【BMW X3 試乗】ほとばしる上質感と快適さはライバルを凌ぐ…中村孝仁

BMW X3 xDrive 20d M sport
このセグメントのライバルが一気にモデルチェンジを果たす中で、市場的にも遅れてはならないということだったのか、新しいBMW『X3』の日本導入は、本国デビューからたった3か月遅れでやってきた。

具体的なライバルといえば、アウディ『Q5』、ボルボ『XC60』、メルセデス『GLC』などで、このうち、アウディとボルボはつい先ごろ日本市場でニューモデルを公開したばかりである。正直言えば、見た目に最も変化の乏しかったのがX3かもしれない。しかし、その変革はかなり大胆であったし、ある意味では最も大きかったようにも思う。勿論それは乗ってみて感じたことだ。

ほとんど予備知識がないままの試乗で、あれやこれやといじるだけの時間は実際のところなかった。だから、オプション装備のジェスチャーコントロールや、最新のドライブエイドなどは一切試しておらず、純粋にクルマの動的質感や快適性などについて味わってみたというわけである。

◆トピックはふたつ

トピックはふたつある。一つはこのクルマのコードネームが示している。新しいX3は「G01」のコードネームを持つ。長く「E○○」というコードネームで呼ばれたBMW各モデルが、「F○○」に変わったのは、それほど古い話ではなくて、X3についていえば先代モデル、即ち2010年登場(本国)のF25から。それが僅か1世代で新しいコードネームGに変化した。

BMWでGのコードネームを持つのは今のところ、『7シリーズ』と『5シリーズ』のみ。このX3が第3のGのコードネームを持つモデルだ。というわけでアーキテクチャそのものが変更されたと考えて良い。イギリスのオートカー誌などによれば、そのベースとなっているのは何と5シリーズのプラットフォームだという。てっきり『3シリーズ』ベースかと思いきや、である。確かに現行3シリーズはまだFのコードネームを持つから、それがベースならFのコードネームを名乗るはず。というわけで、先ずはそこがトピックの一つ。

もう一つのトピックは、BMWジャパンとして初めて、ヨコハマタイヤをOEタイヤとして採用したことだ。装着されていたのはアドバンスポーツである。すでに性能では定評のあるこのタイヤが、果たしてX3に装着されてどう機能しているか。この点にも非常に興味が引かれた。

内外装には大きな変化がないように感じられた。少なくともデザイン的には…だ。サイズ的にも全長4720×全幅1890×全高1675mmということで、旧型の4665×1880×1675mmと比較してほとんど変わっていないように思えたが、ホイールベースは旧型の2810mmに対し今回は2865mmとかなり伸ばされている。つまり、全長の伸びはそのままホイールベースの伸びというわけで、室内空間拡大が明白なわけである。とりわけ、リアシート居住空間は拡大されていて、ラゲッジスペースも後席使用時に550リットル。後席を倒せば1550リットルとかなりのスペースを持つ。

◆アドバンスポーツが上質さに貢献

問題の走りである。今回の試乗会の場所として選ばれたのは、箱根、大観山。ターンパイクと言えば自動車テストのメッカでもあるのだが、そこだけではつまらないから、元箱根方面に降りて、さらに登り直して箱根新道、そしてターンパイクを走ってみた。元箱根に降りる道路は路面もかなり荒れていて、振動騒音などを試すにはもってこいの場所。そこで得られた印象は、素晴らしく上質な走りの印象と高い静粛性、高いフラット感であった。

ヨコハマ・アドバンスポーツがこんなに静かで快適な乗り心地を提供してくれるのかと、正直驚いた。(失礼!)試乗後にヨコハマタイヤの消費財製品企画部、正友毅氏に聞いてみたところ、通過音規制というのがヨーロッパにはあって、外からの音まで規制の対象になっているとか。だから、音に関してはかなり厳しい制限が設けられているのだそうである。

その音に関していえば、エンジン音も静かであった。搭載されているのは2リットルの直4ターボディーゼル。190ps、400Nmのパフォーマンスを持つ従来と変わらないBMWターボディーゼルである。このエンジン音も全くと言ってよいほど気にならないから、遮音材を盛って騒音はかなり抑え込んでいるようだ。

それにしても新しいX3、とにかく乗ってみると非常に上質なクルマという印象を受ける。この点では明確にライバルを凌いでいる感が強い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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