【ランボルギーニ アヴェンタドールSVJ 試乗】フェラーリとは違う、メカニカルなV12の重厚感を存分に愉しむ…西川淳

ランボルギーニ アヴェンタドールSVJ
「J」の名を冠して登場したランボルギーニ最新モデル『アヴェンタドールSVJ』に、西川淳氏が試乗。ポルトガルのエストリルサーキットを舞台に、“猛牛”V12エンジンが吠えた。限られたオーナーだけが体験できる未知の世界の片鱗をご紹介。

◆アヴェンタドール初搭載の「ALA」

前期型の作法にならえば、「LP770-4 SVJ」と呼ぶことになっていたであろうアヴェンタドールの最終進化系モデルをついに試すチャンスがやってきた。

エンジンパワーアップと「ALA」(エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)の装備、およびそれに伴うエクステリア変更が注目のポイント。これまでもL539型6.5リットルV12自然吸気エンジンには、700cv(デビュー時)、720cv(アニヴェルサリオ)、750cv(SV)、740cv(S)といういくつかのパワーバリエーションが用意されてきた。いずれもバルブタイミングや吸排気システムの小変更によるファインチューニングで、実をいうと基本となるエンジン性能曲線はほとんど変わっていなかった。

SVJ用では出力もトルクも従来とはまるで違う性能曲線を描く。出力もトルクもほぼ全域に渡って、嵩ましされているのだ。ちなみに、770cvの達成とさらなる軽量化(カーボンエンジンフードなど)によって、パワーウェイトレシオは1.98kg/ps。

アヴェンタドールシリーズに初搭載となったALAは、ランボルギーニが特許をもつアクティヴ・エアロダイナミクス・システムで、『ウラカン・ペルフォルマンテ』において初めて採用されたもの。車速や加減速など動的状態に応じて車体の前後に装備した電動フラップを動かすことで空力的な負荷を積極的に変化させ、ダウンフォースを高めたり、ドラッグを低くしたりする技術である。

進化したシステムを搭載したという意味で、SVJでは「ALA2.0」と呼ぶ。そして、何よりも肝心なことがALAの活用を前提とした統合的車両制御システムが新たに開発されたこと。LDVA2.0と呼ばれる“頭脳”がそれで、パワートレーンやスタビリティコントロール、磁性流体サスペンション、油圧可変ギアレシオステアリング、リアホイールステア、制動システムなどを統合制御する。

インテリアにはSVからのさほどの変更点はない。TFT液晶メーターのデザインが変わって、ALAの作動状況が分かるようになっている。

◆肉体と車体が融合したかのような一体感


見慣れたエンジンスタートボタンを押すと、V12ユニットが以前よりもはるかに轟然と目を覚ました。軽くブリッピングしてみれば、荒々しくも精緻な回転フィールが右足裏に伝わってきて、早くもゾクゾクしてきた。一台ずつプロの操る先導車(同じ色のSVJ)が付くという贅沢なテストが始まった。

コースインして右足に力をこめた瞬間、車体全体に力が漲ったように感じた。そのまま蹴飛ばされるように加速する。圧倒的に軽い。それでいて、浮くようなスリルはない。いきなり肉体と車体が融合してしまったかのような一体感が生まれた。

あっという間にペースが上がっていく。モードを「ストラダーレ」から「スポーツ」にスイッチ。それはSVをサーキットでテストした際に、コルサよりも運転しやすく、楽しかったという記憶のあるモードだったからだ。

ところが。SVJの場合、よりリアに駆動を振り分けるスポーツモードでは、丁寧に扱わないとすぐにアンダー&オーバーが出て、なんだか危なっかしい。右足の動きにパワートレーンが潔く反応し、なおかつ低回転域からトルクがしっかりと出ていることに加えて、リアへの駆動配分が以前よりも3%ほど増して前輪の自由度が高まっているため、スポーツモードではSVに比べるとかなり神経を使うクルマになったようにさえ感じる。もっとも、サーキットがつい最近、舗装し直されたばかりで、滑り易いというのも大きな要因だった。

しばらくスポーツモードで走っていたが、だんだんと気苦労のほうが楽しさより優ってきた。SVでは、まるで楽しめなかったコルサモードに、仕方なく変えてみる。ニュートラルステア志向で、さほど面白くはない代わりに、結果的には速く走れてしまうというモードだ、と思っていた、SVでは……。

面白いことに、SVJのコルサモードはSやSVより断然に楽しめた。振り回せる感じのSV+スポーツモードとはまったく別種の楽しさだ。ALAの恩恵=“神の手”を存分に感じつつ、ありあまるパワー&トルクを自在に使うことができる。結果的に、アヴェンタドールをまるでウラカンのように操ることができているような感覚になった。自在に動いているという感じさえあれば、オンザレール感に終始しても楽しい。速度がぐんぐん上がっていく=タイムが速くなっていくのが手に取るように分かるから、これはこれでめちゃくちゃ愉快な経験だ。

◆最後の自然吸気V12を楽しむ


パラボリカ・アイルトンセナを立ち上がってホームストレートを駆けぬける速度も、260、270、ついには280km/h近くへと、周回を重ねるごとに数字が伸びていく。8000回転以上回したときのパワーのつき具合といい、中速域からもりもり湧き出るトルクフィールといい、すべてを自分の右足裏に“確保”していると思えば、これほどの歓びはない。

豪快なサウンドに、右足を飲み込んでしまうかのような回転フィールは、高回転型大排気量12気筒自然吸気エンジンでしか味わえない。フェラーリの12気筒とはまた違う、メカニカルな重厚感を背負って走る経験こそ、ランボルギーニのフラッグシップにふさわしいもの。

おそらく、純粋に自然吸気の12気筒を積むランボルギーニは、このSVJシリーズが最後となるだろう。12気筒自然吸気を貫く、とは宣言しているものの、次世代モデルからはモーターアシストを活用することでCO2排出量を抑えていかなければならない。果たして、重量増を抑えたハイブリッドシステムとはどんなものか。そこもまた興味は尽きないが、それも近未来の話。何度も言うようだが、今はまだ、このピュアな12気筒マシンを存分に楽しんでおきたいものだ。

世界で千人にも満たないオーナーだけが経験できる、シアワセだとはいうものの……。

西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。

(レスポンス 西川淳)

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