1956年から製作が開始された、コンペティションを主目的とする250GT。’52年に登場した250MMに代わるモデルといってよいだろう。1気筒あたり約250ccということで、総排気量では2953ccとなるV12コロンボ・ユニットは、レーシングトリムでは280PS／7000rpmと、ほぼ時を同じくして生産されていた250GTボアーノ／エッレーナなどよりは遥かに高いチューンが施されており、軽量の総アルミニウム製ボディも相まって、素晴らしいパフォーマンスを発揮した。当時世界的に流行していたテールフィンをささやかながら取り込んだ、ピニンファリーナ・デザイン、スカリエッティの製作によるベルリネッタボディは、エレガントながら面の張りやラインの緊張感がコンペティツィオーネを感じさせる極めて魅力的なもの。’57年には、ノーズ回りを中心に、ボディの大幅なモダナイズが施される。デビューイヤーの’56年から、フランスのロードレース、トゥール・ド・フランスで実に8年連続で総合優勝を収めたことから、250GTトゥール・ド・フランス（T.d.F）とも呼ばれるようになった。’57年にはヘッドライト回りを中心に、ボディに大きなモディファイが施された。前期型、後期型共に、現代でもカリスマ的人気を誇る伝説的なフェラーリ・コンペティツィオーネといえよう。

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