1932年にホルヒ、アウディ、バンダラー、DKWの4つのメイクスを統合して発足したアウト・ウニオン社は、第2次大戦後一時国有化された後、59年からはダイムラー・ベンツの支配下に置かれていた。65年にVW傘下となり、69年にはNSUと合併してアウディ-NSU-アウト・ウニオンAG（85年にアウディAG）を形成。以後はもっぱら「アウディ」ブランドでVWグループの上級車種を受け持っていた。75バリアントは、NSUと合併する直前の68年秋に登場した2／4ドアのFFサルーンたる75のバリエーションである2ドア＋テールゲートのステーションワゴン。そもそもこのシリーズは、2サイクル3気筒エンジン搭載のDKW・F102から受け継いだボディに、ダイムラー・ベンツ設計の直4OHV1696cc、72PSエンジンを搭載して65年にデビューしたアウディ72PSに端を発する。翌66年にはエンジンのチューンを高めた80（80PS）、さらに1760cc、90PSに増強したスーパー90が登場、68年には72PSは75（75PS）へ発展すると同時に1496cc、55PSにスケールダウンした廉価版の60といったラインナップを揃えていった。このシリーズは「高品質な中型実用車」というアウディのブランドイメージを築く礎石となり、72年、80の登場を機に新世代へバトンタッチした。

全文を表示する

閉じる