【移動販売車な人たち】フェラーリレッドの本格ピッツェリア「ベスビアーナ」

九州・山口エリアのイタリア車ファンの間で、ちょっと知られた移動販売車があります。それが、真っ赤なボディにフェラーリ風のロゴが入ったこのクルマ。一見するとモータースポーツのトランスポーターのようですが、屋根には煙突があり、もくもくと煙が立ち上ります。そう、この移動販売車、実は本格的なピザを提供するピッツェリアなのです。店名は「ベスビアーナ」。車内にはピザを焼く薪窯があり、ピッツァイオーロ(ピザ職人)が手際よくナポリ風ピザを焼き上げます。

きっかけはイタリア人大工との出会い

オーナーである中野繁さんの本業は、山口県下関市を拠点に店舗の内装や個人住宅のリフォームを手掛ける建築業。もともとイタリアの食事やおおらかな人間性にシンパシーを感じていたことや、「世界を渡り歩くイタリア人大工と出会い、本場のナポリ風ピザの話題で盛り上がった」ことで、ピザを通じて、「本業では出会えないいろいろな人と出会いたい」と移動ピッツェリアを始めることにしたそうです。

まずはイタリアへピザ修業に行くところから始めた本格派
まずはイタリアへピザ修業に行くところから始めた本格派

移動ピッツェリアを始めるに当たっては、実際にイタリアに渡ってピッツェリア数軒を訪問。持ち前の陽気さを生かして「図々しくキッチンに入り込んで視察し、参考にさせてもらった」とか。ここで生地の配合やソース、窯の構造などを習得したと言います。外装の赤色はフェラーリの「ロッソスクーデリア」で、イタリア・モデナの「フェラーリ博物館」に行き、日本から持参した色見本と合わせながら決めたそうです。

薪窯、什器、外装の塗装まで、本業を活かしてすべて自作したという
薪窯、什器、外装の塗装まで、本業を活かしてすべて自作したという

車内で立って作業できることや窯を設置するスペースがあることなどを考慮し、手に入れたバンは「日産アトラスMAX(いすゞエルフUTのOEM車)」。移動販売のベース車両として人気が高く、「状態のいい個体を見つけるまでに数カ月かかった」と言います。窯だけでなく、冷蔵庫を収めるキャビネットなどの什器、外装の塗装まで全て本職の腕を活かした「自作」で、2011年3月に完成しました。

窯に火を入れるのは営業開始の4時間前!

提供するのは、もちもちした生地が特徴の「ナポリ風ピザ」。オーダーを受けてから作る本格派
提供するのは、もちもちした生地が特徴の「ナポリ風ピザ」。オーダーを受けてから作る本格派

本格的なピザ窯は火をつけるのに時間がかかるため、営業開始の約4時間前から薪をくべて準備。イベント会場への移動途中も火を絶やすことなく燃やし続け、到着後すぐにオーダーを受けられるように窯内の温度を約400度にまで高めます。

ピザの作り方も本格的。オーダーが入ってから生地を伸ばし、トマトソースやバジル、モッツァレラチーズ、オリーブオイルを乗せて仕上げます。狭い車内で大型の「パーラ(ピザを窯に挿入する道具)」を駆使し、わずか数分で焼き上げる様子は、街かどのピッツェリアとまったく同じ。「マルゲリータ」や「マリナーラ」などの定番メニューのほか、季節の野菜などを取り入れたオリジナルピザなどを販売しています。

イタリア産のモッツアレラチーズを使ったマルゲリータ(1,000円)
イタリア産のモッツアレラチーズを使ったマルゲリータ(1,000円)

九州・山口エリアのイタリア車ファンの間では有名な存在に!

店名の「ベスビアーナ」は、ナポリの象徴であるベスビオ火山にちなんだもの。「ベスビオっ子」を意味し、ロゴはフェラーリのロゴを模してデザインするなど、徹底的にイタリアにこだわっています。九州・山口エリアの食のイベントだけでなく、「ひときわ目立つ真っ赤なボディの存在感で、イベントが華やかさを増す」とフェラーリオーナーズミーティングや、イタリア車専門店のオープニングイベントなどから声がかかっているそうです。

九州・山口エリアでは、イタリア車ファンの間では有名な存在になっている
九州・山口エリアでは、イタリア車ファンの間では有名な存在になっている

ドイツ車専門ディーラーに呼ばれたときには「チンクエチェントやフェラーリなどの赤いイタ車がどっとやって来た」と苦笑い……。ほかに個人宅のパーティーにも呼ばれるなど、九州・山口エリアのイタ車ファンの間では有名な存在になりつつあります。イベントなどで見かけたら、ぜひこの本格的なイタリアの味を楽しんでくださいね!

(取材・文・写真:テッド・オオタニ、編集:木谷宗義ノオト)