GAZOO写真教室 3限目 流し撮りにチャレンジしてみよう! ~クルマをかっこ良く撮りたい!こそっとスキルアップ!~

第3回目は流し撮りのコツを、お伝えしようと思います。流し撮りのコツを伝えるにあたり、まず僕の使用機材を知っていただけないといけません。と言うのも、カメラメーカーによって微妙に差があるからです。僕が使用しているカメラは、キヤノンのEOS-1D X Mark IIです。流し撮りに関係するセッティングとしては、シャッターが1/4段階にセットしてあります。ですから、1/25sec0と1/500secの間に1/400sce、1/320secと言うシャッタースピードが存在します。おそらく他メーカーのカメラにも存在すると思いますので、違和感なく話を進められると思っています。

皆さんは流し撮りと聞いた瞬間に、どのくらいのシャッタースピードをイメージしますか?大半の方は、1/60~1/30secを想像するのではないでしょうか?僕もフィルム時代は、そのくらいのスピードを想像しました。ところが、現在のデジタルカメラでは、1/320~1/125secくらいを想像します。なぜなのかを詳しく書くと長くなりますので、ここでは説明を省きます。ただデジタルカメラになってから、フィルムのカメラより約1段階シャッタースピードが下がっている感覚なのです。ですから、想像より1段階速いシャッタースピードで十分流し撮りの効果は得られます。メーカーによって差があるので、あくまでもキヤノンのカメラの場合ですが。

上記のことを理解していただいたところで、流し撮りのコツについて話を進めましょう。最初に機材の準備ですが、スタビライザー(手ぶれ防止機能)機能が付いていればONにしてください。ただし5年以内に発売されたレンズに限ります。それ以前のモデルは、手ブレ機能の精度が高くないので、僕の場合はあえてOFFにして撮っていました。それ以降に発売された物は、手ブレ補正の精度が高いので、使わない手はありません。そして一脚をお持ちであれば、使用することを推奨します。一脚を使うことで長時間構えられるし、構えっぱなしでいられるので、ブラインドコーナーの撮影に有利だからです。もちろん細かい手ブレの防止にもなります。

機材の準備ができたところで、まずは構え方です。構え方で一番重要なのは、肘の向きです。両腕を伸ばした時に両肘を腰骨に向け、その位置から肘を曲げます(重い物を抱えた時の肘の向き)。そこから上腕をひねってカメラを構えてください。そうすると両肘は真下を向き、自然に両脇が締まるはずです。これが一番カメラを安定して構えられる持ち方です。

一脚を使用した場合も同様の構えが推奨です。後は軽くジャンプして着地した時のスタンス(両足の幅)で立つのがオススメです。この構えが出来たら、後はオートフォーカスの測距点を一箇所に絞り、ピントを合わせた場所がズレないようにレンズを振るだけです。測距点を1箇所に絞ったのは、レンズを振るスピードとクルマのスピードをより正確にするためです。クルマによっても目標は違ってきます。フォーミュラカーの場合はヘルメット、GTカーの場合はフロントグリルのエンブレム、もしくはヘッドライトに合わせるのが基本です。

レースを撮影する場合は、観客席から撮影するのでしょうから、より長いレンズを使用することになります。長時間重いレンズを構えることは難しいので、一脚が必要不可欠になります。流し撮りの場合は、レンズのほぼ中央に支点があるので、流し撮りをするとファインダーも移動します。そのため、三脚は流し撮りに向きません。もちろん一脚を使用してもファインダーは動くのですが、支点を両足の間に置くことによってファインダーの移動距離を0に近づけられます。観客席からコースを撮影する場合、斜め下をマシンが走ることになります。一脚は斜めに使用するのですが、支点を両足の間に置くことによって体を動かさなくても流し撮りが可能になります。

最後に体の向きですが、これは十人十色。構えを作った上で、素振りをしてみてください。レンズが一番波打たず、スムーズに触れる向きがあるはずです。その向きに狙うマシンが来た時にシャッターを切れば、今まで以上の確率で流し撮りが成功するでしょう。辺りの確率が上がってきたらシャッタースピードを落として、流し撮りの効果を上げていきましょう。いきなり遅いシャッタースピードにチャレンジして、良い作品が撮れなかったらガッカリしてしまいますから。

以上のポイントを踏まえて、SUPER GT 夏の残り2連戦、スーパーフォーミュラで流し撮りにチャレンジしてみてください!

(写真、テキスト 折原弘之)

折原弘之

F1からさまざまなカテゴリーのモータースポーツ、その他にもあらゆるジャンルで活躍中のフォトグラファー。
作品は、こちらのウェブで公開中。
http://www.hiroyukiorihara.com/

[ガズー編集部]

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