'50年代英国スポーツサルーンの傑作となった、ZA／ZBマグネットに代わる新MGサルーンは、BMCお得意のバッジエンジニアリングでオースティンA55ケンブリッジ／モーリス・オックスフォードをベースとすることが決定、ピニンファリーナ作品としては傑作とはいい難いA55系の4ドアサルーンボディも、グリルをMG伝統のセンターに独立した縦型に換装しただけで流用を余儀なくされた。1959年に発表されたマークIIIは、ZA以来のBMC・Bタイプ4気筒OHV1489ccユニットがツインSUキャブレターと共に踏襲されるが、どういう訳かパワーは1.5PSダウンの66.5PSとなり、重量増も相まってパフォーマンスは大幅に後退してしまった。しかし、動力性能面よりも大きな問題はZA／ZBの正確なラック＆ピニオンのステアリングが、原始的な（そしてコストも安い）カム＆ペグに換えられてしまったことで、かつてマグネット・サルーンの魅力だったシャープなハンドリングは完全に喪われた。“名ばかりのMG”と評されたように、マグネットファンの顧客の落胆はBMC経営陣の予想を遥かに上回るものだったようで、デビュー2年目の秋には早くもBタイプエンジンをMGA1600マークIIと同じ1622cc、68PSにスケールアップ、同時にホイールベースを1インチ、前後のトレッドを2インチほど拡大したマークIVに発展する。マークIVは細部に小規模もモディファイを受けつつ、'68年まで生産された。

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