【アウディ TTS 海外試乗】ゆかりの地“マン島”で実感した、痛快ハンドリング…大谷達也
マイナーチェンジを受けたアウディ『TT』の国際試乗会がイギリス・マン島で開かれた。ところで、マン島がTTというモデル名の由来になっていることを皆さんはご存じだろうか?
イギリスとアイルランドの間に浮かぶマン島では1907年以来、5月下旬ないし6月上旬にモーターサイクルによる公道レースが行なわれてきた。公道レースにもかかわらず平均速度が極めて高い(現在のラップレコードは平均で212km/hを越える)ため、“世界でもっとも危険なモーターサイクルレース”とも呼ばれるこのイベントこそ、マン島TTレースである(TTはTourist Trophyの頭文字)。
現在のアウディを形作った4ブランドのひとつであるDKWは1938年にUKD250というモーターサイクルでTTレースに参戦、見事優勝を勝ち取った。また、戦後になってアウディ・グループに加わったNSUも1954年に250cc以下のクラスで1~4位を独占する大成功を収めた。以来、NSUは特別なスポーツモデルにTTの名を与えるようになり、1965年デビューのNSUプリンツ1000TTではこれが4輪車にも用いられるようになった。アウディTTはこうした伝統に根ざしたネーミングなのである。
今回は初代アウディTTがデビューして20年目の節目ということもあって、その生まれ故郷であるマン島で試乗会を行なうことになった。
マイナーチェンジ版の目玉はふたつ。ひとつはデザインが見直されたことで、もうひとつはドライブトレインが刷新された点にある。
デザインの見直しはフロントグリルがそれまでの水平バーから大胆なハニカム形状とされたのがいちばんの見どころで、そのほかにもチンスポイラー部のエアインテークに加飾が追加されたり、ヘッドライト内部の構成が改められたりした。いっぽうでインテリアに大きな変更点は見当たらなかった。
いっぽうのドライブトレインは、『TTS』を一例に挙げると最高出力が286psから306psへ、最大トルクが380Nmから400Nmへと向上したほか、Sトロニックと呼ばれるデュアル・クラッチ式トランスミッションが従来の6段から7段へと改められたのがポイントである。
マン島で試乗できたのは新しいTTSのみ。正直いってパフォーマンスの向上分は明確に感じられなかったものの、新しい7段Sトロニックはどんなコーナーでもぴたりとギア比があって小気味よかった。
それよりも痛快だったのがTTSのハンドリングで、フロント・エンジンであることが信じられないくらい車体のヨーモーメントが小さく、低速コーナーから高速コーナーまでストレスを感じることなく、狙いどおりのコーナリングを楽しめた。この点は、初代や2代目では味わうことのできなかった、3代目TTならではの魅力といえるだろう。
ところで、今回のドライブトレイン見直しは、ヨーロッパで導入された新しい排ガス規制“Euro 6d-TEMP”に対応するという意味合いが濃い。このため、同規制が実施されていない日本市場には、これまでと同じエンジンとギアボックスがそのまま搭載され、デザインのみが変更されるという。言い換えれば、現行のスタイリングがお好みの向きは、いまのうちにTTを購入したほうがいいともいえるのだ。ちなみにマイナーチェンジ版の日本導入は2019年初頭の見通しである。
大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。
(レスポンス 大谷達也)
イギリスとアイルランドの間に浮かぶマン島では1907年以来、5月下旬ないし6月上旬にモーターサイクルによる公道レースが行なわれてきた。公道レースにもかかわらず平均速度が極めて高い(現在のラップレコードは平均で212km/hを越える)ため、“世界でもっとも危険なモーターサイクルレース”とも呼ばれるこのイベントこそ、マン島TTレースである(TTはTourist Trophyの頭文字)。
現在のアウディを形作った4ブランドのひとつであるDKWは1938年にUKD250というモーターサイクルでTTレースに参戦、見事優勝を勝ち取った。また、戦後になってアウディ・グループに加わったNSUも1954年に250cc以下のクラスで1~4位を独占する大成功を収めた。以来、NSUは特別なスポーツモデルにTTの名を与えるようになり、1965年デビューのNSUプリンツ1000TTではこれが4輪車にも用いられるようになった。アウディTTはこうした伝統に根ざしたネーミングなのである。
今回は初代アウディTTがデビューして20年目の節目ということもあって、その生まれ故郷であるマン島で試乗会を行なうことになった。
マイナーチェンジ版の目玉はふたつ。ひとつはデザインが見直されたことで、もうひとつはドライブトレインが刷新された点にある。
デザインの見直しはフロントグリルがそれまでの水平バーから大胆なハニカム形状とされたのがいちばんの見どころで、そのほかにもチンスポイラー部のエアインテークに加飾が追加されたり、ヘッドライト内部の構成が改められたりした。いっぽうでインテリアに大きな変更点は見当たらなかった。
いっぽうのドライブトレインは、『TTS』を一例に挙げると最高出力が286psから306psへ、最大トルクが380Nmから400Nmへと向上したほか、Sトロニックと呼ばれるデュアル・クラッチ式トランスミッションが従来の6段から7段へと改められたのがポイントである。
マン島で試乗できたのは新しいTTSのみ。正直いってパフォーマンスの向上分は明確に感じられなかったものの、新しい7段Sトロニックはどんなコーナーでもぴたりとギア比があって小気味よかった。
それよりも痛快だったのがTTSのハンドリングで、フロント・エンジンであることが信じられないくらい車体のヨーモーメントが小さく、低速コーナーから高速コーナーまでストレスを感じることなく、狙いどおりのコーナリングを楽しめた。この点は、初代や2代目では味わうことのできなかった、3代目TTならではの魅力といえるだろう。
ところで、今回のドライブトレイン見直しは、ヨーロッパで導入された新しい排ガス規制“Euro 6d-TEMP”に対応するという意味合いが濃い。このため、同規制が実施されていない日本市場には、これまでと同じエンジンとギアボックスがそのまま搭載され、デザインのみが変更されるという。言い換えれば、現行のスタイリングがお好みの向きは、いまのうちにTTを購入したほうがいいともいえるのだ。ちなみにマイナーチェンジ版の日本導入は2019年初頭の見通しである。
大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。
(レスポンス 大谷達也)
連載コラム
最新ニュース
-
-
スズキ『キャリイ』シリーズ 仕様変更
2024.04.19
-
-
-
車中泊を快適に! ランドクルーザー250 用ベッドキット登場
2024.04.19
-
-
-
トヨタ カムリ 新型、全車ハイブリッドに
2024.04.19
-
-
-
シトロエンの新デザイン採用、『C3エアクロス』新型を欧州発表
2024.04.19
-
-
-
トヨタ ランドクルーザー250 をモデリスタがカスタム…都会派もアウトドア派も
2024.04.19
-
-
-
マツダ、新型3列シートSUV『CX-80』をついに世界初公開 日本導入時期は
2024.04.19
-
-
-
アウディ Q8、e-tron史上最長の一充電航続距離619kmを実現…オプションパッケージ発売
2024.04.18
-
最新ニュース
MORIZO on the Road