1906年の創業以来、ロールス・ロイスにとっては初の経験となった自社製スチールボディのスタンダードサルーン、シルバー・ドーンに代わるモデルとして'55年に発表されたシルバー・クラウドは、'59年に念願のV8ユニットと共にシルバー・クラウドIIに進化する。R-R社にとってはもう一つの基幹事業たる航空機エンジンのテクノロジーも注入されたといわれる、オールアルミ製V8ユニットは6230ccのキャパシティーを持ちながら、従来のFヘッド6気筒4.9リッターエンジンよりも軽量に仕立てられていた。パワーは同社の伝統に従って未公表、“必要にして充分”と言うのみであった。'62年、シルバー・クラウドIIIに進化、外観上ではデュアルヘッドライトと鋭角的にされたフロントフェンダーのラインが目立つ程度だが、エンジンは約7％のパワーアップを受け、ステアリングサーボにも改良を受けるなど、その改良はいかにもR-Rらしく慎重で多岐にわたるものであった。'65年にシルバー・シャドウに後を譲ってラインナップを去るが、それは同時にR-Rの伝統的スタイルの終焉を意味していた。写真・データとも1960年のシルバー・クラウドII。

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