スペインのクルマ事情~バルセロナ編~

スペイン第2の都市で、1992年にはオリンピックが開催されたバルセロナは、建築家アントニ・ガウディが暮らし、彼が残した作品群が世界遺産となるなど、景観そのものが芸術溢れる街だ。だから建物を簡単に建て替えることもできず、人やクルマなどの回遊性がいい道づくり、街づくりが難しいと思ったが、来てみてびっくり、とても調和のとれた街だった。

やはりコンパクトカーとSUVが人気

バルセロナと言えば、日産自動車の工場がある。リーフの電動パワートレインを積んだE-NV200を作っていたり、主にSUV、商用車を作っている。だから日産車をよく見かける。そしてスペインの自動車ブランド、セアトももちろん多い。フォルクスワーゲン傘下のセアトだから、ブランドを知らなければ、フォルクスワーゲンやアウディと見間違えるほど。
EU全土に言えることだが、歴史ある街には必ず細い道路があるので、コンパクトカーが主流となる。表通りから1本入ると、片側に駐車車両が数珠つなぎで停まっているのでなおさら道が細い。もう少し室内空間が広いクルマとしてSUVを選ぶ人も増えたが、こちらもやはり主流はコンパクトSUV。フルサイズSUVなどまず見ない。

一流ブランドのショップが並ぶ、バルセロナで一番きれいな道であるグラシア通り。セアト、日産そしてドイツ車を多く見かけた

パリのシャンゼリゼ通りに比べたら、車道の道幅は狭いが、その分歩道が広く、人が歩きやすい街づくりとなっている。これは観光客にとってもありがたい。

ガウディの作品であるカサ・ミラ前。主となる車道とは別にもう1本歩道と歩道の間に1車線分の車道がある。この道沿いで人が乗り降りするために停車しても、主道路と分かれているので渋滞のきっかけにならない配慮がなされている
歩道は3車線分くらいのゆとりある広さ。ウインドウショッピングを楽しみながらのんびり歩けて気持ちいい

また歩行者優先の施策も多く見受けられる。バルセロナで最も観光客が集まるサグラダ・ファミリア前は、観光客でごった返す日曜日には通行止めにして、人とクルマを完全に分ける。

サグラダ・ファミリアに登り、下を見た写真。中央あたりに通行止めの柵が置かれる。そして付近はタクシーの乗降場となる

タクシーは黒地に黄色のカラーリングで統一される。欧州車が多いが、トヨタ・プリウスやオーリスも多い。

偶然、プリウスのタクシーに乗れたのでドライバーにプリウスの印象を聞いてみたら「何より燃費がよくて静かなのがいい。ハイブリッドが先進性を維持し、故障もないので安心して運転できる」と大満足だと言う

ゴシック地区と呼ばれる旧市街は、道が狭いので、クルマの進入を規制して人が歩きやすい環境を作っている。

サンタ・エウラリア大聖堂前も一般車両進入禁止になっていた。ツアーガイドと観光客が自転車に乗って観光巡りをするのもおもしろそうだ
このようにゴシック地区の道は細く観光客が多い
ゴシック地区のはずれに歩いてきたら、珍しいクラシックカーが展示されていた
若者やお母さんにもクラシックカーは注目の的

せっかくなのでバルセロナ観光スポットを紹介

街の至るところに見どころがあるバルセロナ。やはりガウディ作品を見ずして帰れない。そこでカサ・ミラから行ってみた。もともとは富豪の邸宅として建てられたが、世界遺産になった以降も住居やオフィスとして使用されているアパートメント。曲線を基調とし、どの部屋にも日光が届くように設計されている。中には展示館があり、カサ・ミラやガウディについて学べる。

波のようなデザインの外観が印象的なカサ・ミラ
展示フロア。模型や映像を観ながら、ガウディの生い立ちなどを学べる
建物の内側。外観と同様、曲線でできている。これにより日光をうまく各部屋に行くように考えられているそうだ
カサ・ミラから徒歩1分で到着できるカサ・バトリョ。これはガウディが改築したもの

まずカサ・ミラでガウディのことをしっかり勉強したら、サグラダ・ファミリアへ。着工からすでに130年が経過しているが、それでも出来上がらない。しかし建築技術の進歩なども手伝って、なんと2026年に完成する予定だと公表された。ならばぜひ完成する前に観ておいたほうがいい。

内部もこのように精巧な作りになっている。光をうまく操る芸術家らしく、あらゆるものが光と影で立体感のあるものに映し出されている
先に出来上がっている東側の生誕のファサード。どの部分を切り取って撮影しても実に画になる
光の魔術師、ガウディにかかればステンドグラスから入る光でこのような幻想的な空間を生み出す。太陽の角度によって雰囲気が一変するのも驚きだ。午前中の光のほうが人気があり、かなり前から予約して行かないと入れない
西側の受難のファサードもすでにここまで出来上がっている

新市街より丘側にあるのがグエル公園。これもガウディの作品でサグラダ・ファミリアと比較すると、とてもポップな感覚溢れるかわいらしい公園だ。

まるでお菓子で作ったかのような家がある。丘に作られているので、地中海まで見渡せる。遠くにサグラダ・ファミリアも見える
ここも予約制で一度に入場できる人数を限定することで、公園内をゆったり散策できる

ゴシック地区で観ておきたいのは、カタルーニャ音楽堂とダリ美術館。サルバドール・ダリの美術館は、バルセロナからクルマで2時間くらい離れたフィゲラスに大きなダリ劇場美術館があるが、ゴシック地区にもあるので今回はこちらへ行ってみた。カタルーニャ音楽堂は、サン・パウ病院と同様、バルセロナ生まれの建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーによって建てられ、世界遺産にも登録されている。

ちょうどフラメンコのショーが夜にあったのでネットで予約して行ってみた
天井にあるステンドグラスが立体的でとても美しい
ピンと尖った髭がトレードマークのダリ。クルマも好きだったようで、フィゲラスの美術館には、自分が所有していたキャデラックを使った作品も展示されている
ダリが描いた作品の中にクルマがあった

ガウディやドメネク、ダリのほかにもピカソやミロの美術館もあり、さまざまな芸術に触れることができるすばらしい街がバルセロナだ。その芸術性の高さは街の景観にも表れ、普通に道を走っているクルマですら、いつもよりかっこよく見えるから不思議だ。

(写真・テキスト:寺田昌弘)

[ガズー編集部]