トヨタ ヤリス 新型試乗 「ガソリン 1.5G」の走り、200万円切るおススメ仕様は…丸山誠

トヨタ ヤリス 1.5G
◆200万円切るおススメ仕様は

試乗したのは、3気筒1.5リットルエンジンを搭載の「G」グレード。新型『ヤリス』の中心グレードとなるのは同「X」だが、その1グレード上のモデルで車両価格は175万6000円だ。

ガソリンのGグレードの試乗車スペック表を見て驚いた。車両価格は約176万だがオプションがかなり付いていて、そのオプションだけで約70万円。このうち高額なオプションはブラインドスポットモニターが約10万円、Tコネクトナビが11万円で車両総額は約245万円と、このクラスにしては意外と高額になっている。

価格を抑えたおススメ仕様は、GにLEDヘッドライト(8万2500円)とTコネクトナビキット(11万円)だけを付ける仕様。これならオプションは約20万円。総額約196万円となり、コンパクトカーらしく、なんとか200万円を切ることができる。


◆ステアリングの軽さと、スポーティな挙動

スタート時に気づいたのはステアリングの操舵感で、結構軽い。コンパクトカーは女性ユーザーもかなりのボリュームを占めるため、パワステのアシストを効かせたセッティングが多いが、これも同様の傾向を示している。駐車場から出る低速では、とくにあっけなく感じるほど軽くステアリングが回る。さすがに高速域になると手応えは増すが、操舵力自体は軽い部類に入る。

少し走るとボディ剛性の高さを実感。コンパクトカー向けに新たに開発された、TNGAプラットフォームである「GA-B」を初採用した効果が操舵感と乗り心地に現れている。路面のジョイントなどの凹凸を通過してもボディはしっかりしていて、サスペンションもよく動いていて、ステアリングには振動が伝わるようなことがない。路面からのショックをうまく吸収してすっきりしたライドフィールに仕上げられている。

ただし、サスペンション自体はやや硬めの設定になっていて、フロントサスペンションに大きな入力があると突き上げ感が伝わってくることもある。リヤは突き上げ感がないのにフロントは縮み側のストロークにフリクションがあるように感じられ、動きがやや渋い感じだ。

ボディとフロントサスの剛性感の高さを実感したのが高速域でのコーナリング。ヤリスはフロントがほとんどロールしない感じでタイヤもよく路面に追従し、ヨーロッパ車のようなしっかり感がある。ちょっとしたサスチューンがされているコンパクトカーのような挙動でスポーティだ。このスポーティなハンドリングこそが新型の最大の特徴といえる。

少し残念なのは、挙動はスポーティだがステアリングが軽めというアンバランスさ。操舵感がもう少ししっとりすれば、走りの質感がもっとアップするはずだ。それと全般的に乗り心地が硬めなのも気になる。走りに振った味付けでスポーティハッチというのが新型の姿というのは理解できるが、一般ユーザーを考えると市街地を含めた低中速域でもう少しソフトなサスセッティングでもよかったのではないだろうか。


◆3気筒を感じさせないスムーズさだが

新開発の直列3気筒M15A-FKSは高回転域の音に雑味感があってあまり気持ちのいい音ではない。この傾向はハイブリッドも同じだ。音質がノイズと感じてしまう耳ざわり感で、積極的に回したくならない部類のエンジン。回転自体は3気筒であることを感じさせないしスムーズだが、エンジンからの遮音もあまりよくないため雑味感が強調されている。

これはライバル関係になるホンダの『フィット』とは対照的だ。フィットはハイブリッドを含めて4気筒エンジンでガソリン、ハイブリッドともに高回転域でホンダらしい快音を発する。


CVTのエコモード制御は積極的に低回転域を使う制御で燃費に効果がありそうだ。ギヤ付きCVTは加速時のラバーバンドフィールが小さく、リニアな加速感だ。

スポーティなハンドリングのコンパクトハッチを求めていたユーザーにヤリスはピッタリのクルマだが、乗り心地や後席の広さを重視するユーザーには最適とはいえないかもしれない。


■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。

(レスポンス 丸山 誠)

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