25年・25万キロは蜜月の日々。69歳のオーナーが溺愛する1993年式三菱・GTO ツインターボ(Z16A型)

惚れ込んだ1台のクルマをなんとしてでも手に入れたい。そのことばかり考えていて、頭から離れない…。

そんなとき、最近であればスマートフォンでオフィシャルサイトを眺めるか、インプレッション記事に目を通すのだろうか。それはそれで手軽に見ることができて楽しいだろう。しかし、惚れ込んだクルマは、カタログを手元に置いて眺めていたい…。まだまだそんな人も多いのではないだろうか。

美しい写真と購買意欲を掻き立てるキャッチコピー。ボディカラーはどれにしよう。オプションは?そんなことを妄想しながらカタログを枕元に置き、そして眠りにつく…。クルマ好きにとって、このうえなく幸せで悩ましいひとときだ。

今回は、一目惚れしてから約2年間、カタログを熟読してついに念願のオーナーとなり、今日まで1台の愛車と25年・25万キロをともにしたというオーナーを紹介したい。

「このクルマは、1993年式三菱・GTO ツインターボ(Z16A型)です。リトラクタブルライトから固定式に変更された中期モデルにあたります。新車で購入してから、これまで25年・25万キロをともにしています。現在、私は69歳です。来年には古希を迎えますから、日本で最年長のGTOオーナーかもしれないですね(笑)」

三菱・GTO(以下、GTO)は、1989年に開催された第28回東京モーターショーにおいて「三菱・HSX」として参考出品され、大きな反響を呼んだ。このHSXが1990年に三菱・GTOとして発売され、何度かのマイナーチェンジを繰り返して2001年まで生産された。

GTOのボディサイズは全長×全幅×全高:4575x1840x1285mm。オーナーの個体には、「6G72型」と呼ばれる排気量2972cc、V型6気筒DOHCツインターボエンジンが搭載され、最高出力は280馬力を誇る。中期モデルからヘッドライトが固定式となり、大きく印象が変わった。そして、当時注目された6速MTが採用されたのもこのモデルからだ。この時代のGTOは、4輪独立懸架(4IS)、電子制御サスペンション(ECS)、4WS、4輪ABS、そしてフルタイム4WDと、電子制御デバイスで固められたモデルでもあった。N1耐久レース参戦のために、APロッキード社製の6ポッドブレーキキャリパーがオプション設定されたことでも話題となった(グリーンにペイントされたPUMA GTOのレーシングカーのことを記憶している人もいるだろう)。

念願のオーナーとなってから四半世紀という時が流れたGTOだが、どのような経緯で手に入れたのだろうか?

「第28回東京モーターショーに出品されていた三菱・HSXがきっかけです。モーターショーには行けなかったんですが、新聞広告にHSXが載っていたんですね。その後、GTOとして市販されることになり、ディーラーに行ってカタログとプロモーションビデオをもらいました。すぐにでも欲しかったんですが、決して安いクルマではありません。数年間はカタログとビデオを見て『仕事を頑張って、いつかGTOを手に入れるんだ!』と思いつつ、悶々とした日々を過ごしていました。そうして、ようやく金銭的な目処がついたときには、マイナーチェンジを迎える直前になっていたんです」

ようやく購入の目処がついたところで、オーナーはマイナーチェンジ前とマイナーチェンジ後のどちらを選ぶか、悩ましい選択を迫られることになる。

「リトラクタブルヘッドライトが特徴的な初期モデルの最終型にするか、固定式ライトに変更され、6速MTを積んだマイナーチェンジ後にするか迷いましたね。結局、マイナーチェンジの詳細が発表されてから決めることにしました。ディーラーのセールスマンもことあるたびに売り込んできて、早めにオーダーすればマイナーチェンジ後のファーストロットが手に入るということが分かり、それが決め手となりました。事実、発売日の当日に納車されましたよ(笑)。アコーディオンガレージを用意するなど、万全の体制で受け容れ準備をしていましたが、いざ納車されてみると『本当に俺はGTOを買ったのかな?』と思ったり、はじめのうちは不思議な心境だったことを覚えています」

念願のGTOを手に入れたオーナーだが、それまではどんな愛車遍歴を経てきたのだろうか?

「勤め先の会社の社長が所有するクルマを運転する機会が多かったので、私個人で所有したクルマはGTOを含めて3台しかありません。最初のクルマは三菱・ギャラン ラムダ 2000でした。それから数年後に三菱・ギャラン ラムダ 2600 スーパーツーリングが出ると知り、特別に最初のギャラン ラムダと同じ色に塗ってもらいました。そして今のGTOです」

こうしてようやく手に入れることができたGTO。購入時に選んだオプションや納車後にモディファイした箇所はあったのだろうか?

「購入時に選んだオプションはCDチェンジャーくらいですね。手に入れてからは吸排気系を交換しました。エアクリーナーはM's製、フロントパイプおよびスポーツ触媒はピットロードM製、マフラーはA'PEXi製を選びました。ホイールはADVAN Racing製のRSというモデルです。外装は、ヘッドライトを最終型のものに変更しています。あとは、輸出仕様のフロントのマーカーに交換したり、フロントバンパーにメッキのアクセントを加えたくらい。内装は、ステアリングとサイドブレーキの革を赤いものに巻き直してあります」

ここで、GTOのもっとも気に入っているポイントを挙げてもらった。

「なんといってもこのスタイリングに尽きますね。あるクルマで『デザインは性能である』というキャッチコピーがありましたが、確かに、例え高性能なクルマであったとしても、デザインが優れていなければ魅力が感じられないんです。その点においてGTOは、私にとって理想的なクルマであり、このデザインとパッケージを創り出してくれた当時の開発陣に尊敬の念を抱いています。『今でも皆さんの設計意図を汲んで乗り続けていますよ!』と、この機会にお伝えしたいくらいです」

GTOを所有するうえで、もっともこだわっているポイントを挙げてもらった。

「運転するときの儀式としてドライビンググローブを愛用しています。常に緊張感を持って運転したいんですね。最近のクルマは大半がAT車になってしまって、気軽に運転できるようになった分、流れの中に身を置くという意識が薄れてきているのかな…と感じることも増えましたね」

生産終了から20年近い年月が経つGTOだけに、現在でも部品は手に入るのだろうか?

「現時点ではある程度の部品は揃いますが、欠品も増えてきましたね。実はもうすぐ車検なのですが、GTO乗りの友人から情報をもらったりしています。彼はGTOで48万キロも走破していますから、壊れる前に直すためにもこれまでに起こったトラブルをフィードバックしてもらっているんです」

■約27年・48万キロをともにしたワンオーナーの愛車。1991年式三菱・GTO ツインターボ(Z16A型)
https://gazoo.com/ilovecars/vehiclenavi/180529.html

25年・25万キロという時間のなかで、手放してもよいかなと考えたり、乗り替えようと思ったことはなかったのだろうか?

「ありません!仮に何らかのきっかけで大金が得られたとしても、スーパーカーを買わないでしょうね。もしそんなお金があったら、GTOのメンテナンス代にあてますよ(笑)。維持費の掛かるクルマですし、長く大切に乗っている人には税制面で優遇してくれる処置など、少しでも維持費を軽減してくれたらいいなと思いますね」

最後に、このクルマと今後どう接していきたいかオーナーに伺ってみた。

「これからも、可能な限り乗り続けたいですね。もはや『相棒』といっていい存在です。車庫にGTOがいるだけで力がみなぎってきますし、このクルマがいない生活なんて考えられないんです。先日、このクルマでタイヤショップを訪れたとき、若い店員さんが『動いているGTOを初めて見ました!』と感激していたんです。もうそんな時代なのかと。確かに維持費が掛かりますから、さまざまな事情で手放してしまう仲間もいます。そのせいか、最近は街中でGTOとすれ違う機会も少なくなってきましたよね。しかし、創り手の想いに心から賛同しているオーナーとしては、もはや代わりになるクルマが存在しないんですよ」

オーナーにもさまざまな考え方の人がいる。買って満足してしまう人と、買ってからより愛情が深まる人だ。このGTOのオーナーは、間違いなく後者だろう。取材時、オーナーはGTOや過去の愛車であるギャラン ラムダのカタログをわざわざ持参してくれた。どのカタログも保存状態は極めて良好だ。これだけで、いかに自分の愛車に対して深い愛情を注いでいるかが分かる。そんなオーナーが所有するGTOが素晴らしいコンディションを保っていることは、クルマ好きであれば容易に想像できるだろう。

1台のクルマと長く付き合う。なかなかできることではない。さまざまな誘惑があるだろうし、そのうちに飽きてしまう可能性も大いにあるからだ。欲しいと思ってから手に入れるまでに数年を要したからこそ、25年経った今でも蜜月の日々が続いているのだろうか。日本には、このGTOのオーナーのように、1台のクルマととことん向き合い、惜しみない愛情を注いでいる人がまだまだたくさんいる。クルマという工業製品を慈しみ、そして長く使う。まさに「愛車」だ。そんな人たちが、1年でも、1日でも長く「愛車」を所有できるような制度をそろそろ本気で考えて欲しいものだ。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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