アルピーヌ A110S 新型試乗 筑波2ラップでもわかる「楽しいクルマの原点」がここにある…諸星陽一

アルピーヌ A110S
◆筑波サーキットのコース2000を最新アルピーヌで駆ける

日本でのアルピーヌブランドが宣言されたのが2017年。その後、2018年に往年の名車『A110』と同名のモデルを発表、「ピュア」と「リネージ」の2グレードを発売した。

初代アルピーヌA110はアルミのバックボーンフレームにFRPボディを被せるという手法。エンジンはリヤセクションに搭載されリヤタイヤを駆動するRR方式を採用した。現代のアルピーヌA110もボディアーキテクチャはアルミ、エンジンはRRではなくミッドシップに搭載し、リヤタイヤを駆動する。搭載エンジンは1.8リットルの4気筒ターボでミッションは2ペダルの7速ATが組み合わされる。

今回試乗したのは2019年の東京モーターショーでお披露目された『A110S』というモデル。試乗会の舞台は筑波サーキットのコース2000。事前にペースカー付きでスタンダードのA110で3ラップ、A110Sを3ラップ走行した後、A110Sをフリーで2ラップというかなりショートなプログラムであった。


◆トルクの維持に重点を置いたチューニング

A110Sに搭載されるエンジンはスタンダードと同様の1.8リットルの4気筒ターボ。スタンダードに比べてブーストを0.4bar(約0.4kg/cm2)アップすることでピークトルク発生回転数を高回転まで維持可能とする手法で、最高出力を292ps/6420rpmにまでアップ。筑波サーキットのコース2000・バックストレートではDレンジ走行で6800回転まで回り切ってシフトアップが行われた。

タイムアタックならブレーキちょん掛けで最終コーナーに飛び込むのだろうけど、試乗会1日目の第2グループ。日本に入ってきている台数もまだ限られる899万円のアルピーヌA110Sを台無しにしたら、業界中の笑いもの…では済まされない。ここは慎重に減速をおこなっての進入。グリップを確かめつつ右100R-90Rのコーナーを攻める。

A110Sはミッドシップで前:480kg/後:630kgの重量配分だが、アクセルを踏んでいってもオーバーステア気味になることはなく、きれいにコース上をトレースしてくれる。1コーナーに向かってのフルブレーキングも姿勢を崩さずにきれいに減速する。


◆タイトなコーナーこそが『A110S』の真骨頂

コース2000の1コーナーは55R-35Rの複合コーナー、第1ヘアピンは27R、第2ヘアピンは25Rとタイトだ。このタイトなコーナーこそがA110Sの楽しさがもっとも出る部分。ドリフト状態になるかならないかを見極めながら、そこの部分をコントロールしながら攻める最終コーナーのような肝試し的要素ではなく、小さなボディを自分のコントロール下におく、それでいてちょっとした冒険を味わえるようなコースが似合うモデルといえる。

とはいえ、約300馬力のミッドシップモデルがこれほどまでに乗りやすく、そして楽しいものになるとは、自動車業界の技術進歩はじつに素晴らしいものだ。

なお、★の評価はミッドシップのスポーツモデルであることが前提。オススメ度は899万円という価格を考慮してのもの。経済的に余裕があり、価格を気にしない方が対象なら、★はいくつあっても足りないかもしれない。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

(レスポンス 諸星陽一)

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