【試乗記】レクサスNX350“Fスポーツ”(4WD/8AT)
突きつけられた難問
スポーティーなキャラの350
まず、大きすぎず、小さすぎず、日本で乗るにはほどよいサイズ感だ。全長は4660mmで、基本骨格を同じくするトヨタの「ハリアー」や「RAV4」と同等。コインパーキングにもすんなり止められるいっぽうで、後席と荷室のスペースには余裕があるから家族や仲間とアクティビティーを楽しむのに好適だ。
もうひとつ、オプションの「ソニックカッパー」というボディーカラーが目を引くことと合わせて、塗装の質がいい。クルマに興味があろうがなかろうが、誰が見てもいいものだと分かるぐらいのオーラを放っている。ちなみにボディーカラーの価格は税込み16万5000円なり。
すでに案内されているように、2021年に発表された2代目レクサスNXは、2024年春にマイナーチェンジが施されると同時に、アウトドア志向を強めた“オーバートレイル”という仕様が加わっている。ここでレクサスNXのパワートレインのラインナップをおさらいしておくと、「NX450h+」が2.5リッターのプラグインハイブリッド、「NX350h」が2.5リッターのハイブリッド、NX350が2.4リッターターボ、そして「NX250」が2.5リッター自然吸気という4種類になる。
それぞれのキャラクターをざっくりと説明すれば、450h+がプレミアムでラグジュアリー、350hが好バランス、350がスポーティー、250がベーシック、というあたりか。350hと250はFFと4WDの駆動方式が選べるけれど、450h+と350は4WDのみの設定となる。
ホワイトの内装は“Fスポーツ”専用で、サイドが張り出した形状でドライバーの体をホールドするスポーツシートと、グリップしやすいように形状が工夫されているステアリングホイールも“Fスポーツ”専用。外観だけでなく、インテリアからも特別な雰囲気が伝わってくる。
感性に心地よいチューニング
8段ATとの連携も含めて、アクセルをこれだけ踏むとこれくらい速度が上昇するといった相関関係が、人間の感性に心地よくなるようにチューニングされている。と、ここまで書いて、生まれて初めて乗ったクルマが電気自動車だったりハイブリッド車だったり、電流が流れた瞬間に最大の力を発揮できるモーターを搭載したクルマしか知らないという方は、このフィーリングをどう感じるのか、不安になる。
「人間の感性に心地よくなるようにチューニングされている」と書きましたが、「エンジン大好き人間の感性に心地よくなるようにチューニングされている」に改めたい。
8段ATは素早く、シームレスに変速するというだけでなく、「もうちょっと加速したい」というアクセル操作を敏感に察知して、ギアを落としてエンジン回転を高めてくれる。ステアリングホイールにはシフトパドルが備わっているけれど、街なかや高速道路を気持ちよく走るぐらいなら、パドルを操作せずとも、意中のギアを選択してくれる。トランスミッションの中で、先回り、先回りして仕事をこなす、有能な執事が仕事をしているようだ。
足並みがそろったコーナリング
ワインディングロードでは、「足並みがそろう」という感覚を味わう。例えばタイトなコーナーに進入する際、4本の足それぞれが独立して動きながら、結果としてフラットな姿勢を保つ。
“Fスポーツ”に標準装備の「AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)」は、4輪のショックアブソーバーの減衰力をそれぞれ独立して制御する仕組みであるけれど、これと状況に応じて前後のトルク配分を75:25〜50:50の間で可変する4駆システムの連携によって、足並みがそろった感覚を伝えるのだろう。
不思議なのは、コーナーに進入するターンインの状態では軽やかな動きのクルマだと感じるのに、コーナーを脱出する際にはどっしりとした安定感が得られることだ。4WDのトルク配分によるものなのか、AVSによるものなのか、もちろんすべての要素が関わっているのだろうけれど、新鮮なファントゥドライブを感じた。
動力性能か燃費か
ひとつ残念だったのが、そんなにエンジンをブン回したわけでもないのに、車載計による燃費がふたケタに届かなかったこと。ちなみにレクサスによると、プラグインハイブリッドとハイブリッドを足したNXの電動化率はグローバルで56%を超えているという。レクサスNXの2台に一台以上がモーターを積んでいるのだ。
WLTCモードの燃費を比較すると、NX450h+が19.6km/リッター、NX350hが19.9km/リッター、NX350が11.7km/リッター(“Fスポーツ”の4WDで比較)。プラグインハイブリッドのNX450h+はオプションなしでも749万5000円〜と価格帯が異なるけれど、NX350hとNX350は価格が接近している。
直4ターボのパンチの効いた爽快な加速を選ぶのか、優秀なハイブリッドシステムによる燃費を選ぶのか。お金の話が続きますが、税込み24万4200円なりのオプションの“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムの素晴らしい音質で音楽を聴きながら、自分ならハイブリッドと純エンジンのどちらを選ぶかを考える。けれど、結局、答えは出なかった。これは相当に難しい選択で、クルマや運転が好きな人ほど頭を悩ませるのではないか。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1865×1660mm
ホイールベース:2690mm
車重:1840kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:279PS(205kW)/6000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1700-3600rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104V/(後)235/50R20 104V(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:11.7km/リッター(WLTCモード)
価格:630万6000円/テスト車=721万0200円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックカッパー>(16万5000円)/“Fスポーツ”専用オレンジブレーキキャリパー<フロント「LEXUS」ロゴ>(4万4000円)/235/50R20 104Vタイヤ&20×7 1/2“Fスポーツ”専用アルミホイール<ブラック塗装>+パンク修理キット(-2万2000円)/ドライブレコーダー<前後>(4万2900円)/ITSコネクト(2万7500円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/デジタルキー(3万3000円)/おくだけ充電(1万3200円)/ルーフレール+パノラマルーフ<IR・UVカット機能付き/チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/後席6:4分割可倒式シート<電動格納機能付き>+後席シートヒーター(7万7000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(24万4200円)/寒冷地仕様<LEDフォグランプ・ウインドシールドデアイサー等>(2万6400円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:724km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:284.7km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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