27歳のオーナーが「ラストオーナーでありたい」と語る、1973年式トヨタ セリカ 1600GT(TA22型)

子どもを持つクルマ好きの父親にとって、愛する我が子が自分と同じ趣味に興味を持ってくれるかどうか気掛かり…という人も少なくないだろう。我が子が男の子であればなおさらかもしれない。

幼少期からクルマ関連の雑誌や映像をたくさん見せたり、自分が愛車と楽しそうに接している姿を間近で見せる「英才教育」を施したという話も少なくない。

しかし、これが成功するかどうかは別問題だ。父親の思惑どおりにクルマ好きになってくれたらしめたものだが、子どもはまったく興味がないという話もしばしば耳にする。あわよくば、自分と同じくらいクルマ好きになってくれたら…これくらいの心持ちがちょうどいいのかもしれない。

その点、今回のオーナーは、父親の英才教育が大成功した例といって良いだろう。クルマ好きの父親であれば「うらやましい!」と叫ばずにはいられないエピソードをご紹介したい。

「このクルマは、1973年式トヨタ セリカ 1600GT(TA22型、以下、セリカ)です。昨年春に手に入れたばかりなので、所有歴は1年弱です。現在のオドメーターの走行距離は約2万3500キロなんですが、車検証によるとこれに20万キロが加算されるので、実際は約22万3500キロだと思われます」

この型のセリカがデビューしたのは1970年。昭和45年のことだった。当時のキャッチフレーズは「未来の国からやってきたセリカ」だった。このモデルが「ダルマセリカ」という愛称で呼ばれていることをよく知っている往年のカーマニアも少なくないだろう。国産初のスペシャルティカーの先駆けとして、当時の若者に人気を博した。ユーザーが自分の好みに応じてクルマを仕立てることができる、フルチョイス・システムを採用したことも画期的だったといえる。

セリカのボディサイズは全長×全幅×全高4165x1600x1310mm。トップモデルには、「2T-G型」と呼ばれる、排気量1588cc、直列気筒DOHCエンジンが搭載され、最大出力は115馬力を誇る。ちなみに、車名のセリカはスペイン語で「天の」「天空の」「神の」「天国のような」という意味に由来している。

ところで、オーナーが所有するセリカは1973年に製造されたことになるわけだが、現在27歳、平成1ケタ生まれのオーナーより20歳年上の相棒でもある。なぜ、古いクルマに興味を持ち、所有するまでに至ったのだろうか?

「まず何より、父親の影響が大きいと思います。父も若いころからクルマが好きで、サニーやブルーバードなど、主に日産車を乗り継いでいたそうです。ダートラにも出場していたそうですよ。結果的に、そんな父親から英才教育を受けていたことになるんでしょうね。幼いころからさまざまな自動車雑誌が家にあり、私も読んでいましたから。その記憶が大人になっても消えることなく、私自身もクルマ好きになり、同時に、旧車と呼ばれるクルマに憧れがあったんです」

ちなみに、ご自身の愛車遍歴は?

「1台目の愛車は2011年式フィアット アバルト500です。左ハンドル仕様のMT車で、運転していてとても楽しかったです。セリカは2台目の愛車になります」

2011年式ということは、生産されてまだ10年弱だ。快適性は現代車と比較しても遜色がないだろうし、シビアな扱いを求められることもなさそうだ。ではなぜ旧車を?

「アバルトもとても気に入っていましたが、いつかは旧車に乗りたいという思いがありました。憧れは日産フェアレディZ 240ZGなんですが、旧車ブームの影響なのか、高くなりすぎて手が届きませんでした。そこで、もう少し現実的な価格帯の旧車に目を向けたとき、候補に挙がったのがこのセリカとカローラ レビン(TE27型)というわけなんです。私は動物が好きで、飼うときもフィーリング重視。クルマ選びも同じですね。旧車専門店のホームページにアップされているこの個体を見つけた瞬間“これだ!”と思いました。実車を観てみるとしっくりこないこともありますが、このセリカは実車と対面したときも最初のイメージから変わることがなかったので、即決で購入を決めてしまいました。セリカはリフトバックでなくクーペが欲しかったんですが、そこも希望どおりのグレードなんです」

自分よりもはるかに年上のクルマを愛車にする。そう思うようになったきっかけでもある父親には相談したのだろうか?

「父親には事後報告しました。契約した日の夜に(笑)。父親の反応は『マジか!?』でしたけれど、笑顔で迎えてくれましたね。納車後に乗せたんですが『パワステもないクルマは運転したくない』といわれてしまいました」

そして、オーナーには交際中の彼女(オーナーと同世代)がいるという。

「このセリカを購入するとき、彼女にも話しました。彼女はクルマに興味がないので『欲しいならどうぞ』というリアクションでした(笑)。セリカを納車してからはこのクルマで出掛けましたよ。彼女曰く、シートの座り心地はアバルトよりいいそうです。ただ…このクルマにはエアコンが(もちろんクーラーも)装備されていないので、夏場に出掛けるときは電車移動になりました」

バブル期に青春時代を謳歌した世代のデートといえば、クルマは必須アイテムである。時代は移り変わり、デートカーなどという言葉はもはや死語になったが、クルマが便利で快適な移動空間であることに変わりはない。このセリカが快適な移動空間かというと、現代の感覚からすれば不便さを伴う点があることは否めない。オーナーが旧車とカーライフを送ることができていることも、理解ある彼女の存在がいてこそだ。

ホイールやシートなどが交換されているようだが、これはオーナーが購入後にモディファイしたものなのだろうか?

「私が手に入れてからはステアリングを交換したくらいで、あとは販売されていた状態のままです。このスタイルが気に入っているので、崩したくないんです。ステアリングも、購入時に装着されていたものが傷んでいたので、あえて同じ製品(ナルディ クラシック) を選んで取り替えています。"SSR ロンシャン XR-4"ホイールや、メーカーは不明ですが、運転席側だけバケットシートに交換されている点もお気に入りです」

旧車というと、避けてとおれないのはトラブルの問題だろう。

「納車当日、ショップでクルマを受け取り、帰宅しようと最初の交差点を曲がろうとしたらウインカーが作動しないんです。そのままショップに引き返し点検してもらったところ、すぐに直せないことが判明。そのままセリカを置いて、借りていた代車で帰宅しました。この件を含めてウインカーの作動不良が2回、雨漏りが1回。手に入れてからもうすぐ1年近くになりますが、乗れなかった期間もそれなりにあります。それでも、セリカのことが嫌になったり、手放そうと思ったことは1度もなかったですね。これくらいは想定内だと思っていましたし、完成が待ち遠しいなと思っていましたから。やはり、手に入れた喜びの方が大きいです」

販売した旧車が短期間でショップに出戻ってくる理由のひとつに「憧れて買ってはみたものの、手に負えないから」というケースがあると聞く。エンジンを始動してしばらくは暖機運転が必要だし、停める場所にも気を遣う。クラッチミート、シフトチェンジ、アクセルワーク、操作ひとつとっても、現代車のようにドライバーにクルマが合わせてくれるわけではない。むしろその逆だ。これを心地良いと感じるか、それとも面倒だと思うかで、同じクルマから受ける印象はまったく変わってくる。

多少の苦労を伴いつつ、セリカとのカーライフを楽しんでいるオーナー。このクルマのお気に入りやこだわりのポイントは?

「この個体のスタイルそのものですね。出先でセリカを停めて、戻ってきたときに“やっぱりいいクルマだな〜”と眺めてしまいます。それと、アバルトに乗っていた頃より話し掛けられることが増えました。ちょっとコンビニに立ち寄ったつもりが、おじさまに声を掛けられて30分くらい話し込むこともあります。若いときにセリカに乗っていらっしゃった方から、当時の貴重なお話を伺えるのはありがたいですし、うれしいです」

いまは電車通勤とのことだが、以前はセリカで出勤していた時期もあるという。…ということは、時間がないからエンジンを掛けてそのまま急いで出勤…ということもありそうなものだが…?

「そうなんです。セリカで通勤していた時はアバルトに乗っていたときよりも15分早起きしていました。セリカは暖機運転が必要ですからね。ETCのアナウンスが終わったあと、アクセルを3回あおってエンジンスタートが毎朝の儀式でしたね。セリカに乗り換えてから飛ばさなくなりましたし、一連の操作もゆったりになりました」

オーナーが発する言葉のひとつひとつに、愛車への深い愛情を感じる。最後に、この愛車と今後どのように接していきたいか伺ってみた。

「自分がこのクルマにとってラストオーナーでありたいんです。ただ、大事に乗りたいという気持ちに偽りはありませんが、クルマは走ってナンボという考えがあります。特別扱いしないように接するつもりです」

「ラストオーナーでありたい」と語ってはいるが、ひとつだけ例外はある。それは、オーナーがやがて父親となり、子どもを授かったときだ。

「もし、結婚して子どもが産まれたら、やっぱりクルマ好きになって欲しいのが本音ですよね。そして、このセリカを乗り継いでくれたら嬉しいです。でも、本人の意思に任せたいと思っています」

心優しきオーナーには、将来、父親となったとき、お子さんとこのセリカでドライブする日が訪れるに違いない。そして、このセリカも次世代のクルマ好きに受け継がれていくと信じたい。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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