【試乗記】ホンダ・クラリティPHEV(FF/CVT)

【試乗記】ホンダ・クラリティPHEV(FF/CVT)
ホンダ・クラリティPHEV(FF/CVT)

これならイケる

2030年には世界で販売する四輪車の3分の2を電動化するというホンダ。そのプロジェクトの先駆けとして日本の道を走りだすプラグインハイブリッド車「クラリティPHEV」に、クローズドコースで試乗した。

早くから電動化に取り組んできたホンダ

「電動車のグローバルな普及」を見据えて開発された「クラリティ」シリーズ。今回試乗したPHEVのほか、EV(北米市場で販売)とFCVがラインナップされている。
「電動車のグローバルな普及」を見据えて開発された「クラリティ」シリーズ。今回試乗したPHEVのほか、EV(北米市場で販売)とFCVがラインナップされている。
インテリアでは、内装表面積の約70%に環境負荷低減素材が採用されている。
インテリアでは、内装表面積の約70%に環境負荷低減素材が採用されている。
カラー表示のメーターパネル。中央にマルチインフォメーションディスプレイが、左端にはバッテリー残量計が、右端には燃料計が並ぶ。
カラー表示のメーターパネル。中央にマルチインフォメーションディスプレイが、左端にはバッテリー残量計が、右端には燃料計が並ぶ。
前席は、高めのシートバックとスリムなショルダーがデザイン上の特徴となっている。
前席は、高めのシートバックとスリムなショルダーがデザイン上の特徴となっている。

ホンダは電動化に早くから取り組んできた自動車メーカーのひとつだ。電気自動車(EV)を初めて発表したのは1997年。米国カリフォルニア大気資源委員会(CARB)のゼロエミッション車普及プログラムに対応したもので、トヨタや日産、ゼネラルモーターズ(GM)なども開発に乗り出したが、専用設計の車両を送り出したのはホンダとGMだけだったと記憶している。

「EVプラス」という名前のその車両は当時のコンパクトカー「ロゴ」の車高を上げて床下にニッケル水素バッテリーを積んだような成り立ちを持っていた。ホンダはこれを日米でリース販売した。

EVプラスは日本仕様の場合、満充電での航続距離が210km(当時の10・15モード)、最高速度が130km/hと十分な性能を持っていたが、登録諸費用やメンテナンス料などを含めた月々のリース額は26万5000円で、36カ月リースという契約だったから支払金額は954万円にも達した。

他のEVも同じような状況であり、いくらカリフォルニア州が推進してもユーザーがなかなかついていけなかっただろう。さらに一連の経緯を再現したドキュメンタリー映画『誰が電気自動車を殺したか?』によれば、石油業界などの圧力によって、ゼロエミッションプログラムが骨抜きにされたことが紹介されている。

しかも同じ1997年にはトヨタが初代「プリウス」を発表。ホンダも2年後の「インサイト」を皮切りにハイブリッド車(HV)に力を注ぐことになる。さらにホンダは同じ年に「FCX-V1」「FCX-V2」と名付けた2種類の燃料電池自動車(FCV)を発表。2002年には日米でリース販売した。つまり現実的な環境対応車としてはHV、ゼロエミッションビークルの本命としてはFCVを掲げていくことになった。

「電動車のグローバルな普及」を見据えて開発された「クラリティ」シリーズ。今回試乗したPHEVのほか、EV(北米市場で販売)とFCVがラインナップされている。
「電動車のグローバルな普及」を見据えて開発された「クラリティ」シリーズ。今回試乗したPHEVのほか、EV(北米市場で販売)とFCVがラインナップされている。
インテリアでは、内装表面積の約70%に環境負荷低減素材が採用されている。
インテリアでは、内装表面積の約70%に環境負荷低減素材が採用されている。
カラー表示のメーターパネル。中央にマルチインフォメーションディスプレイが、左端にはバッテリー残量計が、右端には燃料計が並ぶ。
カラー表示のメーターパネル。中央にマルチインフォメーションディスプレイが、左端にはバッテリー残量計が、右端には燃料計が並ぶ。
前席は、高めのシートバックとスリムなショルダーがデザイン上の特徴となっている。
前席は、高めのシートバックとスリムなショルダーがデザイン上の特徴となっている。

ホンダの先見性は健在

コックピット周辺部の様子。テスト車には、8インチサイズのホンダ純正ナビゲーションシステムが備わっていた。
コックピット周辺部の様子。テスト車には、8インチサイズのホンダ純正ナビゲーションシステムが備わっていた。
駆動用バッテリーは、後席(写真)および前席の下に配置される。さらに、ハーネス類や12V DC-DCコンバーターをトンネル内に凝縮することで後席乗員の足元スペースが確保されている。
駆動用バッテリーは、後席(写真)および前席の下に配置される。さらに、ハーネス類や12V DC-DCコンバーターをトンネル内に凝縮することで後席乗員の足元スペースが確保されている。
左フロントフェンダーには、普通充電ポートが備わる。急速充電の給電口は、右リアフェンダーにレイアウトされる。
左フロントフェンダーには、普通充電ポートが備わる。急速充電の給電口は、右リアフェンダーにレイアウトされる。
2018年5月現在、国内には約6200基の急速充電器と、約1万4600基の普通充電器が設置されている(ホンダ調べ)。
2018年5月現在、国内には約6200基の急速充電器と、約1万4600基の普通充電器が設置されている(ホンダ調べ)。

注目したいのはこの時登場したFCXが、EVプラスと基本的に共通のボディーに燃料電池ユニットを搭載していたことだ。EVでは大容量バッテリー、FCVでは水素タンクや燃料電池スタックを格納する必要があることから、床下にこれらを搭載しようという発想になったのだろう。

当時はEVもFCVもまだエンジン車の改造が主力となっていた時代で、次世代車のための最適設計を行って共用化するという発想は斬新だった。

その後ホンダのFCVは、2008年に発表された流麗な4ドアセダンの「FCXクラリティ」を経て、2016年に発売した「クラリティ フューエルセル」に至る。注目は同じボディーでプラグインハイブリッド車(PHEV)とバッテリーEVも出したことだ。「クラリティ エレクトリック」と名付けられた後者は米国でのリースにとどまったが、前者はわが国でも販売することになった。

それが今回の主役となるわけだが、前世紀末にトライしたEVとFCVの設計共用化が、そこにPHEVも加えて再来したという事実を見ると、ホンダの先見性は健在ではないかと思いたくなる。

この間、自動車業界ではフォルクスワーゲン(VW)のディーゼルエンジン排出ガス不正問題が明るみに出て、VWをはじめ欧州の多くの自動車メーカーが電動化へ急速に舵を切った。同時に欧米中など多くの地域でPHEVを次世代環境車の本命と位置付け、HVを環境対応車と認めないという方向性で一致した。

『誰が電気自動車を殺したか?』とは異なる形で、再び環境車の進化に政治が関わってきたわけだ。日本車の先行は許せないという思いがあったのかもしれない。そんな中でホンダがクラリティにPHEVをいち早く設定したのは、先見の明があると思えた。

コックピット周辺部の様子。テスト車には、8インチサイズのホンダ純正ナビゲーションシステムが備わっていた。
コックピット周辺部の様子。テスト車には、8インチサイズのホンダ純正ナビゲーションシステムが備わっていた。
駆動用バッテリーは、後席(写真)および前席の下に配置される。さらに、ハーネス類や12V DC-DCコンバーターをトンネル内に凝縮することで後席乗員の足元スペースが確保されている。
駆動用バッテリーは、後席(写真)および前席の下に配置される。さらに、ハーネス類や12V DC-DCコンバーターをトンネル内に凝縮することで後席乗員の足元スペースが確保されている。
左フロントフェンダーには、普通充電ポートが備わる。急速充電の給電口は、右リアフェンダーにレイアウトされる。
左フロントフェンダーには、普通充電ポートが備わる。急速充電の給電口は、右リアフェンダーにレイアウトされる。
2018年5月現在、国内には約6200基の急速充電器と、約1万4600基の普通充電器が設置されている(ホンダ調べ)。
2018年5月現在、国内には約6200基の急速充電器と、約1万4600基の普通充電器が設置されている(ホンダ調べ)。

電動領域を増やしてダウンサイジング

ボンネット、ドア、フロントフェンダーなどにアルミ材を、フロントバルクヘッドに樹脂材を使用するなどして軽量化が図られた「クラリティPHEV」。車重は1850kg。
ボンネット、ドア、フロントフェンダーなどにアルミ材を、フロントバルクヘッドに樹脂材を使用するなどして軽量化が図られた「クラリティPHEV」。車重は1850kg。
フロントボンネット下に搭載される、自然吸気の1.5リッター直4エンジン。モーターと合わせて、システム総出力215psを発生する。
フロントボンネット下に搭載される、自然吸気の1.5リッター直4エンジン。モーターと合わせて、システム総出力215psを発生する。
センターコンソールには、スイッチ式のシフトセレクターが並ぶ。その両サイドには、ブラウンウッド調パネルがあしらわれる。
センターコンソールには、スイッチ式のシフトセレクターが並ぶ。その両サイドには、ブラウンウッド調パネルがあしらわれる。
荷室の容量は5人乗車時で512リッター。9.5インチのゴルフバッグを4個収納できる。長尺物に対応するためのトランクスルー機構も備わる。
荷室の容量は5人乗車時で512リッター。9.5インチのゴルフバッグを4個収納できる。長尺物に対応するためのトランクスルー機構も備わる。

ホンダにとってわが国で販売するPHEVは、2013年の現行「アコード」以来だ。当時は3年間でわずか238台のリースにとどまり、同じ年に登場した「三菱アウトランダーPHEV」に大きく水をあけられた。

発表前にクローズドコースで行われた今回の試乗会では、“ホンダ初の売り切りPHEV”という言葉が聞かれた。売り切りという言葉を久しぶりに聞いたので、「どういう意味だっけ?」と思ってしまったが、要はリースではなく、本気で売ろうとしているということだ。

ホンダは2030年までに電動車の比率を3分の2にしたいとのこと。すでにHVで相応の比率は稼いでいるものと思われるが、将来的にはPHEVがボリュームリーダーになると予想しているという。ということはクラリティ以降もPHEVが複数登場するということなのだろう。

メカニズムを見ると、前輪を駆動する直列4気筒エンジンが、大柄なボディーにもかかわらず1.5リッターであることが目立つ。

搭載される機構「スポーツハイブリッドi-MMDプラグイン」という名前で分かるように、システムの考え方はアコードや「オデッセイ」「ステップワゴン」のHVに近い。発電用と走行用の2つのモーターを持ち、一般道ではエンジンは発電に専念する一方、高速域では駆動系と直結しガソリンで走る。

ただしモーター出力はアコードPHEVの3.3倍であり、エンジンを始動しなくても160km/h出すことができるという。システムでの最高出力は215psに達する。電動領域を増やすことでエンジンの負荷を減らした結果、ダウンサイジングが可能になったそうだ。

ボンネット、ドア、フロントフェンダーなどにアルミ材を、フロントバルクヘッドに樹脂材を使用するなどして軽量化が図られた「クラリティPHEV」。車重は1850kg。
ボンネット、ドア、フロントフェンダーなどにアルミ材を、フロントバルクヘッドに樹脂材を使用するなどして軽量化が図られた「クラリティPHEV」。車重は1850kg。
フロントボンネット下に搭載される、自然吸気の1.5リッター直4エンジン。モーターと合わせて、システム総出力215psを発生する。
フロントボンネット下に搭載される、自然吸気の1.5リッター直4エンジン。モーターと合わせて、システム総出力215psを発生する。
センターコンソールには、スイッチ式のシフトセレクターが並ぶ。その両サイドには、ブラウンウッド調パネルがあしらわれる。
センターコンソールには、スイッチ式のシフトセレクターが並ぶ。その両サイドには、ブラウンウッド調パネルがあしらわれる。
荷室の容量は5人乗車時で512リッター。9.5インチのゴルフバッグを4個収納できる。長尺物に対応するためのトランクスルー機構も備わる。
荷室の容量は5人乗車時で512リッター。9.5インチのゴルフバッグを4個収納できる。長尺物に対応するためのトランクスルー機構も備わる。

“走れる”クラリティに

FCVの「クラリティ フューエルセル」(写真左)と「クラリティPHEV」(同右)。外観上はフロントグリルやルーフ、ホイールのデザインなどが異なっている。
FCVの「クラリティ フューエルセル」(写真左)と「クラリティPHEV」(同右)。外観上はフロントグリルやルーフ、ホイールのデザインなどが異なっている。
アルミ製の本体に樹脂キャップ(グレーのパーツ)を装着した18インチアルミホイール。ブレーキの冷却や空力性能、軽量化などに配慮されている。
アルミ製の本体に樹脂キャップ(グレーのパーツ)を装着した18インチアルミホイール。ブレーキの冷却や空力性能、軽量化などに配慮されている。
「クラリティPHEV」は、モーターの動力のみを使うEVモードで最大114.6km(JC08モード)走行できる。
「クラリティPHEV」は、モーターの動力のみを使うEVモードで最大114.6km(JC08モード)走行できる。
ステアリングホイールの左側スポークにはインフォテインメントシステムのスイッチが、右側スポークには運転支援システムのスイッチが備わる。
ステアリングホイールの左側スポークにはインフォテインメントシステムのスイッチが、右側スポークには運転支援システムのスイッチが備わる。
「クラリティPHEV」には、アクセルペダルの踏み込み量をドライバーに感じさせることで、エンジン始動の回数を抑える「ペダルクリック機構」が備わる。
「クラリティPHEV」には、アクセルペダルの踏み込み量をドライバーに感じさせることで、エンジン始動の回数を抑える「ペダルクリック機構」が備わる。
リアタイヤカバーをはじめとする特徴的な“エアロフォルム”をまとう「クラリティPHEV」。ボディーカラーは、試乗車の「コバルトブルー・パール」を含む全6色がラインナップされる。
リアタイヤカバーをはじめとする特徴的な“エアロフォルム”をまとう「クラリティPHEV」。ボディーカラーは、試乗車の「コバルトブルー・パール」を含む全6色がラインナップされる。

FCVのクラリティでは、燃料電池スタックをはじめとする主要部品をノーズ内に収めていたが、PHEVではバッテリーや燃料タンクを床下に薄く敷き詰めた。電池容量は17.0kWhと「プリウスPHV」(8.8kWh)の倍近い。満充電での電動走行可能距離は、JC08モードでは114.6kmに達する。

スタイリングはFCVと同じかと思ったら、細部が異なっていた。フロントグリルはクロームメッキのモールが一直線になり。リアにもモールが入った。ルーフは黒ではなくなり、フロントフェンダーのエアアウトレットはなく、ホイールのデザインは別物だった。

それ以上に感じたのは、2年前は違和感さえ覚えたスタイリングが受け入れやすくなったことだ。その後国内では「シビック」、米国ではアコードやインサイトが、軒並み同じファストバックスタイルに衣替えしたことが大きい。これが今のホンダのセダンスタイルなのだと納得した。

筆者にとって初のエンジン付きクラリティは、予想以上に静かだった。耳を澄ましていないと始動したかどうか分からない。でも望むだけの加速は十分に得られる。モード数値で100km以上電動走行可能というデータに納得である。これなら普段使いはEVだけでまかなえるだろう。

ECONやスポーツなどのドライブモードも用意されていた。前者は基本電動で、アクセルペダルを踏んでいくとエンジンが始動するタイミングでクリックするような感触が返ってくる。スポーツはレスポンスが鋭くなるだけでなく、メーター照明が青から赤に変わり、パドルで操る4段階の回生ブレーキはマニュアルモードになる。これ以外にバッテリーキープやチャージのモードもある。

記憶の中にあるFCV仕様は、多くのメカニズムをノーズに収めた弊害で前が重く、重心が高い印象があった。それに比べるとPHEVははるかに自然にコーナーをクリアできる。前後重量配分は57:43でFCVと同じだというから、重心の低さが功を奏しているのだろう。

これに合わせてサスペンションも設定し直したようで、ストローク感のある乗り心地と接地感を味わうことができた。身のこなしはさほど鋭くはないけれど、全長4.9mのセダンとして不満はない。シートのサポート性能がもう少し欲しいと思ってしまうほど、“走れる”クラリティに変身していた。

(文=森口将之/写真=小林俊樹/編集=関 顕也)

FCVの「クラリティ フューエルセル」(写真左)と「クラリティPHEV」(同右)。外観上はフロントグリルやルーフ、ホイールのデザインなどが異なっている。
FCVの「クラリティ フューエルセル」(写真左)と「クラリティPHEV」(同右)。外観上はフロントグリルやルーフ、ホイールのデザインなどが異なっている。
アルミ製の本体に樹脂キャップ(グレーのパーツ)を装着した18インチアルミホイール。ブレーキの冷却や空力性能、軽量化などに配慮されている。
アルミ製の本体に樹脂キャップ(グレーのパーツ)を装着した18インチアルミホイール。ブレーキの冷却や空力性能、軽量化などに配慮されている。
「クラリティPHEV」は、モーターの動力のみを使うEVモードで最大114.6km(JC08モード)走行できる。
「クラリティPHEV」は、モーターの動力のみを使うEVモードで最大114.6km(JC08モード)走行できる。
ステアリングホイールの左側スポークにはインフォテインメントシステムのスイッチが、右側スポークには運転支援システムのスイッチが備わる。
ステアリングホイールの左側スポークにはインフォテインメントシステムのスイッチが、右側スポークには運転支援システムのスイッチが備わる。
「クラリティPHEV」には、アクセルペダルの踏み込み量をドライバーに感じさせることで、エンジン始動の回数を抑える「ペダルクリック機構」が備わる。
「クラリティPHEV」には、アクセルペダルの踏み込み量をドライバーに感じさせることで、エンジン始動の回数を抑える「ペダルクリック機構」が備わる。
リアタイヤカバーをはじめとする特徴的な“エアロフォルム”をまとう「クラリティPHEV」。ボディーカラーは、試乗車の「コバルトブルー・パール」を含む全6色がラインナップされる。
リアタイヤカバーをはじめとする特徴的な“エアロフォルム”をまとう「クラリティPHEV」。ボディーカラーは、試乗車の「コバルトブルー・パール」を含む全6色がラインナップされる。

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