大学自動車部ってどんなところ? -早稲田大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢の部員を紹介するこのコーナー。
今回うかがったのは創立1882年という歴史を誇る私学の雄、早稲田大学の自動車部。
全日本学生自動車連盟年間総合杯の獲得を目標に掲げる、その活動を取材しました。

早稲田大学自動車部プロフィール

●部員数 :男子19名 / 女子 2名  ※部員数は2014年7月現在
部員紹介ページ

●部車 :ホンダ シビック、いすゞ・ジャーニー ほか

●活動内容:毎週月曜・水曜・金曜18:30~22:00、早稲田キャンパス内の部室およびガレージにてミーティングと部車の整備作業を行い、週末はサーキットや新潟練習場などで走行練習を行う。目標は、全日本学生自動車連盟と同関東支部が設けた、2つの年間総合杯の獲得。また慶應義塾との「早慶戦」や、私大5校で競われる「五大フィギュア」などにも参加している。

●活動実績:2014年度 全関東学生自動車運転競技選手権大会 男子団体の部 優勝
2014年度 全関東学生自動車運転競技選手権大会 女子団体の部 優勝

夏も年末年始もスケジュールはぎっしり

前身の東京専門学校の時代を含めると、130年余りの歴史を持つ早稲田大学。自動車部のガレージは、東京・新宿の早稲田キャンパスに位置する。
今回の取材に協力してくれた、4年生で副将を務める白井智也さん。ストイックな環境を求めて自動車部に入部したという。
ガレージに誇らしげに掲げられた「早稲田大学自動車部」の看板。白井さんいわく、「部室が大久保(西早稲田キャンパス)にあった頃から使っていますが、いつからあるかは、ちょっとわからないですね」とのこと。
ガレージのそばには、競技用車両や練習に使うクルマ、部品取り車などがずらり。以前は大会などで三菱ミラージュを使用していたが、最近はホンダ・シビックにスイッチしているという。

今回訪問した早稲田大学は、1882年(明治15年)に大隈重信が創設した東京専門学校を前身とする私学の雄。1902年(明治35年)に早稲田大学と改称され、現在は10の学術院のもと13学部・22研究科(大学院)を設置しています。

その自動車部は、早稲田大学競技スポーツセンターが公認する早稲田大学体育各部の一つで、昨年創立80周年を迎えた伝統ある部です。現在の部員数は4年生5人、3年生5人、2年生3人に加えて1年生新入部員が8人の計21人。うち2人が女性部員となっています。

活動日程は、上にもありますが、月・水・金の18時半から22時の早稲田キャンパス内ガレージでの整備作業と、毎週土・日のサーキットなどでの走行練習。夏休みはほぼ毎日、泊まりがけでの練習や試合などがありますし、全国的にお休みとなる正月にも「箱根駅伝に駆けつける応援部の送迎バスを運転する」というミッションがあるため、休みらしい休みはほとんどないと言えます。

なぜ、そんな厳しい活動をやり通すことができているのか? 副将の白井智也さん(4年)に聞きました。

「やはり“本気”で何かをやることの楽しさや喜びに気づいてしまった、ということでしょうか。大変なことやつらいことというのは、それこそ枚挙にいとまがないのですが(笑)、でも、そのつらさがあるからこそ、いざ勝利を手にできたときにはとてつもなくうれしいわけです」

聞けば白井さん、早稲田大学に入学した当初は自動車部ではなく、とある音楽系のサークルに入部したとのこと。しかし、そこでの軽い人間関係に疑問を感じていた1年生の秋に自動車部と出会い、「自分が求めていたモノはここにある!」と衝撃を受け、ちょっと遅めの新入部員として入部したのだそうです。

厳しい活動で得られる一生モノの「仲間」

新潟にある松代自動車練習場での合宿の様子。こちらの施設は普段の練習でも利用しており、部員は頻繁に東京と新潟を往復しているという。
競技用のシビックを使い、サーキットでジムカーナの練習。全日本と全関東の年間総合杯は、ジムカーナ、ダートトライアル、フィギュアの3つの大会の成績で順位が決定する
ガレージの隅にナゾの機械を発見。こちらはハンドリング操作の練習に使う、その名も「ハンドリングマシン」。山本太郎さん、使い心地はどうですか?
仲間と談笑する2年生の伊東健太郎さん。取材した限りでは、厳しい練習や活動内容から想像されるような、ギスギスとした雰囲気は皆無だった。

「とはいえ大変は大変ですよ。例えばですが、夏はまず最初の1週間は広島での全日本学生ダートトライアル選手権大会に遠征し、ひたすら整備と実戦に明け暮れます。で、洗濯するためだけに家に帰り、そのまま1週間のティーチングアシスタント(一般学生を対象とした自動車運転の授業における、アシスタント業務)に出掛け、また洗濯するためだけに家に帰り(笑)、次の1週間は鈴鹿での全日本ジムカーナ。そして翌週もまたティーチングアシスタント……という感じですから」

自動車部の部員は、ほとんど夏の間中、寝食を共にするわけだ。

「はい。なのでわれわれ部員たちはもう家族以上といいますか、友情なんて言葉では表現できないほどの“仲間”になるんですね。OBの先輩方を見ていても、50歳、60歳になっても当時の仲間と頻繁にお酒などを飲んでおられる。本気で物事に打ち込んだからこその、ディープで熱い人間関係なんでしょう。僕も、そういった50歳、60歳になれたらなと思っています」

また、記録委員の韮沢純一さん(4年)もこう語ります。

「自動車部に入って良かったと思うのは、本当の意味での仲間ができたことですね。……僕は途中の1年間留学していたこともあって、大会で走る“選手”ではないんですよ。でも、それで全然いいと思っている。先ほどの白井などの、本当にいい“仲間”を得ることができた。それが、僕にとってはすべてです」

さらに、2年の伊東健太郎さんは「学業に手がつかないほど忙しい!」と言い、1年の相馬和英さんは「忙しくてバイトができないため金欠です!」と嘆き、同じく1年の中田廣 遥さんは「ダート用車両の下に潜って整備していると砂が大量に落ちてきて、砂風呂状態になってしまう!」と困惑。でも、それぞれ「ま、好きなんだからしょうがないか!」という明るい結論に落ち着いているようです。

大会での実績を支える日々の練習

2014年5月に開催された全関東ジムカーナの様子。この大会で、早稲田は男子が団体3位、女子が団体2位に入っている。
白井さんが下級生だったころの「練習ドライブ報告書」。運転技術についてはもちろん、公道を走る上での注意点やマナーについても丁寧に書かれていた。
部室の掲示板に貼られた、部車の運行計画書。大所帯で備品も多い部だけに、部車に限らず、モノや時間の管理には気を使っているようだ。
男女アベック優勝を果たした2014年の全関東フィギュアにて、表彰状を手にみんなで記念撮影。より良い成績を残せるよう、これからも頑張ってください。

早稲田大学自動車部は、今年の全関東フィギュアで男女アベック優勝を飾った強豪。また昨年の全日本学生ジムカーナでも見事3位に入ったわけですが、その成績について前出の白井副将は「とにかく悔しい。今年は全日本も全関東も取り返しにいきます」と、真剣な顔つきで宣言します。そういう強気な宣言をできるほどの技術の裏付けとなっているのが、「徹底的な記録付けと、その見直し」なのかもしれません。

早稲田大学自動車部には「練習ドライブ報告書」というものがあり、日々の練習内容をすべて事細かに記録し、事あるごとにそれを見直すことで、自らの走行技術向上につなげています。また動画も、自分たちのものだけでなく他大学の速い選手の走りをビデオに収め、時にはほぼ徹夜状態でチェックしているとのこと。副将の白井さんは語ります。

「ウチの部では段階ごとの“運転資格”があるんです。ごく普通の一般走行から始まって、次がスポーツ走行をしてもいいという資格。その次が試合車を運転できる資格。さらにはトラック、マイクロバスです。全日本レベルの先輩に同乗してもらって判定と評価を受けるわけですが、その際も事細かに『練習ドライブ報告書』を作成し、その後何度でも見直します」

白井さんの報告書を見せてもらうと、一般道でのごくフツーな運転に関しても事細かな記録と反省、OBによる評価がビッシリ記載されていました。スポーツ走行はさておき、一般道での走りにそこまでシビアになる必要ってあるんでしょうか?

「これは先輩方が常々おっしゃることですが、『普通の町中でスムーズかつ繊細なアクセルワークができなくて、厳しい状況の本番でそれができるわけない』ということです」

以上のように熱い早稲田スピリッツと最高の仲間、そして繊細な運転技術を獲得したいクルマ好きには刺さること間違いなしの、厳しくも明るい早稲田大学自動車部でありました。

(文=谷津正行/写真=ダン・アオキ)

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[ガズー編集部]