あの動物への衝突対策も! オーストラリアのクルマ事情~ケアンズ編~

雄大な自然が魅力のオーストラリア。東側には世界最大の珊瑚礁があるグレートバリアリーフ、中央には巨大なウルル(エアーズロック)など見どころがたくさんある。国土は日本の約20倍だが人口は約1/6の約2,000万人。主要都市は海辺を中心に点在し、交通手段はクルマが中心だ。2016年の新車販売台数は約117万台で登録台数は、1,000万台を超える。ひと昔前であれば、V8エンジンを載せたサルーンやシングルキャブのピックアップが主流であったが、ここ数年はSUV人気が高く、オーストラリアのクルマ事情も変わってきた。今回は、オーストラリア東岸のケアンズに行き、クルマ事情を観てきた。

カンガルーバーに荷台があるクルマが一般的

湾岸沿いの道路では少ないが、内陸部へ向かう道路には夜から早朝にかけ、カンガルーやワラビーが飛び出してくることも多い。私もバイクで縦断していた時に、早朝にワラビーが目の前を横切り、並走したこともあった。また夜走っていた時には、道路上に何頭もの牛が寝ていてひやっとしたこともあった。2011年の政府発表データによると、商業的に捕獲できるカンガルー数は人口より多い3,400万頭。道でばったり会うのは仕方がない数だ。だから不意にカンガルーが飛び出してきた時にクルマの乗員を守るためにカンガルーバーを装着しているクルマが多い。
(左から)純正バンパーを取り外し、フロント周りを鉄製パイプで覆うカンガルーバーや、純正オプション部品で選べるもの、そしてランプバーを兼ねた簡易的なバーなど、スタイルも様々だ
車種的にはトヨタ・ランドクルーザー、ハイラックス、日産・パトロール(日本名:サファリ)など4WD車が多い。典型的なスタイルはシングルキャブで、リヤの荷台はボディより横幅のあるタイプになっているのがオーストラリアならではの仕様だ。

昔からオーストラリアならではのスタイルのトヨタ・ハイラックス。鉄製パイプがフロントからサイドまで回り込んで保護するカンガルーバーを装着。シングルキャブで荷台はリヤタイヤのタイヤハウスが荷台に突出せず、フラットになっている。アオリは低めで荷物の積み下ろしが楽だ

またオーストラリアならではのスタイルは「ユート(ute)」。乗用車の乗降性のよさと積載性を両立したクーペユーティリティスタイルは、ニュージーランド、アメリカ・西海岸でも一時流行ったが、やはり本場はオーストラリア。ホールデン・コモドア、フォード・ファルコンなどといったハイ・パフォーマンス・サルーンをベースとしたユートは、使い勝手のよさだけでなく、若者を中心にファッションとして人気も高かった。ちなみにスバルもレオーネベースのブランビー(アメリカ名:ブラット)というユートを販売していた。ただ現在オーストラリアでは自動車生産がされていないため、ユートは徐々に減っていく。

フォード・ファルコンXR8 パシュート250 ユート(2002年)。5リットルV8エンジンを搭載し、荷台はボディ同色のシートカバーを装着。若者がファッションで乗る典型的なスタイル

最近はSUVが大人気

そんなオーストラリアのクルマ事情も、街中を観るとだいぶ変わってきている。2016年の販売台数比率をみると、SUVが37.4%と年々増えてきている。そして使い勝手のよさだけでなく、乗り心地など快適性を向上している小型ピックアップも18.5%となり、市場の過半数をこれらのクルマが占める。

トヨタ・RAV4やマツダ・CX-5、日産・デュアリスなど日本車のSUVが人気

2016年の小型ピックアップで最も売れたのはトヨタ・ハイラックスだ。2015年にフルモデルチェンジをし、積載性のよさはそのままに、室内が大型化され居住性がよくなり、特にダブルキャブはSUVと遜色ない快適性が人気だ。もちろん従来通りのシングルキャブに大きな荷台があるタイプなどバリエーションが豊富なこともユーザーにとって選択肢の幅が広くてうれしい。

ケアンズの高級ホテル前には、ハイラックスの展示が。ダブルキャブはSUVとして認知されてきている
ポートダグラスのマリーナで観たハイラックスのダブルキャブとシングルキャブ。同じ車種とは思えないリヤビューの違い
ケアンズの街中では、レクサスやアウディなども見かける。特にレクサス・RXは、人気あるSUVのなかで憧れの1台
日本でも大人気のトヨタ・C-HRも見かけた
アメリカで大人気のSUV、トヨタ・ハイランダーもオーストラリアではクルーガーとして販売している。3.5リットルV6エンジンと8速AT、2WDとAWD仕様がある

ヴィッツやプリウスも元気に走る

乗用車はトヨタ・カローラ(日本名:オーリス)、カムリ、ヒュンダイ・i30、マツダ・3(日本名:アクセラ)などが人気だ。ひと昔前であれば、ホールデン・コモドア、フォード・ファルコンが人気であった。しかしオーストラリア国内生産がなくなったことや燃費や操安性のよさ、質感の高さ、値ごろ感から日本車、韓国車に人気車種が大きく変わってきた。

ぱっと見ると2台のヴィッツに見えるが、右の型式はエコー、左はヤリスと、オーストラリアでは途中で車名が変わった
ケアンズのタクシーの多くはプリウスだった。これは欧州でも北米でもよく見かける光景
街中では初代プリウスにも遭遇。ケアンズでもハイブリッドカーの文化が積み重ねられている
ケアンズのとある交差点。ランドクルーザープラド、ランドクルーザー70そしてRAV4が走る。やはりランドクルーザーは、オーストラリアで絶大なる信頼を得ている

ケアンズで見た道路のいいところ

オーストラリアは日本と同じ左側通行で、レンタカーを借りても走りやすい。今回はトヨタ・カローラ(日本名:オーリス)を借りて市内やポートダグラスまで走ったが、そのなか道路そのもので気になったことを紹介しよう。道路は基本的にイギリススタイルなので、ラウンドアバウトがあったりするが、おもしろいのが道路にあった駐車スペースと、クルマと歩行者の共有道路だ。

道路の中央部にある駐車スペース。これなら例えば右側から来て駐車し、所用を済ませたら、対向車線に出てきた方向へすぐ戻れる
遊歩道沿いに何軒もお店があるので、クルマで荷物を運び込みたい。そのため制限速度10km/hにしてクルマも走行可能にしている。人とクルマが共生している道だ

ケアンズのレンタカー事情

ケアンズは街中でもレンタカー会社はあるが、やはり在庫は空港のほうが断然多い。今回乗ったレンタカーはトヨタ・カローラで、このサイズは価格も手頃で車種も豊富。ほかにも4WD、ハイエースなど用途に合わせて様々な車種がある。そして変わったところでは、キャンプをしながらオーストラリアを旅する旅行客のためにキャンピングカー専門のレンタカー会社がある。これも旅する人数や日数でいろんな車種が選べる。私は以前、フレーザー島へキャンピングカーをレンタルしていったが、この島は白い砂でできていて舗装路などないため、4WDしか行けないのでランドクルーザー70のキャンピングカーでいった。砂の上を走るため、慣れないドライバーはスタックしていたので、初心者にはおすすめしないが、それなりにオフロード走行の経験がある人には普通の旅では得られない、自由な旅を楽しめる。

今回乗ったトヨタ・カローラ(日本名:オーリス)。街中でも多く見かけた人気車種
ハイエースのレンタルキャンピングカー。ルーフよりさらに高い部分が寝室になっている
長期滞在者向けにこうして大型のレンタルキャンピングカーもある

【旅のおまけ】ケアンズならではの見どころ

ケアンズには手つかずの大きな熱帯雨林があり、海にはいくつも島があり、珊瑚礁が広がる。2つの世界遺産があり、ひとつは「ウェット・トロピックス」と呼ばれる世界最古の森だ。ほぼ四国と同じ面積の大きな熱帯雨林は、恐竜が棲息していた時代から変わらず今も存在する貴重なエリア。ここでは2つの異なる乗り物に乗れる。おすすめのルートは、まず中心地からバスでスミスフィールド駅へ向かう。そこから「スカイレール」と呼ばれるロープウェイに乗る。ロープウェイから眼下に見える熱帯雨林は圧巻だ。途中、レッドピーク駅、バロンフォールズ駅で途中下車して散策ができる。終点はキュランダという町だ。ここでランチをしたり、散策してから今度は「キュランダ観光鉄道」に乗って市内中心地へ戻る。
もうひとつは手軽に珊瑚礁をみられるグリーン島。グレートバリアリーフで唯一珊瑚が堆積してその上に熱帯雨林が生い茂る珍しい島だ。ただこちらは完全に観光地化しているので、島でのんびりしたい場合は、フィッツロイ島へ行くことを勧める。

「スカイレール」と呼ばれるロープウェイ
ロープウェイから下を見ると、こうして熱帯雨林が広がっている
バロンフォールズ駅で下車してバロン渓谷を見に行く。自然が作り出す造形の美しさ、力強さに驚く
キュランダ観光鉄道の旅。テレビ番組「世界の車窓から」のオープニング映像で使われていた人気の鉄道。こちらにもバロンフォールズ駅があり、ロープウェイの反対側から渓谷が見られる
中心地にあるマリーナ。ここから約50分でグリーン島へ
島内にはレストランやプールなど施設は充実している。砂浜は白く、シュノーケリングすると魚だけでなく、ウミガメも見られた
市内中心部にはホテルの階上に動物園がある。「ケアンズ ワイルドライフ ドーム」はコアラやワニが身近に見られるだけでなく、園内にジップラインらロープを使って遊べる施設がある。全天候型なので天気が悪い日には、ここは穴場
園内で見られる動物たち。小型な動物が多いが、びっくりするほど大きなワニもいる

ケアンズは成田や大阪からLCCで直行便も飛んでいて時差もほぼないので、気軽に行ける。世界遺産をはじめ、大自然を楽しみながら海外ドライブを楽しむにもおすすめの場所だ。

(写真・テキスト:寺田昌弘)