【マツダ3 新型試乗】セダンは見るほどに味わい甲斐がある「ジワるデザイン」…島崎七生人

マツダ3セダン新型
◆セダンらしいフォーマリティを獲得したマツダ3新型

ファストバック同様、セダンも写真より実車を目の当たりにしたほうが“目指した方向”が理解しやすい。とくにサイドビューは最終型『アクセラ』のセダンに較べずっと伸びやかで、上級の『マツダ6』に迫るセダンらしいフォーマリティも身に付けた。

全長はファストバックが新旧で同寸法なのに対し、セダンは80mm長い(新型のファストバックに対しては200mm長い)。まさにこの寸法をデザインと実用性の両方で使いきったという風。とくにリヤエンドは、先代がキュッと絞って2.5ボックス的に見せていたが、『マツダ3』のセダンは、トランクリッド上面を後方へ流しつつ、全体をスッと止めたことで、新たな小気味よいバランスに仕上げている。

フロントフェンダーも断面が丸いファストバックに対し、キャラクターラインで折れ線を設け、このラインに視線が後方に誘導されて伸びやかさが実感できるとともにキリッとした表情を作り出している。今風に言うと「ジワるデザイン」といったところか、見るほどに味わい甲斐がありそうなスタイルであるところが、インパクトで心を掴むファストバックとの“作風”の違いだ。

◆引き算がテーマのはずだが…

室内空間は後席でいうと、サイドウインドゥの面積がファストバックより広い分、感覚的な広さが感じられる。着座姿勢、シートの出来も、安心して人を座らせられるもので、ドア開口部、頭上のクリアランスも問題なく、足元スペースの余裕も大きい。

前席はファストバックと同等で、やや座面を高めて座るレポーターは、エンジンフードが広くしっかりと見渡せる(視界に入る)点にも好感をもった。ファストバックのレポートと振り分けて重箱の隅をつつかせていただくと、インパネのアッパーパッドが大胆に覆い被さるデザインは、果たしてオーナーになれば見慣れるかどうか?

引き算がテーマのはずだが、今のところここだけ“足し算”になっているように思えてならないのだが……。

今回の試乗車は同系色の内装だったが、2トーンのコントラストがつく内装色だと、カタチと色のダブルで気になりはしないか?

アッパーパッドの助手席側に降りてくるその着地点が中途半端なのが気になる要因だろうか?

ついでに……8.8インチモニターの背面形状をクルマの外から眺めると、ハウジング形状がやや箱っぽく朴訥に見える。たとえばAppleのiMacの背面のようにスリムでスマートに見せるデザインであれば、さらに洗練された印象になると思う(以上はいずれも愛を込めて記した次第)。

実用面では、トランクスペースは文句なく、理屈抜きで十分なもので、昔ながらの欧州セダンを知っているようなベテランのドライバーからも一切、コンプレインは出ないはずだ。

◆印象に残った性能と走りの“仕上がり”

今回割り当てられた試乗車は「XD PROACTIVE Touring Selection」の4WD。SKYACTIVE-Dこと1.8リットルのコモンレール式ディーゼルターボ(116ps/27.5kgf・m)を搭載、車重は1460kg(前/後=910/550kg)というクルマだった。

今回は限られた試乗時間につき燃費の確認は別の機会に譲ることとなったが、印象に残ったのは、手頃なボディサイズのセダンらしい性能、走りに仕上げられているということ。

5500rpmまで許容するディーゼルユニットはジワリとおもむろにアクセルを踏み込んでの走りかたである限り、意のままにクルマを加速させてくれ、走行中の車内への音・振動の伝わりかたも非常に小さい。ステアリングフィールもスムースで操舵力も適切で、切り増したり戻したりする必要はまったくない。

また例のGVCプラスは『CX-5』のようなSUVだけでなく、セダンのこの『マツダ3』でも実に有効で、コーナリングを自分で気持ちよくラインを描きながら安定して抜けてくれるといった場面で実感できる。レーンチェンジの独特の安定感も期待できるはずで、別の試乗に機会にぜひ確認しておきたいと思う。

それとセダンらしくフラットで心地いい乗り心地のよさも注目だ。

試乗車は18インチタイヤで、あるいはサイズダウン(とタイヤ銘柄の変更)により目地や段差からの入力の伝わり方がより小さくなるかどうか……とも思ったが、乗り味自体は非常に安定しきっており、走らせていて目線が揺さぶられないところに非常に好感をもった。カタログの主要装備表を見ると、メーカーオプションで16インチが設定されている。

■5つ星評価

パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

(レスポンス 島崎七生人)

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