R-Rシルバー・スピリットのベントレー版として、'80年同時にデビューした。ミュルザンヌとはル・マン24時間が開催されるサルテサーキットの最速ストレート出口のコーナー名で、かつてW.O.時代のビンテージ・ベントレーがル・マン24時間レースで大活躍した歴史にあやかったものである。クラウド／Sタイプの時代から両ブランドによる仕様の差は事実上消滅しており、このミュルザンヌもエンジン、トランスミッションからサスペンションに至るまでシルバー・スピリットと全く同一となっている。アピアランス上の違いはフロントエンドに屹立するパルテノン神殿の代わりに、ベントレー伝統のラウンドシェイプのグリルが取り付けられていること、R-R版に採用されるバァ（玉杢）・ウォルナットが、シンプルでスポーティーな正目のウォルナットに換えられることくらいで、コノリー社製最高級レザーハイド、ウィルトンのウールカーペットなどの素晴らしいインテリアはシルバー・スピリットと変わらない。'87年にはエンジンがインジェクション化されると共に、ターボRやエイトで成功したややハードなサスペンションセッティングが施されたミュルザンヌSとなった。更に'90年には前述のインジェクションがボッシュのモトロニックに換装され、そのほかすべての機能がコンピューター管理される最新モデルにアップ・トゥ・デイトされるが、R-R版の兄弟車のように車名は変更されることなく、引き続きミュルザンヌSと呼ばれる。写真はミュルザンヌ。

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