宮型が消滅の危機? 知られざる現代「霊柩車の世界」(前編)

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宮型が消滅の危機? 知られざる現代「霊柩車の世界」(前編)

2016年10月17日 10時00分

昔は霊柩車(れいきゅうしゃ)の定番だった、宮殿のような屋根を載せた「宮型霊柩車」が減っているそうです。見かける機会も少ないため、若い世代の人の中には「宮型」の存在自体を知らない人もいるかもしれません。今回は、東京都内で霊柩車を製造・配車している「東礼自動車株式会社」にお伺いして、最新の霊柩車事情を聞いてみました。

取材に応じていただいた、東礼自動車株式会社 常務取締役 村田和隆さん

――まず、基本的な質問ですが、霊柩車は葬儀屋さんが所有しているものではないのでしょうか?

日本国内では、地域によってかなり違いがあります。東京、大阪、京都、名古屋など、人口が集中している地区の場合は、当社のような霊柩運送専門会社が存在し、葬儀会社の依頼を受けて配車しています。しかし、そのほかの地区では、葬儀社が所有している場合が多く、霊柩運送専門会社は稀な存在です。特に宮型車については、メンテナンスに手間がかかる関係で、所有している会社は少ないと思われます。

――今、使われている霊柩車には、どういう種類があるのでしょうか?

大きく分けて、「宮型」「洋型」「普通車」の3つの種類があります。

白木の宮型霊柩車(リンカーン)

洋型霊柩車(リンカーン)

――普通車というのは?

当社ではトヨタ・エスティマです。外側は何も手を加えず、内側だけ霊柩車仕様に改造しています。後ろの座席を外して、棺を入れるスペースをつくる形ですね。従来あったような派手な装飾はなく、安い料金で改装するというのが主流になってきています。

内側だけ改装している普通車(エスティマ)。これも霊柩車だが、外見では分からない

――宮型霊柩車は少ないのでしょうか?

当社で保有する霊柩車、232台のうち、宮型は約35台ですね。東京は人口が多いので、いまでもたまに注文がきます。ただし、数は減っていますね。

――宮型が減っている理由は?

大きくわけて、3つあると思います。1つめは、葬儀にお金をかけない方が多くなってきていること。葬祭業全体として、料金が低廉化している傾向がありますね。2つめは、いま火葬場は市町村の運営が主流になっていますが、地域の住民が嫌がるため「宮型霊柩車の使用・乗り入れの自粛」を要請したり、禁止したりするケースが多くなっていることです。そして3つめは、「目立ちたくない」「隣近所に知られたくない」という人が増えていること。霊柩車も普通車で出棺する形が増えています。

――霊柩車は、いつごろできたのでしょうか?

葬送の際に初めて霊柩自動車が運転されたのは、1910年代の後半(大正前半期)です。最初の霊柩車は、大阪の鈴木勇太郎率いる「篭友」という葬儀社が大正6年8月につくった「ビム号」だと言われています。

日本初の霊柩車だと言われている「ビム号」(1910年代)

昭和20年代までの車種については、正確にわかりません。ちなみに当時は、国産車では重量的に耐えられず、霊柩車はすべて外国車でした。宮型霊柩車も大阪が発祥だと言われていますが、年代は不明です。

初期の宮型霊柩車(1933年 フォード)

――京都、名古屋、金沢など、地域によっていろんな霊柩車があったようですね

そうですね。宮型は形が決まっていないんですよ。お客さんの要望に合わせて作っていたので、形や装飾は地方によって特色がありますね。

パッカード(1960年5月、金沢)

ニッサンジュニア(1963年7月、名古屋)

――皇室の葬儀にも、御社のクルマが使われたそうですね

1987年に執り行われた、高松宮殿下の斂葬の儀(れんそうのぎ=皇族の葬儀)ですね。当初、宮内庁所有の日産・プリンスロイヤルの寝台車(皇室専用の霊柩車)を使用する予定でしたが、あまりに長い期間、使われていないことで躊躇され、当社のキャデラックで落合火葬場まで搬送しました。このプリンスロイヤルの寝台車は、宮内庁に今も保管されているようですが、現在はほかの特注車も何台かあるそうです。

宮内庁所有の日産・プリンスロイヤル寝台車。ナンバープレートはなく、菊の御紋が付けられている

高松宮殿下の斂葬の儀で使用されたキャデラック寝台車

――宮型霊柩車は、もう新たに作っていないのですか?

はい。今はほとんどが洋型、もしくは普通車になってしまいましたね。このままだと宮型霊柩車が消えていってしまうので、どこか博物館で保存できないかと考えています。ただ、維持費が相当かかるので厳しいですね。宮型は保存が難しいんですよ。置いておくだけでも劣化していきますし、せめて写真だけでも残しておきたいと思い、いま集めています。

貴重な写真が収められたアルバム

霊柩車についての講演も各地で行っているという村田さんは、貴重な文化遺産として後世に残すべく、霊柩車の歴史についてまとめた書籍を現在執筆・編集中だそうです。後編では霊柩車の製造工場に潜入しますので、ご期待ください!

 

(村中貴士+ノオト)

[ガズー編集部]

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