トヨタ博物館…安東弘樹連載コラム

「いや、恐れ入りました。」

その場所を後にした瞬間に出てきた言葉です。

先日、名古屋方面で仕事があったため、これはチャンスと思い、愛知県長久手市にあるトヨタ博物館に行ってきました。

日本カーオブザイヤーの選考委員になって3年あまり経ちますが、日本最大級の自動車博物館である、この場所に行ったことがないことに実は引け目を感じていたのです。

訪問経験がある人の評判は、とてもよく、私も雑誌やWEB等では見聞きしていましたが、これまで中々、訪れる機会に恵まれませんでした。

このご時世でさらに足が遠のいていましたが仕事がらみで名古屋に行くのであれば、ここはコロナウィルス感染に配慮しつつ訪問するべきだと思ったのです。

名古屋まではもちろん、自分のクルマを自分で運転して向かいましたので、仕事が終わった後、一人で宿泊し、翌日は終日フリーでしたので、ゆっくりと見学することにしました。

インターネットで当日、営業しているかを確認したところ、8月末までは小学生には無料開放していることも分かり夏休み中ということで、ある程度の混雑も覚悟して、状況によっては入館を断念するつもりだったのですが、それは杞憂に終わりました。

博物館の駐車場に入って拍子抜けすることになります。数えるほどしかクルマは停まっておらず一瞬、臨時休館を疑ったほどです。

恐る恐る入口受付に向かうと、通常通り開館していましたので、まずは一安心しました。

入り口では自動検温器が供えられ、手のアルコール消毒も施し、距離を保って受付を済まし、いよいよ入館です。

ちなみに入口のロビーに私以外のお客さんは一人しか見当たらず3密を避けるのに苦労は必要ありませんでした。むしろ閑散、といった趣です…。

博物館の広さを、一層実感することになりました。

ここでトヨタ博物館の概要を紹介させていただきましょう。

開館は1989年ですが昨年2019年4月に改装され、大きな二つの建物で構成されています。

一つはクルマの歴史を140台の貴重な展示車をみながら実感、体感できる「クルマ館」。そして、もう一つがクルマ文化の歴史を紹介する「文化館」。

二館とも、じっくりとみようとしたら一日ではまわれないほどの展示物の数と質といってよいでしょう。

まず、「クルマ館」ですが、自動車の黎明期19世紀末から20世紀初頭に作られた数々の欧米メーカーによる伝説の名車の「実物」が出迎えてくれますので、まずは、そこで驚かされます。

事前にある程度の情報を得てはいましたが、多少はTOYOTAに“寄った”展示になっているのではないかという私の予想は最初にくつがえることになりました。

考えてみると20世紀初頭までは日本のクルマ産業は誕生していませんので当然と言えば当然なのですが、それぞれのクルマの説明書きには、まるで自分の会社の伝説を紹介する様な誇らしげな文章が綴られており、そこで、「トヨタ博物館」という名前にはなっているが、TOYOTAが作った「自動車博物館」なのだということを理解するに至りました。

ここで一気に、私の中で、この博物館に対する敬意が大きくなり、より見学に気合が入ったのは言うまでもありません。

その結果、見学が終わった後には抜け殻の様になってしまったのですが(笑)。

クルマ館の展示車は年代別に並べられ、どれも1台の展示だけでもマニアが喜ぶ様なモノばかりです。

何台か車種を紹介しようかとも思ったのですが、どれも自動車史においてエポックメイキングなクルマばかりで、何を紹介しようか迷ってしまうので、敢えてここには列挙しません!

ただ、日米欧の時代ごとの名車達140台が皆さんを待っていますので、是非、ご自分で体感してください。

受付で貰うパンフレットには音声ガイドアプリを無料でダウンロードできるQRコードも付いていますのでクルマに詳しくない方でも十分に楽しめると思います。

それにしてもコロナ禍で、その日、私が確認できたお客さんは恐らく全部で10組ほど。おかげで抜け殻になるほど、じっくりと1台1台噛みしめながら、みることができたのですが、やはり館の存続まで心配になってしまいました。

TOYOTA本体の財務状況はコロナ禍であっても揺るぎないとは思いますが、この貴重な博物館を今後もずっと続けていただきたいと切に願います。

ちなみに館内の展示物は基本的に全て撮影が可能ですので、100枚は写真を撮ったでしょうか。

本当にお腹いっぱい楽しむことができました。

そして「文化館」ですがクルマ館と2階部分で通路が繋がっていて入館と同時に目に飛び込んで来るのが、数々のクルマ関係の書籍や様々なメーカーのエンブレム等が展示してある「クルマ文化資料室」です。

敷地面積こそ「クルマ館」程ではありませんが、その「質」に驚かされました。

19世紀末から20世紀初頭の、あらゆる車関係のポスター、世界中の車雑誌(中には世界最古の車雑誌も!)そして無数のカタログ、そして車に関する世界各国発行の切手までもが網羅されています。そしてミニカーやプラモデルをはじめとする玩具の展示も充実していました。

ここも、じっくり観ようと思ったら時間がどれだけあっても足りません。

更に本当に貴重な資料は展示せず、温度湿度まで管理された倉庫に保管されているとのことです。

いや、本当に恐れ入りました。

展示室を出て、ショップに「たどりついた」ときには全身の力が抜けるのが分かったほどです(笑)。

ショップで家族にお土産を買い、カフェでアイスカフェオレを飲み、やっと一息つきました。

カフェでも私以外のお客さんはお母さんと小さな男の子の二人連れのみ。

館内の要所要所にいらっしゃった制服を着た案内の女性の数の方がはるかに多いという状況で何だか申し訳ない気持ちになってしまいました。

コロナウィルスによって経済的に日本全体が打撃を受けていることを実感しつつ、圧巻の博物館をくまなく体感できたことの充実感の狭間で疲労感も濃い複雑な心境になったのが本音です。

でも断言できます。クルマ好きはもちろん、あまりクルマに興味がない方でも、ずっと日本の基幹産業だったクルマの歴史や伝説を知ることで、何かを感じるはずです。

コロナウィルス感染が収まらない中でのGo To トラベルキャンペーンで混乱している方がほとんどだとは思いますが、夏休みの想い出が今年は、まだない、という方や夏休みの終わりが近づいているのに自由研究が終わっていない小中学生の皆さんと、そのご家族の皆さん!
現状、3密とは無縁でありながら貴重な体験ができるトヨタ博物館を訪れてみてはいかがでしょうか?関東地方や近畿地方にお住まいの方でしたら、クルマで向かえば道中のさまざまなリスクも軽減できます。

これまで、あまり長距離ドライブの経験がない方も、これを機会に挑戦してみるのもよいと思います。もちろん、無理をしないで、こまめに休憩するのもよいでしょう。

せっかくですから、クルマに乗ってクルマの歴史や感動に触れてみて下さい。

参考までに私は新東名高速道路のパーキングエリアで一回、トイレに寄っただけのノンストップで走り続けたので5時間で千葉の自宅から名古屋まで着きました。

皆さんは、それぞれ御自身のペースで、余裕を持ってドライブを楽しんで下さい!

博物館をみる前の道中でも、何か発見があるかもしれませんよ!

安東 弘樹

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