マツダ CX-5 新型試乗 ライバルは輸入車、スポーツSUVの道を突っ走って欲しい…九島辰也

マツダ CX-5
◆ライバルは国産ではなく輸入車

マツダ『CX-5』は不思議なクルマだと思う。何度も試乗しているが、ライバルとして想定されるのは国産SUVよりも輸入車が頭に浮かぶ。その理由はデザインが一番だろう。クールなフロントマスクと美しいボディフォルムは既存の国産モデルの概念を逸脱する。要するにかっこいいのだ。

走りもそうだ。マツダがこだわるハンドリングはヨーロピアンテイストが強い。ステアリングフィールもしっかりあって、それに追従する足も軽快さを持つ。ボディ剛性を高めたことでサスペンションの設定が自由になったのだろう。やたら減衰圧の高いダンパーを用いたり、太いスタビライザーを入れたりしなくても安定感は高い。


◆キャラ分けはBMWに習うべし

ただ、ここまで完成度を高めるとより運転していて要求度が高まる。それはよりパキッとしたハンドリングとボディの動きだ。

具体的にはステアリングの切り始めはいいのだが、途中からクイックさが薄くなりマイルドな動きとなる。操作類に対し一枚布を挟んだような感覚だ。これは『CX-8』では見事に成功していて、クルマとのキャラクターにマッチしている。乗り心地のいい三列シートのSUVとしてそこそこのスポーティは逆に嬉しい。

だが、CX-5のようなキャラクターではそれは物足りない。CX-8が存在するのであればCX-5はどこまでもスポーティに味付けするべきであろう。その線引きができているのがBMWである。『X5』はとことんスポーティに、『X7』はロングドライブの重要を前提にした快適性に振っている。きっとトーイングを含めたセッティングだろう。開発責任者は同一人物なので、その辺を直接インタビューした時も明白にそれを口にしていた。「X5は限界までスポーティにしている」と。

CX-5を走らせるとそのポテンシャルの高さを予感させるだけに、BMW X5のようによりスポーティさを追求してもらいたい。マーケットをより広く捉えたいのはわかるが、狭めるほど広がるということもある。よりキャラクターを明確にし、それを良しとする層をごそっと持っていってはどうだろう。BMW X5とX7のようなキャラ分けができれば、この価格帯でライバルはいなくなる。


◆数少ない国産スポーツSUVとして…

そんなCX-5は昨年12月に商品改良を行っている。「オフロードトラクションアシスト」の装備と、「タフスポーツスタイル」パッケージの設定だ。想像するに、トヨタ『RAV4』の成功がいまSUVをオフローダー方向に向けていると思われる。アーバンSUV全盛の中での逆振りの成功例だ。

が、個人的にはCX-5はそれよりもスポーツSUVの道を突っ走って欲しい。このクルマはそれができる数少ない国産SUVのような気がしてならない。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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