GAZOO写真教室 11限目　流し撮りにチャレンジしてみよう！その２　～クルマをかっこ良く撮りたい！こそっとスキルアップ！～

2017.05.17 17:00

今回は、3限目で触れたサーキットでの流し撮りのスキルアップに再度挑戦したいと思います。“流し撮り”と聞いた時に、皆さんはどのくらいのシャッタースピードを想像しますか？おそらく1/60sec、1/30secくらいのシャッタースピードを想像されるのではないでしょうか。僕たちプロは1/320secあたりから流し撮りを考えます。そのスピードでも十分効果が得られることを知っているからです。

しかしながらより流し撮りの効果を上げようとすれば、シャッタースピードが遅くなるのは必然です。作例1、2を見てもらうとお分りいただけると思います。

: 作例１

: 作例２

: 作例３

作例1の方は、1/125secで撮影、作例2は1/60secで撮影したものです。当然作例2の方が流し撮りの効果は高いです。ですが、1の写真でも十分に流れていると思いませんか？思ったより早いスピードでも、十分流し撮りの効果は得られます。

ただし、ちょっとしたコツがあります。背景に小さなものを配置すると言うことです。観客席に座っている観衆は遠近法も手伝って、すごく小さな色になります。もしバックに写っているものが大きいと、作例3のように背景が目障りになってしまいます。それを避けるためには「より小さなものをバックに配置する」ことです。これが流し撮りのコツの一つ目です。

次にフォミュラカーとツーリングカーの撮影の違いについて説明します。撮影するにあたって両者の一番の違いは、ドライバーが見えているか否か。これに尽きます。作例4、5、6をご覧ください。

: 作例４

: 作例５

: 作例６

これは僕の持論ですが、ドライバーの見えているフォーミュラはヘルメット、見えていないツーリングカーはフロントグリル、もしくは、ヘッドライトが止まっていなければならない、その点が止まっていない限り、作品としては成立しないと考えます。
作例6のようにコックピットに陽が入り、ドライバーが見える場合がありますが、それでもピントはグリル、もしくはヘッドライトにあるべきです。と言うことで２つ目のコツは、フォーミュラはヘルメット、ツーリングカーは「グリルを止めろ」です。

次にちょっと変わった流し撮りについて説明します。

: 作例７

作例7ですが、林の中から撮影しています。広角レンズで撮影することで、背景が回って感じが出せています。これは被写体と自分の間に木の枝があることで、より回っている効果を演出できています。

: 作例８

作例8は、夜間走行しているマシンを狙ったものです。24時間レースで撮影したものですが、降り続いた雨の影響で水しぶきが上がっています。その水しぶきに後ろの車両のライトが当たることで、よりドラマチックな作品になっていると思います。

: 作例９

作例9も、夜間走行の作品です。これは近代的な建物を配することで、撮影したサーキットを印象付けています。あえて流したのは、生々しさを緩和させるためです。

このように、写真には必ず狙いがあり、その狙いをより効果的なものにする為に流し撮りをするのです。背景がつまらないから流す、とか、とりあえずスピード感を出したいからスローシャッターを選ぶ。最初はそれでも良いのですが、きちんとした理由付けがあってこそ良い写真になると思います。最後に流し撮りの最大のコツは、流さなくても成立するシチュエーションで、あえて流すことです。どんな時でも最大限妥協しないで撮影環境を選びましょう。

（写真テキスト、折原弘之）