モテないカーマニアよ、モテないままでいて!:清水草一が行く! モテないカーマニア調査隊

モテないカーマニアのフナタン(36歳独身)。中高時代、制服デートができなかったことを今も悔やんでいるフナタン。そこで恋愛観がストップしちゃったフナタン。代わりにモテないポンコツばかり買ってくるフナタン。そんなフナタン4号(4台目の愛車)は何?
フナタン「この間まで初代ワゴンRロフトを持っていたんですが、ついこの間、某ツインエアに買い替えました」
オレ「え、そんなモテそうなクルマ(注/フィアット・500ツインエア等)買っちゃったの!!」
フナタン「ええ、スバルのツインエアです」

カーマニアらしく適度にステアリングを切り、ヘッドライトだけでなくハザードまで点灯。全体の構図をやや斜めにしてスピード感を出しているところが泣かせる。しかしクルマは87年式スバル・サンバートライ(2気筒)。この世にこれ以上モテない感じのツインエアがあるだろうか……。
愛しい。愛しよフナタン。オレはフナタンを愛してしまいそうだああああああああああああ!

いったいなぜフナタンは、ここまでモテない感じのクルマが好きになってしまったのか。それを解明するためには、彼の車歴を知る必要がある。
これがフナタンの生涯全愛車表である。

これを見てわかること。それは、フナタンも昔は正統派のクルマ好きだったという事実だ。最初の愛車は新車のミニクーパー。その後FR、VTEC、ミッドシップと、カーマニアが好む要素を次々と征服している。まさにカーマニアの王道。頂点への道ではないか!
私もカーマニアとして頂点を目指してきた。ただ私の場合、4台目の愛車で本物の頂点(フェラーリ)にアタックしてしまったため、その後は頂点から降りてダイハツ・エッセECO(5MT)まで征服したが、フナタンの頂点は、シビック・タイプRだったように思える。
フナタン「そうなんです。鬼ローンで新車で買ったんですけど、速すぎてビビって3000kmで売っちゃいました。どうも自分はあんまり速いクルマは向かないなぁ、と思いました」
そこからはモテないカー一直線。本人はモテないカーマニア一直線なのである。
フナタン「清水さん、デルタディーゼルを買ったんですよね。僕もデルタ持ってたんですよ。これです」
オレ「こ、これがデルタ!?」
フナタン「ダイハツ・デルタワイドです」

うおおおおお! モテないデルタ最高! もうモテるデルタなんてどうでもいい! 今どきインテグラーレなんか乗ってるカーマニアはカッペ! モテないデルタがこの世の頂点!

オレ「ところでさ、クルマ4台もどこに置いてるの?」
フナタン「地元の山奥に、カーマニア仲間で共同でガレージを借りて、そこに何台か置いてます」
オレ「しっぶ~い。それってやっぱり全員モテないカーマニア?」
フナタン「既婚者もいますけど、未婚者はモテない感じです(笑)。そこ、豚舎だったんです。廃業した元豚舎です」
私は背中に電気が走るのを感じた。
モテないカーマニアたちが、モテない感じのクルマを共同で置いている元豚舎。これはもう芸術だ。モテない芸術。モテないも極めれば美しい。この美は永遠に残すべきである。

私はフナタンに、実は説教を垂れるつもりでいた。「モテたいなら行動せよ!」とか。もはやそんな気持ちは雲散霧消し、逆の気持ちになった。
モテないってスバラシイ。モテるようになる必要なんてこれっぽっちもない! フナタンはこのまんまでいい。フナタ~ン、ずっとモテないカーマニアのままでいてね~~~~~~!
フナタン「え、そうですか? 僕はモテたいですけどねぇ」
たぶんムリ。

(おわり)

プロフィール

清水草一
モータージャーナリスト。慶応大学卒業後、集英社で「サーキットの狼」の池沢さとし氏の担当編集者となる。フェラーリを崇拝しており、「大乗フェラーリ教開祖」を名乗る。
公式サイト https://www.shimizusouichi.com/

企画・編集=ノオト

[ガズー編集部]