモード切替スイッチ」は、ドライブモードセレクターとともにセンターコンソールの前方に配置される。
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PHEVに用意されるグレードは、最上級仕様の「Z」のみ。シート表皮は本革で、前席にはメモリー機能付きの電動調整機構やヒーター/ベンチレーション機能が装備される。
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豊富なラインナップが用意される「ハリアー」のなかでも、後席シートヒーターが装備されるのはPHEVだけだ。
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動力性能に関しては、HEVモデルよりパワフルなフロントモーターが特徴。最高出力は62PS、最大トルクは68N・m高められている。
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走行用のバッテリーは車両中央の床下に搭載。車内空間への干渉を抑えつつ、低重心化にも配慮したつくりとなっている。
日常系クロスオーバーかくあるべし
そして、ここで冒頭の疑問に戻る&翻意するわけである。やっぱりこれからも、トヨタの都市型クロスオーバーにハリアーは必要だよなぁと。まだ見ぬ「スポーツ」を含むクラウン系のそれは、やたらと走りに一家言あるクルマばかりになりそうだし、昔ながらのトヨタっぽい、「ザ・中庸」な上級SUVは、これからも存在感を示し続けるに違いない。
見た目はちょっと兄ちゃん系だけど、実はマジメで優しいクルマ。……なんて書いたらトヨタの関係者から「営業妨害だ!」って怒られるかしら? でも本当にそんな感じがしたのですよ。ちょっとデザインはいかついですが、普通に「いいSUVないかしら?」と探している人、オススメです。
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
全長×全幅×全高=4740×1855×1660mm/ホイールベース=2690mm/車重=1950kg/駆動方式=4WD/エンジン=2.5リッター直4 DOHC 16バルブ(最高出力:177PS/6000rpm、最大トルク:219N・m/3600rpm)/フロントモーター=交流同期電動機(最高出力182PS、最大トルク270N・m)/リアモーター=交流同期電動機(最高出力54PS、最大トルク121N・m)/燃費=20.5km/リッター(WLTCモード)/充電電力使用時走行距離=93km/価格=620万円
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