【ルノー トゥインゴ 新型試乗】パリで磨かなくてもイイものはイイ…中村孝仁

ルノー トゥインゴ 新型
パリで磨かれた新しい『トゥインゴ』だそうである。実はプレスリリース冒頭の一節なのだが、どうもフランスのコンパクトカーを語る時、この「パリ」がキーワードになるらしい。

確かに僕自身も以前はよくこのパリというキーワードを使った。実際この街に行ってみると、実にお洒落な印象でつい「パリのエスプリ」なんて使ってみたくなる。しかし、どう考えてもそろそろ使い古した感が満載だ。

敢えて否定はしないけれど、ひねくれ者だから、パリで磨いたって? 別にパリで磨かなくてもイイものはイイんだよ!なんて啖呵を切ってみたくなる。正直良いものはどこで磨いたって良いに決まっているし、パリだからって良くなりそうなのはセンスだけ。クルマの機能には影響しない。


◆大きく変わったわけではないが

そんな思いで新しいトゥインゴに乗った。最初に現行モデルがやってきたのは2016年だから、まだ3年ちょっと。今はモデルライフスパンが長いから、昔と違って少しぐらい化粧直ししてもイイかな?というレベルの時間経過である。とはいえ、クルマを受け取って、はて? どこが変わったのだろう? と思いながら家に帰り昔の写真を道出してみた。


外観に関してはまあほとんど変わっていない。リアに付くエアインテークだが初期のトゥインゴにはそれが無く、実は兄弟車である『スマート』にはそれがあった。だから、やっぱりルノーの方がお洒落で上品だ…なんて思っていたら、ルノーよお前もか! となるわけだが、どうもメカニカル的(冷却効果らしい)にこの影響は大きいようだから、こと機械的な話に関してはメルセデス(スマートだけど)の方が上か…なんて思ったりもした。(※編集部注:従来モデルにも「GT」のみエアインテークあり)

プレスリリースにはCシェイプのLEDランプやウィンカー及び前後バンパー、新デザインホイール等々、変更点は多いのだが、おお! 変わったという点は皆無。一方でインテリアを見てみると、旧型車の写真ではダッシュ中央に横に向けたiPhoneが写っていたが、今回のモデルはそこに立派なディスプレイが付いていた。おお、これは変わったと唯一思わせた部分がここだ。


このディスプレイ、7インチのタッチスクリーンでスマホを繋げばそこに直接アクセスできるようになっている。大幅に進化したと感じたのはこの部分だけ。コンソールの先端に2つのUSBソケットが付いていて、そこからスマホを繋ぐとアプリを介してこのディスプレイに表示される。しかもコンソール先端はポケットになっていて、そこにスマホを置いておけば後はディスプレイであれこれ操作できる。

いずれにせよ、極端に大きな変更はないわけだがディスプレイが付いたことは大きな進化である。


◆1020kgしかないから、速い

走りは他に類を見ないこのクラスのRRである。だからやはりそれなりの癖がある。注意深く走ってみるとやはり「押されている感」が強い。それと何故か知らないがワンダリングが大きめ。これは今まで乗ったどのトゥインゴでも感じなかったものである。

基本0.9リットルターボと6速EDC(エフィシエント・デュアル・クラッチ)の組み合わせには変化はなく、足回りに関しても変わっていないと聞いているが、以前にぴょこぴょこと上下にせわしなく動く印象は影を潜め、代わって今度は横方向のナーバスさが出た印象である。と言っても相対的にそれらは大きな差異ではなく、あくまでも注意深く走ってみた時の印象である。

それにしてもクルマ自体は速い。絶対値が小さなクルマだけど車重も1020kgしかないから、十分な加速力とその持続性があって、一人乗りなら楽勝で高速の追い越し車線も走ることができる。


◆こうしたクルマたちに街を彩って欲しい

写真を撮るためにガラスハッチを開けようとして、はて困った。ガラスハッチのオープナーが見つからない。以前あったはずの場所に手を入れても空振りするばかり。で、のぞき込んでみてもその痕跡はあるものの、スイッチが無いのである。散々探した挙句偶然にそれがリアワイパーの下側にあることを発見した。この焦りで何とリアの写真を撮り忘れる失態。まあ位置としてはスマートなところにある。

以前リアにあるエンジンルームへのアクセスもドライバーなど使わずに上側のパネルを外せたのに、今回はドライバーを使わないとアクセスできず、この写真も無しである。

総評としてこのクルマ、結構なお洒落感(パリのエスプリとは言わない)とこのサイズにしては結構なスピード感、それに元々ある敏捷性を兼ね備え、なおかつ都市では欠かすことのできない機動性も持ち合わせるモデルだ。

例えばリアサイドウィンドーは横方向にほんの少しだけ開くベントであることや、最近の新型車が兼ね備える安全デバイスの不搭載など不便なところもあるけれど、本当はこうしたクルマたちに街を彩って欲しい。最近は羊羹のごとき長細い箱しか走っていない。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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