【大学自動車部】チームの力で困難に打ち勝つ!-東京電機大学(東京千住体育会)-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は、ジムカーナを中心に活動している東京電機大学自動車部(東京千住体育会)を訪問。

東京電機大学自動車部(東京千住体育会)プロフィール

●部員数
17名 ※部員数は2016年7月現在
部員紹介ページ

●部車
ホンダ・インテグラ、スズキ・アルト

●活動内容
毎週、水曜日の昼休み時間に東京千住キャンパスにてミーティングを実施。活動日は月によって変動するが、少なくとも2週間に一度は千葉ニュータウンキャンパスにあるガレージで整備を中心に活動を行っている。

●活動実績
平成27年度 全関東学生ジムカーナ選手権大会 出場
平成28年度 全関東学生ジムカーナ選手権大会 出場

インテグラでジムカーナ大会に参戦

東京電機大学は、1907年に創設された電機学校を起源として、1949年の学制改革に伴い、電機工業専門学校が前身となって開学した大学です。現在では5学部5研究科を設置するなど理工系の大学として発展しており、日本をはじめ世界で活躍する多くの技術者を育成し続けています。

東京電機大学は、東京・埼玉・千葉の関東3県にまたがってキャンパスがあり、自動車部も学部やキャンパスにより複数存在しています。その中で今回取材したのは、東京千住キャンパスに通いながら、千葉ニュータウンキャンパスを活動拠点としている東京千住体育会の自動車部です。

広々としたキャンパス内を進んでガレージを訪れると、シルバーのホンダ・インテグラを囲むようにして多くの部員達が動きまわる中、主将の足立渉さんが出迎えてくれました。

2016年度の主将を務める足立さん。全体を見渡して周囲をサポートしながら活動する姿が印象的だった

「当部は学生自動車連盟主催のジムカーナ大会で結果を出す事を第一に活動しています。昔はトヨタのスターレットで出場していた事もあったのですが、僕達が入部した2014年にインテグラが導入されました。現在はこのクルマで練習を行い、大会に参戦しています。」

学生自動車連盟のジムカーナ大会では、レギュレーション上は2,500ccまでの2輪駆動車が参戦可能ですが、1,600cc~1,800ccのFF車両が中心となっています。このクラスではホンダのインテグラやシビックが参加車両の多くを占めており、人気の車種と言えます。

学生自動車連盟の競技規則に合致する様に製作されたホンダ・インテグラ。ロールバーや4点式シートベルトといった安全装備はもちろん、駆動系や足回りをジムカーナ仕様に仕上げられている

東京電機大学自動車部では、3年生までが主力として活動を行っているとの事。4年生には困った時にアドバイスを求めたりする事は出来るものの、研究室配属などで忙しく普段の活動には参加できないそうです。試合にも選手として出場せず、クルマの整備にも触らないので、実質的な引退と考えて良いでしょう。
他大学の自動車部では4年生になってからも活動を継続する場合もあるため、不利に思う事も多いのでは?という問いに、足立さんは頷きなが答えてくれました。

「そうですね、運転にしても整備にしても、僕たちはまだまだ未熟です。だからと言って、勝負を諦めてはいません。今は大会に向けてドライバーの育成に取り組んでいます。また、チームの力を高めるためにドライバーが100%運転に集中できる環境づくりを目指していて、練習の段階からエア圧チェックや水温管理などを各部員が役割分担して全員でサポートしています。」

東京電機大学自動車部の”虎の子”とも言えるインテグラの整備風景。ガレージには工具類やタイヤ等が保管されており、その前の広場が自動車部の活動場所となっている

トラブル続きでも逆境には屈しない!

何でも、昨年は試合車の故障と、それに起因する資金不足と練習不足に悩まされていたとの事。
足立さんと同じく3年生の小川晋拓さんに、詳細を伺ってみました。
「まず2015年の春に1速に入りづらくなる症状がでまして、さらに夏合宿中にクラッチが割れてしまいました。クラッチ交換とミッションオーバーホールをしなければならなくて、そのせいで夏以降は整備ばかりしていました。コストのかかる整備でお金もなくなってしまい、インテグラが直った後もなかなか練習できなかったので、去年入部した今年の2年生たちにあまり走らせてあげられませんでした。」

整備担当といった様な役職は特に定めていないそうだが、小川さんが部員の中でも整備について特別詳しいという

さらに聞くところによると、彼らが普段通っているのは東京・北千住のキャンパス。活動のために千葉ニュータウンのキャンパスにあるガレージまで通うだけでも大変なのだとか。その為、毎週水曜日の昼休みに部員が東京・北千住のキャンパスで集まってミーティングを行い、その際に話し合って活動日は決めているそうです。2週間に1日は最低限ガレージで活動しているものの、大掛かりな整備など、継続的に対応が必要な活動がなかなか進まないという悩みがある様です。

そんな中でも勢いがあるのが2年生達です。

入部のきっかけはクルマが好きだから!と語るのは留学生のレーチュンハウさん。
「サーキット走行とかモータースポーツの経験は、普通の大学生ではなかなか出来ない事なので、楽しくて最高の部活だと思っています!クルマに乗るのがとにかく面白くて、乗るために整備も頑張ります。」
都内在住で駐車場の都合がつかず、なかなか自分のクルマが買えないというハウさん。部活の練習で上手くなるしかないためか、とにかく部活に対するモチベーションが高い様に感じました。

現在の目標は、公式戦で良い結果を出す事と語るハウさん。もっともっと運転を上手くなりたいので、今はとにかく練習あるのみとの事だった

ハウさんと同じく2年生で、来年の主将は自分が務める!と語る若林佑輔さんも、やる気充分です。
「とにかく走りに行きたいです。去年は整備ばかりで、正直暇な時間が多かったです。インテグラの整備には触れないし、自分のクルマも無いから整備するのも練習することもあまり出来ませんでした。来年度、僕が主将になったら毎週走りに行くくらいの勢いでやりたいです。整備の知識はまだまだ足りませんが、いざという時は上級生も助けてくれると思います!ですので、壊れたらどうしよう、ではなく壊れるまで走る位の勢いが大事だと思っています。」

せっかく自動車部に入ったので、普通じゃ体験できない事をやりたいと言う若林さん(写真中央)。インタビュー中、勢い余って先輩達にたしなめられる場面も

後輩の発言を聞いていた小川さんは、
「来年に向けて、なるべく下級生に整備を教えなきゃいけないと思っています。皆あんまり個人車を整備したりする機会が無いので、今年のうちに整備力の底上げをしておきたいです。練習がたくさん出来るように備えないと去年の二の舞いになってしまいますから。」
と話してくれました。

新たな車両の導入で拓かれる可能性

高いモチベーションとバイタリティを持つ2年生と、落ち着いて先を読んだ計画を立てる3年生という組み合わせで勢いづく東京電機大学自動車部ですが、さらに嬉しい知らせが。
練習用の車両として、最近スズキ・アルトが新たに部車に加わったとの事。取材した当日は、入学間もない大学1年生が運転練習として大学構内で教習走行を行っていました。

部車として新規導入されたスズキ・アルト。まだ具体的に方針は決まっていないとの事だったが、軽自動車での耐久レースなどへの参戦を検討中との事だった

学生自動車連盟主催のジムカーナ大会専用の競技車であるインテグラは、車検を取得していないため自走しての移動ができません。そのため、練習や試合で遠征する際には積載用のレンタカーを毎回借りなければならず、財政を圧迫する上に時間の制約などもあり、なかなかインテグラでは練習しづらいそうです。
そんな中でこのアルトは、今後に向けて大きな存在となると思われます。3年生たちは、後輩たちにアルトを大切に乗って欲しいと思う反面、ガンガン練習して使い倒して欲しいと願っています。

アルトで運転体験をする1年生。敷地の広い千葉ニュータウンキャンパス構内にて、ガレージ付近や駐車場などで安全に注意しつつ教習が行われている

彼らは毎年、8月には栃木県那須塩原のサーキット「ドライビングパレット那須」にて合宿を行い、また年末には走り納めとして走行会を実施しています。これらは部車を用いての練習はもちろん、各個人の所有するクルマでの練習も自由に出来るのだとか。

個人車の所有は自由なので、各々好きなクルマを所有しカーライフを楽しんでいる。もちろん、先ほど紹介したハウさんの様に個人車を持たない部員もいる

取材当日にはガレージにOBの先輩たちが駆けつけて、彼らの活動を見守っていました。現役部員としては、経験豊富な先輩方から整備や運転などをもっと教わりたいと思っているそうです。
何かを成そうとすれば、様々な障壁に直面するのは当然のこと。そうした困難も成長機会として楽しみつつ学び、挑戦を続ける彼らの今後に、是非ご注目頂きたいと思います。

[ガズー編集部]