スバル レガシィツーリングワゴンとともに歩む、人生を賭けたスノーボードライフ

自分の好きなこと、一生夢中になれるものを仕事にする。多くの人が憧れるが、現実の世界ではそう簡単に実践できることではない。神田小川町にあるスノーボードショップ『HIGH SIDE』のオーナーである岩満 誠さんは自分の夢を実現するため、3年前にこのショップをオープンした。

はじめは楽器職人を目指して専門学校でギタークラフトを学び、長野にあった楽器メーカーに就職した岩満さんだったが、そこでスノーボードに出会い夢中になる。楽器メーカーを辞めた後はスノボショップのライダーとして活動。カナダのウィスラーで数ヶ月にわたってスノボを楽しんだ時期もあったという。その後、ライダーとして活動していたスノボショップに就職し、2008年に独立。そして2016年にHIGH SIDEをオープンした。

シーズンに入るとほぼ毎週末、ショップのイベントやツアーでゲレンデに向かう。スノボのオフシーズンも地方でのスケボーのイベントなどに出向くため、多い年は年間走行距離が軽く2万kmを超えるという。そんな旅の相棒として選んだのがBP型スバル レガシィツーリングワゴンだ。

「レガシィを手に入れたのは今から11年前。最終型の2.5iを新車で買いました。やっぱりレガシィですし、本当はターボのGTに乗りたかったのですが、ベースモデルより100万円近く高いんですよね。これだけ値段に差があると、もはや別のクルマのような気がしたので普通に2LのNAにしようと思ったんです。でも僕が勤めていたショップのお客さんが2Lのレガシィに乗っていて『誠君が乗るとしたら遅いからストレスが溜まるよ』と言われて(笑)。その人から2.5Lのレガシィを勧められたんです。このクルマは加速面でストレスを感じることもなく、乗り味も大人な雰囲気で気に入っています」

岩満さんは免許を取得した後、しばらく父親が乗るトヨタ エスティマを借りていた。長野で就職した時にクルマの必要性を感じ、選んだのはいすゞ ジェミニのトップグレードであるイルムシャーR 4WD。その後、古いトヨタ ハイエースバン ディーゼルのMT、友人から譲り受けたマツダ カペラセダンを乗り継いできた。

さまざまなクルマでゲレンデに通っていた時、憧れ続けていたブランドがスバルだった。

「スバルに憧れた理由はラリーでの活躍です。免許を取った頃から、ずっと『いつか乗りたい』と思っていましたね。カペラがそろそろヤバいとなった時はちょうど独立の前後だったので資金的にはキツかったのですが、どうせ買うなら欲しいものを手に入れようと思って」

ラリー好きだけに、最初に考えたのは当然インプレッサWRX STI。しかしセダンだと仕事で多くの荷物を積むことができない。WRXスポーツワゴンもあるが、荷室の大きさ的にキツい。そこで、昔憧れたフォレスターとレガシィツーリングワゴンが候補に挙がった。ただ、フォレスターは2007年のフルモデルチェンジで全高が高くなり普通のSUVになってしまった印象をうけた。それならスバルの代名詞でもあるクルマに乗ろうと、レガシィツーリングワゴンをチョイスした。

独立したばかりの岩満さんの相棒となったレガシィは、岩満さんも驚くほど“いい仕事”をしてくれる。荷室が広く、リアシートの片側だけ倒せば4人で座れ、4人分のスノーボードを中積みすることができる。厚みのあるシートは座り心地がよく、東京から大阪くらいまでの距離なら疲労が残ることもない。毎週のように片道数百kmの距離を走る岩満さんにとって、翌日に疲れが残らないというのはとても重要なことだ。何より2.5Lを選んだことでパワーに余裕があるから、ゲレンデまでの往復の高速道路や山道を気持ちよく走ることができる。これは走り好きの岩満さんにとって嬉しいことだ。

「もちろんレガシィの4WD性能は非常に優れていて雪道でも安心です。数年前に東京で大雪が降った時、電車が止まることを考えて店までクルマで出かけました。案の定大雪になり、都内は大渋滞。いたるところで乗用車やトラックがスタックしていて、普段なら1時間程度で帰れる道が5時間もかかりました。ようやく家の近所までたどり着いたら、クルマがまったく通っていない、新雪が積もったばかりの道がありました。なんだか嬉しくなって、疲れているのにその道を4周も5周も走っちゃいましたよ。満足して自宅に戻ったら、駐車場の入り口が雪の吹き溜まりで山ができていて駐車場に入れないというオチが待っていましたが(笑)」

これだけ満足度が高いレガシィだが、不満なところはないのだろうか?意地が悪いとは思ったが、あえて聞いてみると、岩満さんはしばらく考えて、呟くように答えてくれた。

「しいて挙げるなら……やっぱり燃費ですかね。今時のクルマと比べるとどうしても燃費は落ちるから財布へのダメージは大きいです。でもエンジンはレギュラー仕様だし、街中で7〜8km/L、高速道路だと11km/Lくらいは走ってくれるから、勘弁してくれ!というほどではありません」

こだわって選んだ愛車だから、カッコよく乗りたい。岩満さんは購入時にフロントグリルをブラックタイプに交換し、STIのリップスポイラーを装着。このスタイルはとても気に入っている。

そして購入後しばらくして、エンジンルームにタワーバーを装着。これによりハンドリングがクイックで心地よくなったそうだ。

「昨年は5度目の車検でしたが、長年の雪山通いでマフラーに融雪剤による腐食があるのが見つかりました。そのままだと車検に通らないため、マフラーを交換。調べたら純正マフラーもSTIの中古マフラーも値段がほとんど変わらなかったので、STIの車検対応マフラーに交換しました。見た目の迫力が気に入っています」

12年目に突入したレガシィとの暮らし。走行距離は14万kmに達した。付き合いもだいぶ長くなったし、買い替えは考えていないのか、と聞いてみると、岩満さんは「他に乗りたいクルマがない」と笑う。

「今、アウトドア系のクルマはSUVが主流ですが、僕はステーションワゴンの方が好きなんですよね。全高が高いクルマは高速道路でふらつくこともあるでしょうから、長距離ドライブが疲れそう。ワゴンは移動中もスポーティな走りを楽しめますからね。ゲレンデまでの道はもちろん、コーナーの多い首都高速を走るのも気持ちいいですよ。問題は今、スポーティなステーションワゴンの選択肢が少ないこと。レガシィはBP以降、ちょっと大きくなりすぎましたよね。その意味では、昨年の東京モーターショーで公開された新型レヴォーグは気になっています」

ただ、岩満さんは新型レヴォーグが発表されたらすぐに乗り換えるのではなく、このレガシィを20万kmまでは乗り続けるつもりだと言う。だから最近は走行距離を伸ばさないよう、知り合いも一緒にゲレンデに向かうときは同乗させてもらうこともある。夢に向かって苦楽を共にした相棒と少しでも長く付き合うために。

「今の店をオープンしてから3年なので、まだ結果が出たわけではありません。でも僕は一生スノーボードを続けたいからこの仕事を始めたので、毎日楽しく過ごしています。もちろん仕事ですから楽しいことばかりではないし、イベントでゲレンデに行っても運営が忙しくてまったく滑れないこともあります。それも含めて、今の暮らしを楽しんでいますよ。このレガシィにはまだまだ僕の人生に付き合ってもらうつもりです」

今のペースだと、このレガシィが走行20万kmに達するのは5年後くらいだろうか。

「好きだから続けているけれど、経営は大変ですよ」と岩満さんは笑うが、実は我々がショップを訪れた時も20代と思しき男性がオーダーしていたボードを満足そうに眺めていた。「週末にゲレンデに行くから週明けに滑り心地を報告しますね」と手を振る姿を見て、このショップは岩満さんのファンが支えていることが伝わってきた。きっとスノーボードを愛する岩満さんの思いが伝わり、ファンは増えていくに違いない。

苦楽を共にしたレガシィは、岩満さんの夢が詰まったショップが大きくなるのを傍らで見守り続けていくのだろう。岩満さんが「他に乗りたいクルマがない」と話す理由がわかった気がした。

(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/柳田由人)

[ガズー編集部]

愛車広場トップ