【鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2018 愛車紹介】数々の名車を乗り継いで最終的にたどり着いたのは幼少の頃に憧れたフィアット・500

鈴鹿サウンド・オブ・エンジン2018で行われた『タイムトラベルパーキング』では、その名の通り時代を駆け抜けた世界の名車が集まり、それぞれの年代、それぞれのモデルを懐かしむことができる空間である。そんな中で、鮮やかなイエローのボディカラーに身を包み、来場者の目を奪っていたのが1973年式フィアット・500タイプLだ。
イタリア国民の足として、20年余りの間に400万台以上が生産されたフィアット・500。そのファニーフォルムはイタリアだけでなく世界各国で人気を集め、日本にも多くのファンが存在する。搭載されたエンジンは当初479㏄で、最終的には594㏄と日本の軽自動車と同等クラス。そういった面でもコンパクトなものが好きな日本人の心を捉え続けているのかもしれない。

そんなフィアット・500を、オーナーの浅野さんが購入したのは今から5年前のこと。それまで20年以上悩み続けながらもなかなか踏ん切りがつかず、購入には至っていなかったという。
その間にはフェラーリF430や512TRなどを躊躇なく購入し、乗り回していた時期もあったというから、少なくとも金銭的な問題ではなさそうだ。
そもそも、フィアット・500が好きになったキッカケを聞いてみると、新車当時に親戚のオシャレなお兄さんが乗っていた姿を見て、子供心に「カワイイな」と憧れの心を抱いたからだという。
そんな子供の頃の印象が強烈すぎて、本当に欲しいクルマだからこそ、嫌いにならない最高の車体を選びたかった、ずっと欲しいんだけどなかなか買う勇気が湧かなかった、というのが本心なのだろう。

ところが、縁は突然巡ってくるもので、あるとき「出物のフィアット・500がある」という話を聞いて見に行くことにした。
そこで出会ったのは、フィアット・500をベースにオーバーフェンダー化や10インチホイール装着というカスタマイズが施された1台。その自由なスタイリングは子供の頃に思い描いたフィアット・500そのものであり、さらに自分好みにカスタマイズして楽しむ未来も容易に想像することができた。
こうして、長年に渡って躊躇していた時間が嘘のように、ひと目ボレで購入を決意したという。

購入後は自分だけのフィアット・500を構築すべく、フィアットのカスタイマイズパーツを多く手がけていた、アバルトの製品を中心としたアフターパーツを使いながら、様々な部分に手を加えて行った。例えばもともと4輪ドラムブレーキのため制動力は期待以下。そのためまずはフロントブレーキをディスク化しながら電装系などもすべて見直した。
エンジンはお世辞にもパワフルとはいえないが、牧歌的な乗り味を楽しむには十分。とはいっても高速道路などを使うことを考え、排気量を650㏄までボアアップしたうえで、キャブレターもウェーバーの40IDEに変更した。通常なら36IDE程度を選択するため、若干オーバーサイズ気味だったがセッティングによって安定したのは嬉しい誤算だったという。

さらにシートはローバックタイプのデッドストック品を装着。メーター類も詳細不明ながら前オーナーから受け継いだパーツ箱に入っていた逆回転メーターを修理して組み込んだ。
そのほかにも、細部まで自分の好みに合わせたカスタマイズを施しつつ、クルマの基本である走る、曲がる、止まるという性能を完璧なコンディションに引き上げている。

オーナー自身もクルマいじりが好きだったため、これまでの愛車とは違ってフィアット・500は積極的に自分で作業することを心がけている。それだけに思わぬトラブルにも直面することも。
たとえば、アバルト正規品のオイルパンを装着しようと試みたところ、ブロック側のネジ位置とオイルパン側に空いているネジ位置がまったく違ったという。普通なら怒りすら感じるようなエピソードだが「イタリア車はこれまでも乗っていたのであまり不安感はないのですが、イタリア製のアフターパーツは笑っちゃうくらいに精度が低くて」と、笑い話として語れるというのも、愛車に対する愛情が深いからこそ。

今ではこのフィアット・500に触発されて、現行モデルのアバルト595SSも購入し日常の足として使い倒している。自身もまさか新旧2台のフィアット・500を所有するとは思ってもいなかったというが、子供の頃から憧れていたクルマを手にし、それを大事にしながらも普段から同じような感覚のクルマに乗っていたい、と考えてしまったのは必然だろう。
今では天気がいい休日など気分のいい日には、このフィアット・500でドライブを楽しんでいるというオーナー。目的地を定めずにのんびり走ることが最高のリラクゼーションになるという。このひとときを作れるのも、長年憧れ、悩み続けた、本当に愛するフィアット・500だからこそ、だろう。

(テキスト:渡辺大輔 / 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

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