新車で手に入れて25年。仲間から「盆栽スカイライン」と呼ばれる1994年式日産・スカイライン クーペ GTS25t Type M改(ECR33型)

この取材を続けていると、愛車との接し方はまさに十人十色だと実感する。

ドライブしたその日のうちに洗車すると決めている人。雨が降りそうな日にはぜったいに乗らないと決めている人。ブログやSNSなどに毎回の運転記録を詳細に書き込んで公開している人。実にさまざまだ。やり方は人それぞれだが、愛車を思いやる気持ちという点においては見事なまでに共通している。

しかし「新車で手に入れたクルマを長きに渡り所有している=つまりワンオーナー車」となると、ぐっと限られてくる。

今回のオーナーは、21歳のときに現在の愛車を手に入れ、46歳になった現在も大切に所有しているという。つまり、25年間、四半世紀にわたり1台のクルマとともに歩んできたことになる。その想いを伺ってみることにした。

「このクルマは、1994年式日産・スカイライン クーペ GTS25t Type M改(ECR33型/以下、スカイライン クーペ)です。新車で手に入れてから25年になります。現在の走行距離は、通算で約8万キロです。所有年数の割に距離が伸びていないことと、常に何らかの手を入れているため、仲間内からは『盆栽スカイライン』といわれています(笑)」

ECR33型のスカイライン クーペは、GT-Rが復活を遂げたR32型の後継モデルとして1993年にデビューを果たした。R33型のGT-Rがデビューしたのは1995年であるため、一時期はECR33型のスカイラインとR32型GT-Rが併売されていたことになる。

スカイライン クーペのボディサイズは全長×全幅×全高:4640x1720x1340mm。このモデルから、より大型化されたモデルだ。オーナーの個体には、「RB25DET型」と呼ばれる排気量2498cc、直列6気筒DOHCターボエンジンが搭載され、最高出力は250馬力を誇る。

さて、今年で25年の付き合いになるという「盆栽スカイライン」こと、純白のスカイライン クーペ。どのような経緯で手に入れたのだろうか?

「幼少期に見た『西部警察』の影響で、もともとスカイラインには憧れを抱いていました。私が20代前半だった頃、父親と共同購入でR32型GT-Rの最終モデルを考えていたんですが、生産終了後で、すでに予約を締め切ったタイミングだったんです。次に候補に挙がったのが、180SXとデビューしたばかりのS14型シルビアでした。当時(1994年)はいずれも強気な販売をしていて、値引き額もわずか。試しにこのスカイライン クーペの見積もりを算出してもらったところ、思いのほか好条件で購入できることが分かったんです。父とも相談して、それならば思い切ってスカイライン クーペを買おうということになりました。ボディカラーは満場一致でホワイトに。ツートーンカラーでなければ、ダークブルーを選んでいたかもしれません」

こうして、直6エンジン(しかも、RB型のターボエンジンだ!)+FR+MTという、クルマで走るのが楽しくて仕方がない時期に、理想的ともいえる愛車とのカーライフがスタートした。

「それまではトヨタ・マークII(GX71型)に乗っていたんですが、足まわりを替えて、ローパワーでどこまでドライビングテクニックが向上するか奮闘していましたね。改めて思うと、ローパワーのハチロクで一生懸命に走っていたような感覚に似ているかもしれません。私がこのスカイライン クーペを手に入れたときは、ABSやSRSエアバッグシステムはメーカーオプション扱いだったんです(アクティブLSD仕様のみABSを標準装備)。そのあとの仕様変更で標準装備となりましたから、R33型としては軽量だった時代のモデルを手に入れることができたんです」

「昔と比べて現代のクルマは重くなった」という声をしばしば耳にするが、これはやむを得ないことかもしれない。ボディはモデルチェンジを重ねるごとに大型化され、さまざまな安全装備が標準化されたのだから、車重が増えることは避けられないだろう。

その後、このスカイライン クーペとオーナーは離れがたい存在として付き合いを重ねていくことになる。その間にオーナーは自動車のメカニックとして社会人デビューを果たし、名車や希少車と仕事を通じて接していくこととなる。

「整備をしていてもっとも感動したのは、ポルシェ・911GT2(993型)ですね。同型のノーマルのカレラとは似て非なるクルマのつくりや、スカイラインGT-R(R32や33型)のハイチューン仕様車が600馬力を優に超えていた時代に、911GT2はカタログ上の最高出力は430馬力。一見すると前者の方が性能は上に思いがちですが、数値では表しきれないトータルバランスの良さなど、圧倒的な差を感じました。メカニック時代に得た経験が、自分のクルマを仕上げていくうえで大きな影響を受けていることは確かです」

オーナーは20代から30代を経て、40代へと年齢を重ねていく。その間に、クルマのプロフェッショナルとしての経験を積み重ね、審美眼に磨きを掛けていくと同時に、愛車を増車する機会にも恵まれた。実は以前、オーナーの愛車遍歴のなかの1台であるクルマを取材させていただいたことがある。徹底的に手を入れたトヨタ ・スプリンター トレノ(AE86)を12年所有し、前期モデルの86を経て、現在は2016年に大幅なマイナーチェンジを施した86と、スバル・レガシィ ツーリングワゴン(BH型)も所有する。

もはや、オーナーの人生を語るうえで欠かせない存在であろうスカイライン クーペと、最新モデルの86。出掛けるときにどちらのキーを手にするか悩ましい2台だが、どのように使い分けているのだろうか?

「ドライビングテクニック向上の一環としてサーキット走行をしているのですが、日光サーキットなどのショートコースを攻めるときは86で、ある程度パワーが必要な場合はスカイライン クーペに乗っていきます。ロングツーリングのときに使用することもありますね。人や荷物を乗せるときはレガシィといった使い分けをしています。頻繁にクルマを買い替えるタイプではなく、1台のクルマとじっくりと付き合っていく方だと思います。86はわずか4年で2台目の同型車に乗り換えてしまいましたが、これは過去の愛車遍歴のなかでも初の例外です」

ひとつ、気になったことがある。仲間内から『盆栽スカイライン』と呼ばれている所以についてだ。

「ここ最近はあまり走行距離が伸びていませんし、何より常に手を加えてクルマを進化させているからです。チューニングの方向性は、仕事で接した911GT2をはじめとするクルマから得た経験をフィードバックさせていますね。

エンジンは腰下(シリンダーブロック以下)とヘッド以外はすべて変更しています。カムとコンピューターは現車合わせで製作・セッティングしています。その他、タービン・フロントパイプ・サージタンク・インタークーラー・燃料系全般にも手を入れました。タービンはHKS製のGT2535を装着しています。ノーマルエンジンの特性をそのまま引きあげたような仕様です。その他、マフラーはHKS製、足回りは、オーナーの師匠でもある友人が運営するC.S.Project(全日本ラリーにて複数回のシリーズ入賞経験あり)製であり、40段調整の別タンク式でワンオフのサスペンションキットに、サスアームはNISMO製のアーム一式およびクスコ製調整式リヤアッパーアーム(公認取得済み)、リヤメンバーブレースはNISMO製のR34GT-R用、デルリン製メンバーカラー(レアモノ。すでに絶版)といった構成です。ブレーキはエンドレス製パッドとNISMO製のホースをセレクト。ボディは、ドアの開口部および窓ガラスを外してスポット増しを、サイドシルにも鉄板を溶接して剛性を強化しています。購入時に装着したエアロフォルムバンパーにジーベック製のリップスポイラー、純正サイドステップとイーストベアー製のリアサイドバンパーを装着しています」

オーナー自身、メカニックとしての経験を活かし、そこで得られたノウハウを投入していく。できるだけ自分でチューニングできるところは手を加え、大掛かりな作業は信頼できる友人・知人のスペシャリストに託す。こうして、オリジナルの素性を活かしたファインチューニング仕様のスカイライン クーペが造りあげられてきたのだ。しかも『盆栽スカイライン』だけに、常に手を加えて進化をしているだけでなく、公認車両として車検をクリアできる状態に仕上げている。さらに、オーナー自身、納得がいくまで自ら部品を吟味して手が加えられる点も、一般のオーナーとは異なる大きなアドバンテージといえそうだ。

オーナーと青春時代をともにしたこのスカイライン クーペのもっとも気に入っている点・こだわっている点について伺ってみた。

「やはりエンジンのフィーリングです。闇雲にパワーを追求するわけではなく、結果として5リッターNAエンジンのようなフィーリングが得られるようになりました。手に負えない600馬力より、扱いきれる400馬力の方が、結果として速く走れますから。そのためにもドライビングテクニック向上には余念がないつもりです。こだわっているのは…、強いていえばあくまでも純正ライクに見えるように気を配っています。スカイラインといえば『羊の皮を被った狼』ですし(笑)」

最後に、このクルマと今後どう接していきたいかオーナーに伺ってみた。

「試行錯誤を繰り返してここまで仕上げたクルマですし『墓場まで持っていきたい』くらいです。何と言ってももう、25年の付き合いですよ。手放せないですよね(笑)。少しずつ、純正部品の製廃や欠品が増えてきていますが、R33GT-R用のものを流用してやりくりしていきます!」

腐れ縁といってしまえばそれまでだが、何しろ25年、四半世紀だ。「乗り換えるくらいなら増車する」という選択肢ができたのは、オーナーが仕事に邁進してそれだけの実力を手にしたからなのだ。

いつの間にか、乗り換えることが当たり前になってしまったクルマとの付き合い方。しかし、1台のクルマとじっくりと向き合ったからこそ見えてくる世界がある。フルオリジナルで乗るもよし、オーナーのように、「盆栽」のごとくひたすら自分の理想形を追い求めて仕上げていく付き合い方もありだ。

ワンオーナー車として、長く付き合えるクルマに出会えたこと。それはクルマ好きにとってこの上なく幸せなカーライフであることは間違いない。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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