2ケタ“33ナンバー”ごと後世に残していきたい…。1991年式メルセデス・ベンツ230TE(S124型)

公道を走るクルマを所有するうえで必要になるもののひとつがナンバーだ。かつては1ケタだったものが2ケタになり、1998年5月からは3ケタナンバーに変更された。さらに2017年からは下2ケタにアルファベット文字を追加している地域もある。

こだわりのある人なら、登録時に指定ナンバーを選ぶ人が多いかもしれない。たとえば86なら「・・86」、スープラなら「・・90」のように、クルマの型式をナンバーにしたり、オーナー自身や家族の記念日などを選ぶケースもあるだろう。かつては希望ナンバーを選ぶことができなかっただけに、あらゆるツテをたどって愛車にまつわる番号を獲得できた人が自慢できた時代もあった。

また、古いクルマを所有するうえで、登録時から掲げているナンバーを歴代オーナーが大切に受け継ぐ「儀式」も決して珍しいことではない。かつては1ケタ(シングルナンバー)が主流だったが、近年では2ケタナンバーも受け継ぐ対象になりつつあるようだ。

今回のオーナーも、いまや貴重な存在となりつつある2ケタナンバーのクルマと出会い、そして、縁あってファーストオーナーとも出会うことができたのだという。そのあたりのエピソードをじっくりと伺ってみたい。

「このクルマは、1991年式メルセデス・ベンツ230TE(S124型/以下、S124)です。手に入れてからまもなく4年、私で2オーナー目となります。現在のオドメーター上の走行距離は11万4千キロ、私が手に入れてからは4千キロくらい走りました。ファーストオーナーさんがお住まいの地域と私の自宅が同じナンバーの管轄だったこともあり、“33ナンバー”をそのまま引き継ぐことになりました」

1990年代、日本は空前のステーションワゴンブームだったことを記憶している人も多いだろう。スバル・レガシィツーリングワゴン、トヨタ・カルディナ、日産・アベニール、三菱・レグナム…等々。各メーカーからステーションワゴンが発売され、人気を博した。輸入車でも、ボルボをはじめ、アウディやVWなど、さまざまなステーションワゴンが輸入された。そのなかで、名実ともに頂点に君臨していたのがメルセデス・ベンツ Eクラス(またはミディアムクラス)ステーションワゴンだろう。輸入車勢は現在でもさまざまなステーションワゴンタイプを選ぶことができるが、日本車は「レヴォーグ」に進化したレガシィツーリングワゴンを除けば、ほとんどのモデルが絶版車となってしまった。

S124のボディサイズは全長×全幅×全高:4765×1740×1490mm。排気量2297ccの直列4気筒エンジンは、最高出力135馬力を誇る。ちなみに「S」はステーションワゴンを意味し、セダンの「W」、クーペの「C」、カブリオレの「A」がラインナップされている。

いまや貴重な存在となりつつある“33ナンバー”を引き継ぐことになったオーナー。そんな現在の愛車との出会いを伺ってみた。

「SNSでつながっている方がシェアしていた投稿がこのクルマと出会ったきっかけです。とある中古車販売店のブログだったんですが、自分が引き継げる“33ナンバー”だったこと、ワンオーナー車で内外装の状態がきれいだったことに惹かれました。実車を見てこれもご縁かなと思い、購入を決めたんです。しかし、そこからが大変でした…」

どれほど程度良好といわれても、そこは20年以上前につくられたクルマだ。当然ながら新車のようにはいかない。

「確かに内外装のコンディションは良かったんですが、ブレーキをはじめ、機関系はガタガタの状態でした…。ディーラーでメンテナンス費用を見積もってもらったところ、正直目玉が飛び出そうな金額になったほどです。それでもなんとか可能な限り切り詰めて修理してもらいましたが、本調子とはいかず…。ちょうど主治医となる方を探していた時期だったので、友人にこの年代のメルセデス・ベンツを得意とするショップさんを紹介してもらい、1年点検や車検と合わせてメンテナンスしてもらいました。手に入れてから4 年。ここにいたるまでかなりの手間とお金が掛かったことは事実です」

ここまで手が掛かると、たいていは嫌になって手放してしまうものだが、オーナーは違った。

「メンテナンス代にかなりのお金をつぎ込んでしまったので、“売るに売れなくなってしまった”というのが正直なところです(笑)。仮に下取りに出したとしても、メンテナンス代は加味してもらえませんから、二束三文で手放すことは避けられないでしょうし…」

1台のクルマととことん向き合い、惜しみない愛情、お金、時間、そして手間を掛ける。結果、愛着が湧いて手放せなくなる…。これこそ、1台のクルマと長く付き合うコツなのかもしれない。少なくとも、頻繁にクルマを買い替えるよりは安上がりのはずだ。さらに、縁とは不思議なもので、このクルマのファーストオーナーとの対面も実現したという。

「このクルマで、あるイベントに参加したときのことです。プジョー309オーナーズクラブの会長さんが声を掛けてくれまして、“職場の後輩の父親が所有していたクルマだ”と仰るんです。その方の計らいでファーストオーナーさんにお会いすることができました。同じナンバーの管轄なので、私の自宅からクルマで20分くらいのところにお住まいだということもこのとき初めて知りました」

友人・知人間の売買ならともかく、まったく接点のないファーストオーナーと出会えることは奇跡に近いかもしれない。

「お会いしたのは寒い冬の日のことでした。2時間くらい話しましたね。ファーストオーナーさんも私に会いたかったそうです。新車で手に入れた当時から、手放すことになった経緯までさまざまなエピソードを伺うことができました。お子さんが生まれたときもこのS124で病院へ向かったことや、離れたご実家へ何度も帰省したときのこととか…。

しかし、長く所有するにつれ、家族から“いい加減、買い替えてくれ”といわれるようになったそうです。そこで、ディーラーに聞いてみたところ、引き取られたらそのまま廃車になる運命だと知らされたのだとか…。それはあまりにも忍びないので、大切に乗ってくれそうな人を探したところ、ご縁がなく、私が購入した中古車販売店に買い取られることになったそうです。そして、そのタイミングで私が見初めたわけです。ファーストオーナーさんからは、“回り道をしましたが、結果的に良い人に引き継いでもらえてよかった”と仰っていただいただけでとても嬉しかったです」

このとき、ファーストオーナーから“あるもの”を譲り受けたのだという。

「ヴィークルデータカードという書類です。このカードは、生産時のクルマの仕様がひと目で分かる出生証明書のようなもので、紛失したら再発行されない重要なものなんです。そんな大切なものまで託してくださったのですから、このクルマへの愛情がますます深まっていきました」

オーナーはこのクルマを迎え入れ、維持することを決意したことで、実はある重大な決断を下そうとしていた。

「それまで大切に乗っていた1995年式メルセデス・ベンツE320T(S124型)を“断腸の思いで”手放そうと思っています。一生乗るつもりでメンテナンスやコンディションにも惜しみない愛情を注ぎ続けてきたクルマだけに、本当に悩んでいます。もし、手放すことになったら…手塩に掛けてきた分、次のオーナーさんはかなりコンディションの良い状態で乗っていただけると思います」

実は、オーナーが“断腸の思いで手放そうかと心底悩んでいる愛車”を取材させていただいたことがある。きっと、その想いがとても強いことは理解していただけるはずだ。

もしかしたら、大切に所有してきた1995年式メルセデス・ベンツE320Tを手放すことになったとしても、この個体を維持することを決意。
そして、ファーストオーナーとの対面をも果たした現オーナー。
改めて、今後このクルマとどう接していきたいのか?意気込みを伺ってみた。

「オーディオは私が好きなメーカーであり、“虎の子”として保管してきたNakamichi製のCD-500に交換しましたが、それ以外は極力オリジナルコンディションを維持していきたいと思っています(後日、インターネットオークションでさらに程度が良好なCD-500を新たに入手したという)。アルミホイールもインターネットオークションでコンディションの良いものを落札したので、どこかのタイミングで交換したいですね。生産終了してからそれなりに年数が経過してきているので、欠品している部品も増えてきましたが、前オーナーさんの意思を継ぎつつ、末永く所有していきたいです」

かつて自分が所有していたクルマは今ごろどうなっているか…。ふと気になったことがある人は案外多いように思う。この連載を楽しみにしていただいている方であればなおさらかもしれない。少なくとも、今回のようなケースはかなりのレアケースといえるだろう。それも、1台のクルマが紡いだ「縁」に他ならない。

余談だが、取材中に周囲が急に暗くなり、にわか雨が降り出した。幸い、屋内で撮影していたのでクルマが濡れることは回避できた。すぐににわか雨はやみ、晴れ間がのぞいたのだが、路面はまだウエットのままだ。このままクルマを置いていったん帰宅し、路面が乾いた時点で再度引き取りに来るか、それとも思い切って帰路につくか…。この時点でオーナーはかなり迷っていた。

結果として、取材が終わった頃には路面が乾き、オーナーも少し安心した様子で帰宅していった。それだけこの個体のことを気遣っているのだ。ファーストオーナーと同じか、もしかしたらそれ以上の愛情を注がれているこのS124は、数十年後も時代を超越するほどのコンディションを維持したまま現存している可能性が高そうだ。ぜひ、数十年後の未来にもその元気な姿を見てみたいと思う。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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