中身は現代仕様の1976年式 トヨタ・セリカ改 ST(TA35型) はショップのデモカー。「レストモッド」に挑戦するオーナーの物語

「若者のクルマ離れ」と呼ばれて久しい昨今だが、旧車のムーブメントが静かに訪れている。特に、昭和・平成初期(1970~1990年頃)に生まれた国産車が人気だ。中古車価格も高騰の一途をたどっている。

付随して「レストア」の需要も高まってきた。すでに国内の各自動車メーカーは、部品の再生産やレストア事業に乗り出している。さらに「レストモッド」と呼ばれる手法も注目されている。「レストモッド」とは「レストア」と「モディファイ」を組み合わせた造語だ。見た目は旧車だが、中身は現代の部品に交換してあるというもの。何かと故障のイメージがある旧車だが「レストモッド」によって現代のクルマと同じ感覚で楽しめるのだ。

ここに佇む1台のトヨタ・セリカ改 ST(TA35型、以下セリカ)も「レストモッド」によって蘇った1台。メカニックであるオーナーが自ら手がけた個体だ。トヨタ・アルテッツァのエンジンに換装し、駆動系もすべて現代仕様となっている「公認車」(構造等変更検査によって車検を取得した車両)である。中身が現代仕様とは想像できないほど、当時の自然な雰囲気を保っている。

主人公のオーナーは、50歳の男性。旧車専門のチューニングショップ「Ones craft works」を営む。以前はチューニングメーカーに在籍し、開発担当やレースメカニックとして、長年クルマに携わってきた。そんなオーナーがどんなクルマたちを乗り継いできたのか、まずは愛車遍歴から伺ってみた。

「クルマを選ぶ基準は全然なくて、そのとき乗りたいクルマに乗ってきました。トヨタ・MR2(AW11型)、スズキ・アルトワークス、ロータス・エスプリ、プジョー・405ステーションワゴン、シボレー・アストロを2台、ホンダ・アコードワゴン、日産・ステージアですね。今はスズキ・エブリイと、このセリカです」

オーナーの「人生観を変えたクルマ」はあるのだろうか?

「やはりスーパーカーはいいですね。まずはランボルギーニ・カウンタック。国産ならスカイラインGT-R(R32型)でしょうか。GT-Rが発売されたばかりの頃、私は某チューニングメーカーで勤務していたんですが『ノーマルでこんなの出しちゃっていいの?』と思うほど衝撃的でした。GT-Rを含めてバブル後に作られたクルマは長持ちです。錆びないし、20万キロでも30万キロでも走れますから。バブルは、クルマ業界にも大きな恩恵をもたらしました」

逆に、ここ数年間に登場したスポーツカーで、印象に残ったクルマを尋ねてみた。

「マツダ・ロードスター(ND型)は良かったです。コストをかけて開発している印象を受けました。実際に乗ってみても気持ち良かったです。特に、吹け上がりのいいエンジンが魅力的でしたね」

今回紹介するセリカは、オーナーの愛車で、ショップのデモカーでもある。

「この個体は初代モデルです。世に言う『ダルマセリカ』ですね。1976年式の後期型になります。グレードはST、手に入れたのは4年前です。オドメーターは10万500キロですが、乗り始めてからは1000キロくらいしか走っていません。普段はイベントに参加したり、ごくたまにドライブするくらいです」

トヨタ・セリカは、1970年にデビュー。初代モデルの「未来の国からやってきたセリカ」のキャッチコピーや、CMソング「恋はセリカ」とともに懐かしく思い出すクルマ好きも多いだろう。国産初のスペシャルティカーの先駆けとして、当時の若者に人気を博した。水冷直列4気筒OHVツインキャブエンジンが搭載され、最高出力は105馬力を発生した。シリーズは7代にわたり、2006年まで生産された。

オーナーに、初代セリカをデモカーに選んだ理由を伺ってみた。

「デモカーを製作するために、ライトウエイトスポーツカーの旧車を探していたんです。110サニー、KE15型のカローラやスプリンター、パブリカなどが候補でしたが、たまたま見つけたのがこの“ダルマ”でした。奇遇にも幼い頃に父親が乗っていたんですよ。このセリカに乗せられて、東北道も開通していない頃に、峠道を走って帰省した記憶が、うっすらと蘇ってきました」

「思い出の1台」と、実際に対面した状況は?

「クルマは愛知県にあったので、現地まで引き取りに行きました。この個体は実質ワンオーナーだったんですけど、オーナーが高齢になり、乗らなくなってからかなりの年月が経っていたので、状態は非常に悪かったですね。加速しない、曲がらない、止まらない。エンジンサウンドの美しさも失われていました。この時代のクルマは『10年10万キロ』で買い換えが想定された作りになっているので、寿命をとうに超えていたんです」

こうしてオーナーの手により、旧車の外装は活かし、動力および駆動系は現代のものに載せ換えられ「セリカ改」として生まれ変わった。一見、手が入っているようには見えないが、随所にこだわりのモディファイが施されている。

「エンジンはトヨタ・アルテッツァ用(3S-GE)を搭載しています。特に、最終型の3SGはすごくできがいいです。それから4スロ、ダイレクトイグニッション、6速MT、エアコン・パワステ付きのフルコン制御です。足まわりはシルビア用、日産・フェアレディZ(Z32型)用のブレーキを移植して、アルミ製の4POTキャリパーを入れています。ホイールはVOLK RACINGのメッシュホイールです。14インチホイールにこだわり、ゴールドに染め直しました」

アップデートされたセリカの乗り味は?

「スポーツカーらしい部分も、ちゃんと残せたと思います。マフラーと連動した吸気音がして、カムに乗って加速していくという高揚感やロマンを感じる演出は、スポーツカーにしか出せませんから。そして車重が軽いこと。それでも、エンジンや駆動系をすべて載せ換えると、車重は1トンを超えてしまいました」

走りが軽やかで故障もなく、パワーもある。多くのクルマ好きが望む仕様だと思うが、周囲の反響は?

「反響というか、実はもう1台製作中なんです。車種はトヨタ・セリカ リフトバック(TA27型)。あと1ヶ月もすれば完成予定です。本当はターボ仕様を考えていたんですが、最終的にはNAになりました。これで良ければボルトオンターボか、MR-2(SW型)のエンジンに載せ換えてもいいですね」

部品の調達で苦労した点はあるのだろうか?

「ゴム関係の部品は出ないですね。これは国産車全体に共通して言えます。そういう点で、専門店は強いですよね。部品も情報も集まってきます。原因もすぐに判明するので、結局は費用が安く済むメリットもあるんです」

情報収集と部品調達は、仲間同士のネットワークやショップの存在などの「横のつながり」が大切だ。特に専門店は、国産の旧車においてはセーフティネットになっていると言える。

製作するうえで、もっともこだわった部分を伺ってみた。

「シンプルに仕上げることでしょうか。現代に登場することはないであろう、古き良き時代に走っていたスポーツカーの姿にこだわりました」

最後に、このセリカと今後どのように接していきたいか伺ってみた。

「雨の日を避けながら、部品がないのでぶつけないように乗っていきたいと思います(笑)。乗りたいクルマもたくさんありますね。アルファロメオの段付き(ジュリア)、サニー110クーペ、Z31(フェアレディZ)の後期型。旧車にガンガン乗っていきたいです」

本来なら寿命を迎えてもおかしくないクルマたちが、時代を超えて元気に走り回る。こんな時代がくることを想像していただろうか。「名車」が後世へ残っていくひとつの姿として「レストモッド」という例もあるのだ。

オーナーは、今後も「レストモッド」の販路を拡大していきたいと考えているという。幅広い世代が手軽に旧車の魅力を楽しめる、そんな夢のある事業がひいては「クルマ離れ」に歯止めをかけるようにと、疾走するセリカの姿を眺めながら、願わずにはいられなかった。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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