タイの自動車カルチャーに触れてみてわかった日本の進むべき道

タイ・バンセンストリートサーキットで開催された市街地レースの開催に合わせて、サーキット周辺やバンコクの市街を歩き回り、その自動車文化に触れることができました。

もしかすると、読者の皆さんは、この記事に「激しい渋滞」や「トゥクトゥク(3輪自動車タクシー)」、「古いクルマ」、「クラクション」といった、いわゆるタイっぽさの紹介を期待されているかもしれません。
実際、5年前に初めて訪れたときは、まさにそのようなインパクトあるタイの交通事情に、良い意味で感銘を受けた記憶があります。

しかし今回、タイに再訪問してみると、まずは目につくそうした雰囲気と同時に、当時と比べればはるかに発達した交通社会と古き良きタイらしさを保ちながらカーライフをエンジョイする人たちの姿が強く印象に残りました。
ということで、ここでは現地で印象に残ったカーカルチャーや、レースの様子、そして一般的な街並みなどから感じたこと書き綴ってみたいと思います。

往年の名車が続々登場!

バンセンストリートサーキットに到着してすぐにワタシを迎えてくれたのがこのクルマ。 三菱ランサーエボリューションVIII MR! いきなりマニアックなハナシで申し訳ありません。日本では約3,000台しか流通しなかった希少車、8MRです!
実は私、かつてはこのクルマのオーナーだったものでして、いきなりの再会にそれはそれは興奮させていただきました。

ランエボとくれば、インプレッサも掲載しないわけにはいきません。スバル・インプレッサWRX 、いわゆるGDBの丸目ですね。かつて日本の自動車メーカーがWRCを席巻したあのころを思い出させてくれる名車です。当時のクルマをこうしてキレイに、そして大切に乗ってくれているのは嬉しいですね。
タイではいまラリーも盛り上っているということで、ランエボやインプレッサといった往年のWRCベースマシンの人気が高いのも理解できます。
サーキット周辺には日本のスポーツカーが元気だった頃を思い起こさせてくれる、心躍るクルマが目白押しでした。

おっ! GC8だ! と思いきや、コロナの輸出仕様カリーナEでしょうか。こんな素敵な旧車もたくさん走っています。一方、その後ろに走っているのはマツダ・アクセラ(タイ名:Mazda3)。
現行車はやはりトヨタ車のシェアの高さが歴然ですが、その他の日本車メーカーも存在感を発揮しています。

なつかしのEGシビックもピカピカの現役です。オーナーさんがしっかり手をかけて、大事に乗られている様子が伝わってきます。
北米仕様を真似たシャコタン&鬼キャン、いわゆるヘラフラッシュ仕様になっていないところが好感を持てます。彼らのイメージでカスタマイズしていることが伝わってきますよね。

カスタマイズを楽しむのはスポーツカーオーナーだけではありません!

バスのカスタマイズも熱すぎます。派手な電飾やカラーリングを施したド派手なバスがたくさん走っています。 早朝のバス停で目立っていたのがこれ。ビバンダムの人形を20体鎮座させるとともに、スピーカー6連で爆音をかき鳴らして乗客に存在をアピールしていました。
フロントガラスにcrazybusthailand.comというURLが書いてありますが、今回の取材をコーディネートしてくれたタイ人のナットさんによれば、ド派手なバスのデコレーションを楽しむグループがあるそうで、結構はやっているそうですよ。
日本で言うところの「デコトラ文化」と似ているのかもしれません。

取材移動車のハイエースは内装にもこだわりがみられました。
インパネとステアリングは木目調に統一。ホーンボタンにはBLITZのロゴが輝いています。

町中にあふれる「ひらがな」に親日感を覚えます

タイにはあちらこちらで日本語があふれています。
「がまいません」
いまいち意味不明なのもお約束ですが、強い親しみを感じざるを得ません。

コンビニのPOPにも「おいしい」の文字が。なんでひらがな? と思いますが、日本だと「GOOD!!」とか「DELICIOUS!!」と英語で書かれるのと同じことなのだと思います。最初は面食らいますが、これも日本に対する親近感の現れだということが徐々に理解できてくると、うれしさだけが心に湧いてくるのです。

現地のセブン-イレブンではガリガリ君も売っています。屋外取材で火照った体に染み入るYUZU味、美味しゅうございました。レッドブルのタイ本家バージョンも、疲れた体に効きまくりです。

オープンでいい香りのバンセンストリートサーキット

ハナシをサーキットに戻しましょう。
バンセンストリートサーキットは、なにしろ雰囲気がオープンで明るい素晴らしい空間でした。

コース脇にはタイ料理の屋台が並びます。ナンプラーとパクチーの薫りが漂う空間でレーシングカーのエギゾーストノートに包まれる……。贅沢な雰囲気です。実はこの背後はバンセンのビーチなんです。観戦料金も無料ということで、老若男女のんびりと観戦を楽しんでいる様子が印象的でした。
レース関係者によれば、バンセンのあるチョンブリ県の知事さんが大のレース好きで、ここバンセンにより多くの観光客に訪れてほしいという方針のもと、行政も積極的にこの市街地レースをバックアップしているということでした。

VIOSワンメイクレースにはレディースクラスも設定されています。今回は12台がエントリー。熱いバトルとなっていました。日本人の女性ドライバーもエントリーしています。

マツダは「Mazda Women in Motorsport Project」を展開していますが、その一環としてタイ人女性ドライバーのバックアップも行っています。この方はプロイ選手。タイスーパーシリーズのスーパーコンパクトクラスに参戦中。2016年には来日し、マツダの美祢テストコースで同プロジェクトの訓練を受講した経験もお持ちです。

これはトヨタタイランドが主催するワンメイクレースの年間表彰式の様子です。なかなか派手、そして華やか。チーム関係者や主催・運営関係者、財界・政府要人も臨席し、オフィシャル感満載でした。

こちらは6時間耐久レースの表彰式。500人以上は入れそうなホテルの宴会場で、食事をとりながら長時間かけて行われるスタイルです。上位入賞者はこれだけの表彰を受ければ達成感もあるでしょうし、ステータス感も得られますよね。スポンサーにも主催者から感謝の気持ちを込めたアワードが贈呈されていました。
タイのレース界が、こうした演出をきちっと実施しているというのは意外でしたし、レースを盛り上げるための方法を研究している印象を受けました。

ストリートでオープンな雰囲気のなか開催されるレース、女性ドライバーが参加しやすいカテゴリーの設定、エントラントにステータス感を持ってもらう演出、開催レースのバリエーション、主催者やレース支援者への配慮などなど、日本のレース界こそ彼らに学ぶべき点が多々あるのではないかと感じました。
「レースをメジャーカルチャーに!」という動きが近年日本でも盛んですが、レースにステータス感を持たせるこのような演出を再考してもいいかもしれませんね。

タイに学ぶべきこと

タイの街を見ていても、学ぶことは多々あります。
これはバンコク・スワンナプーム国際空港の出発エリアで見た光景です。

2重駐車はいただけませんが、車いす利用者用スペースはカラーコーンでわかりやすく区切られるとともに、一般車両はだれもそこに侵入しません。
高速道路のサービスエリアの同様のスペースで、一般車両を平気で停めて休憩している光景をよく見るどこかの国とは違う高い意識を感じました。

市街では、バイクやクルマに乗って日々の生活を楽しむ若者の姿があふれています。
微笑ましくもあるとともに、タイという国の持つエネルギー、そして目覚ましく発展するモータリゼーションの勢いの象徴でもあるように思うとうらやましくもあります。

取材最終日の夜、タイの街をトゥクトゥクに乗りながら移動してみました。
大きなエンジン音を響かせながら、運転手さんは信号待ちのクルマを器用に縫って、前へ前へと走ります。ボロボロのタクシーにクラクションを鳴らされることもありますが、気が付けば横に並ぶのはBMW i8。ポルシェ・カイエンの高い鼻先に、運転手さんは強引にトゥクトゥクの前輪を突っ込んでゆきます。青になればレクサスLSやメルセデスSクラスに追い抜かれ、プリウスやフィットハイブリッドとは競争に……。
東京・青山や名古屋・栄ではなく、バンコク・スクンビッドでの光景です。

カスタマイズも盛ん、そしてモータースポーツも盛り上るタイ。
う~ん、日本も負けてはいられませんね。
ようやく「いいクルマづくり」方向に舵が切られ、日本のクルマ社会が元気になりつつあるいま、ひとりのクルマ好きとしていかにカーライフを楽しみ車を愛するべきなのか、そしてメディアの一員としていかにその盛り上げに貢献していくかということを、深く考えさせられるタイ取材紀行となりました。

取材にあたり、タイのレース事情やカーカルチャーについていろいろと教えていただいたTRDタイランド社長でありレーシングドライバーのスティポーンさんには、この場をお借りして深く御礼申し上げますとともに、2017年SUPER GTシリーズ全戦でのご活躍を祈念しております!


(ライター:渡辺文緒)
[ガズ―編集部]

MORIZO on the Road