【試乗記】ホンダN-VAN +STYLE FUN/N-VAN +STYLE COOL/N-VAN G

【試乗記】ホンダN-VAN +STYLE FUN/N-VAN +STYLE COOL/N-VAN G
ホンダN-VAN +STYLE FUN Honda SENSING(FF/CVT)/N-VAN +STYLE COOL Honda SENSING(FF/CVT)/N-VAN G Honda SENSING(FF/6MT)

私は箱になりたい

ホンダの新たな軽商用車「N-VAN」に試乗。先進の運転支援システムや助手席側ピラーレス構造、画期的なシートレイアウトといった、既存のライバルとは一線を画す魅力を備えてデビューした、“次世代の働くクルマ”の出来栄えをリポートする。

Nシリーズの新顔は商用車

「N-VAN」の開発コンセプトは「積む・運ぶ生活のために」。日本のプロフェッショナルを支える“軽バン新基準”を目指して開発が進められた。
「N-VAN」の開発コンセプトは「積む・運ぶ生活のために」。日本のプロフェッショナルを支える“軽バン新基準”を目指して開発が進められた。
ボディーサイズは全長×全幅が3395×1475mm。全高は「G」「L」および「+STYLE FUN」(写真)がハイルーフ仕様の1945mm、「+STYLE COOL」のみロールーフ仕様の1850mmとなっている。
ボディーサイズは全長×全幅が3395×1475mm。全高は「G」「L」および「+STYLE FUN」(写真)がハイルーフ仕様の1945mm、「+STYLE COOL」のみロールーフ仕様の1850mmとなっている。
助手席側をピラーレス構造としたことでもたらされた「ダブルビッグ大開口」。最大開口幅は1580mmとなる。
助手席側をピラーレス構造としたことでもたらされた「ダブルビッグ大開口」。最大開口幅は1580mmとなる。
後席と助手席をすべてダイブダウンさせると、荷室長2635mmのラゲッジスペースが出現。ビールケースであれば最大40個が搭載可能とうたわれている(容積が基準)。
後席と助手席をすべてダイブダウンさせると、荷室長2635mmのラゲッジスペースが出現。ビールケースであれば最大40個が搭載可能とうたわれている(容積が基準)。
ホンダの「N」シリーズが絶好調だ。2018年6月で累計販売台数が200万台を超えた。2011年の発売以来、わずか7年半での記録達成である。昨年は登録車を含む新車販売台数ランキングで「N-BOX」が1位を獲得した。フルモデルチェンジで第2世代となってからも勢いに衰えはない。先進安全運転システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」を全車に標準装備して価格が上がったことが不安材料だったが、これも時代の状況にマッチした判断であったことが明らかになった。

ただ、販売台数ではシリーズ内でN-BOXが突出している。「N-WGN」はいいとしても、「N-ONE」や「N-BOXスラッシュ」はそれほど売れていないのだ。Nシリーズの新たな稼ぎ手とするべく開発されたのがN-VANである。それが商用車というのは逆転の発想だ。商用車ベースの乗用車というのは初期のミニバンなどにあったが、豪華装備の乗用車をもとにしてコストに厳しい商用車を作るというのは難しそうに思える。しっかりと台数を出して利益をあげられるという自信があるのだろう。

試乗時間はたっぷりあるので、まずはロケ場所に移動する。撮影機材を積み込もうとして、カメラマンK氏の顔がほころんだ。脚立をクルマの横から入れることができたからである。N-VANのウリのひとつが「ダブルビッグ大開口」。ボディーの左側がセンターピラーレスになっていて、助手席ドアが大きく開く。リアハッチと合わせて2方向から荷物を出し入れできるのだ。脚立程度の長さなら、横からでも楽勝である。

ホンダがこれまで販売していた「アクティ バン」は荷室長が1940mmあったが、N-VANは1585mm。アクティ バンが後部の床下にエンジンを搭載し、後輪を駆動していたのに対し、N-VANはFFである。ドライバーの乗車位置が後ろにズレるので、どうしても荷室が犠牲になってしまう。その弱点をカバーするのがダイブダウン機構付きの助手席だ。後席を倒して荷室を広げられるのはもちろん、助手席も完全にフラットになるので実質的な荷室長は2635mmに達する。ビールケースで比較すると、収納可能な量はアクティ バンの35個に対しN-VANは40個だ。

「N-VAN」の開発コンセプトは「積む・運ぶ生活のために」。日本のプロフェッショナルを支える“軽バン新基準”を目指して開発が進められた。
「N-VAN」の開発コンセプトは「積む・運ぶ生活のために」。日本のプロフェッショナルを支える“軽バン新基準”を目指して開発が進められた。
ボディーサイズは全長×全幅が3395×1475mm。全高は「G」「L」および「+STYLE FUN」(写真)がハイルーフ仕様の1945mm、「+STYLE COOL」のみロールーフ仕様の1850mmとなっている。
ボディーサイズは全長×全幅が3395×1475mm。全高は「G」「L」および「+STYLE FUN」(写真)がハイルーフ仕様の1945mm、「+STYLE COOL」のみロールーフ仕様の1850mmとなっている。
助手席側をピラーレス構造としたことでもたらされた「ダブルビッグ大開口」。最大開口幅は1580mmとなる。
助手席側をピラーレス構造としたことでもたらされた「ダブルビッグ大開口」。最大開口幅は1580mmとなる。
後席と助手席をすべてダイブダウンさせると、荷室長2635mmのラゲッジスペースが出現。ビールケースであれば最大40個が搭載可能とうたわれている(容積が基準)。
後席と助手席をすべてダイブダウンさせると、荷室長2635mmのラゲッジスペースが出現。ビールケースであれば最大40個が搭載可能とうたわれている(容積が基準)。

遮音材はケチっていない

まずは「+STYLE FUN」のターボエンジン搭載モデルをテスト。坂道でもグイグイ登る動力性能に満足するとともに、フル加速を試みても、思いのほか室内が静かであることに感心した。
まずは「+STYLE FUN」のターボエンジン搭載モデルをテスト。坂道でもグイグイ登る動力性能に満足するとともに、フル加速を試みても、思いのほか室内が静かであることに感心した。
運転席には、サイドサポートがしっかりとしたシートが装着される。宅配ドライバーなど乗り降りする機会が多いユーザーを考慮して、表皮の縫製部分が体に当たらないようにした、破れづらい構造となっている。
運転席には、サイドサポートがしっかりとしたシートが装着される。宅配ドライバーなど乗り降りする機会が多いユーザーを考慮して、表皮の縫製部分が体に当たらないようにした、破れづらい構造となっている。
助手席と後席はダイブダウンして使われることを想定しているため、座面と背もたれは薄くて硬い。
助手席と後席はダイブダウンして使われることを想定しているため、座面と背もたれは薄くて硬い。
助手席をダイブダウンさせるにはヘッドレストを取り外す必要があるため、助手席側のドアの内側に収納スペースが設けられている。
助手席をダイブダウンさせるにはヘッドレストを取り外す必要があるため、助手席側のドアの内側に収納スペースが設けられている。
商用車の場合、1人で運転するケースが多いので、収納スペースを最大化した状態がデフォルトだと考えていい。だから、運転席以外のシートは快適性が二の次になる。精巧なダイブダウン機構を備えているせいで、助手席は座面も背もたれもクッションが薄い。もっと厳しいのは後席である。ホールド性はないに等しく、つかまるためのつり手もないからコーナーで乗員が左右にスライドしてしまう。出っ張りがあると荷物を積む時に引っかかってしまうため、あえて装備していないそうだ。人間の都合より積み荷が優先されるのは、商用車の常識である。

エンジンはターボと自然吸気(NA)の2種類。ターボは完全な商用仕様の「G」と「L」のグレードには用意されず、レジャー用途にも対応する「+STYLE」のみの設定だ。最初に試乗したのは「+STYLE FUN」。親しみやすいデザインのハイルーフ仕様である。全高は1945mmで、N-BOXの1790mmはもちろん、「ダイハツ・ウェイク」の1835mmをも軽くしのぐ。サッカーのロシアワールドカップの日本戦で2点目を頭で押し込んだベルギー代表フェライニ選手の身長とほぼ同じだ。

背が高いにもかかわらず、エクステリアの印象はN-BOXにかなり似ている。広く受け入れられたフォルムの根幹は変える必要がない。サイドには水平に3本のビードが走っているだけで、飾り気のない簡素なデザインだ。室内空間を最大化するためには、無駄な意匠で厚化粧することは控えるべきなのだろう。室内も同様で、光り物や柔らか素材は無用である。荷物が触れる可能性のある部分には、傷がつきにくい形状となるように工夫が施されている。

ターボエンジンのスペックはN-BOXのものと変わらないから、動力性能は十分だ。キツめの坂道でもグイグイ加速する。車高は高くなっていても車重はN-BOXとそれほど変わらないから驚くにはあたらない。感心するべきなのは、フル加速しても車内に騒音が満ちるようなことはないという事実である。商用車だからNV性能は諦めて遮音材をケチっていいと考えるのは失礼きわまりない。働く人たちが毎日乗るからこそ、快適性が重視されるべきなのだ。

まずは「+STYLE FUN」のターボエンジン搭載モデルをテスト。坂道でもグイグイ登る動力性能に満足するとともに、フル加速を試みても、思いのほか室内が静かであることに感心した。
まずは「+STYLE FUN」のターボエンジン搭載モデルをテスト。坂道でもグイグイ登る動力性能に満足するとともに、フル加速を試みても、思いのほか室内が静かであることに感心した。
運転席には、サイドサポートがしっかりとしたシートが装着される。宅配ドライバーなど乗り降りする機会が多いユーザーを考慮して、表皮の縫製部分が体に当たらないようにした、破れづらい構造となっている。
運転席には、サイドサポートがしっかりとしたシートが装着される。宅配ドライバーなど乗り降りする機会が多いユーザーを考慮して、表皮の縫製部分が体に当たらないようにした、破れづらい構造となっている。
助手席と後席はダイブダウンして使われることを想定しているため、座面と背もたれは薄くて硬い。
助手席と後席はダイブダウンして使われることを想定しているため、座面と背もたれは薄くて硬い。
助手席をダイブダウンさせるにはヘッドレストを取り外す必要があるため、助手席側のドアの内側に収納スペースが設けられている。
助手席をダイブダウンさせるにはヘッドレストを取り外す必要があるため、助手席側のドアの内側に収納スペースが設けられている。

安全装備は乗用車と同等

「N-VAN」には安全運転支援システム「ホンダセンシング」が全車に標準装備となっており、緊急自動ブレーキや誤発進抑制制御に加えて、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムといったおよそ“軽バン”らしからぬ機能も備わる。
「N-VAN」には安全運転支援システム「ホンダセンシング」が全車に標準装備となっており、緊急自動ブレーキや誤発進抑制制御に加えて、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムといったおよそ“軽バン”らしからぬ機能も備わる。
CVTは「N-BOX」用をベースに、商用車向けに改良したもの。ギアやベアリング、ベルトなどの耐久性を高めたほか、ロー側をより低く、ハイ側をより高いレシオとすることで、発進駆動力と燃費性能向上を図っている。
CVTは「N-BOX」用をベースに、商用車向けに改良したもの。ギアやベアリング、ベルトなどの耐久性を高めたほか、ロー側をより低く、ハイ側をより高いレシオとすることで、発進駆動力と燃費性能向上を図っている。
続いては「+STYLE COOL」の自然吸気モデルに試乗。エクステリアにメッキパーツを多用した、軽乗用車であれば「カスタム」にあたるグレードだ。
続いては「+STYLE COOL」の自然吸気モデルに試乗。エクステリアにメッキパーツを多用した、軽乗用車であれば「カスタム」にあたるグレードだ。
全車が4ナンバー軽貨物自動車登録となる「N-VAN」は、5ナンバー軽自動車よりも自動車税がお得。一方、商用車としての観点から見ると、4ナンバー普通貨物車の車検有効期間が初回2年、その後は1年であるのに対し、N-VANは2回目以降も2年と、こちらもお得だ。
全車が4ナンバー軽貨物自動車登録となる「N-VAN」は、5ナンバー軽自動車よりも自動車税がお得。一方、商用車としての観点から見ると、4ナンバー普通貨物車の車検有効期間が初回2年、その後は1年であるのに対し、N-VANは2回目以降も2年と、こちらもお得だ。
試乗会場には従来型のアクティ バンが用意されていて、短時間だが乗ることができた。ホンダの研究所で使われていた個体らしい。こちらは、ザ・商用車である。加速はトロいのに騒音は一人前で、マンホールの上を通っただけでもボディー全体がギシギシと悲鳴をあげる。ステアリングホイールが寝ているので、運転姿勢は乗用車とはかけ離れたものだ。トランスミッションは3段AT。まだ残っていたことに驚いたが、これからも販売される軽トラの「アクティ トラック」ではまだ使われるらしい。

NAエンジンを積む「+STYLE COOL」に乗り換えると、さすがにパワフルとはいえない走りだった。このエンジンは、N-BOXのものと同じではない。N-BOXでは吸気側に可変バルブタイミング機構のVTECが使われているが、N-VANでは省かれている。当然、スペックも違う。N-BOXが最高出力58ps/7300rpm、最大トルクが65Nm/4800rpmで、N-VANは53ps/7300rpm、64Nm/4800rpm。高回転域の吸気効率が低下するため、出力が伸びないのだ。5000rpmぐらいまでの領域では差がないということなので、街なかで使われることが多い商用車ではデメリットが少ない。コストを優先したのは正しい判断だろう。

やはり、高速道路では少々ツラいことになる。100km/h巡航ではエンジンの回転数が5000を超えてしまう。うるさいことを我慢すれば、流れに乗るのは難しくない。標準装備されているホンダセンシングのアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使って安楽にクルージングすることもできる。このあたりは、N-BOXとなんら変わりがない。衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などの安全運転支援システムも万全である。

実際の使用状況に近づけるため、この試乗車には100kgの荷物が積まれていた。その程度の負荷はものともせず、むしろボディーの動きが落ち着いたようにも感じられた。商用車は空荷とフル積載では荷重のかかり方が大きく変化する。最大積載量は350kgとなっているものの、実際には過積載状態で使われることがあるのは暗黙の了解である。商用車の現実に対応するため、足まわりに関してはN-BOXとはガラリと変えているそうだ。乗り心地重視の乗用車とは異なる工夫が必要となる。N-BOXの廉価版ということではまったくない。

「N-VAN」には安全運転支援システム「ホンダセンシング」が全車に標準装備となっており、緊急自動ブレーキや誤発進抑制制御に加えて、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムといったおよそ“軽バン”らしからぬ機能も備わる。
「N-VAN」には安全運転支援システム「ホンダセンシング」が全車に標準装備となっており、緊急自動ブレーキや誤発進抑制制御に加えて、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムといったおよそ“軽バン”らしからぬ機能も備わる。
CVTは「N-BOX」用をベースに、商用車向けに改良したもの。ギアやベアリング、ベルトなどの耐久性を高めたほか、ロー側をより低く、ハイ側をより高いレシオとすることで、発進駆動力と燃費性能向上を図っている。
CVTは「N-BOX」用をベースに、商用車向けに改良したもの。ギアやベアリング、ベルトなどの耐久性を高めたほか、ロー側をより低く、ハイ側をより高いレシオとすることで、発進駆動力と燃費性能向上を図っている。
続いては「+STYLE COOL」の自然吸気モデルに試乗。エクステリアにメッキパーツを多用した、軽乗用車であれば「カスタム」にあたるグレードだ。
続いては「+STYLE COOL」の自然吸気モデルに試乗。エクステリアにメッキパーツを多用した、軽乗用車であれば「カスタム」にあたるグレードだ。
全車が4ナンバー軽貨物自動車登録となる「N-VAN」は、5ナンバー軽自動車よりも自動車税がお得。一方、商用車としての観点から見ると、4ナンバー普通貨物車の車検有効期間が初回2年、その後は1年であるのに対し、N-VANは2回目以降も2年と、こちらもお得だ。
全車が4ナンバー軽貨物自動車登録となる「N-VAN」は、5ナンバー軽自動車よりも自動車税がお得。一方、商用車としての観点から見ると、4ナンバー普通貨物車の車検有効期間が初回2年、その後は1年であるのに対し、N-VANは2回目以降も2年と、こちらもお得だ。

プロの使い方に合わせたポイントも

短時間ながら最廉価グレードである「G Honda SENSING」の6段MT仕様にも試乗できた。テストしたFF車の価格は126万7920円。
短時間ながら最廉価グレードである「G Honda SENSING」の6段MT仕様にも試乗できた。テストしたFF車の価格は126万7920円。
自然吸気エンジンモデルには、「S660」のものをベースにFF化および商用車に最適化された6段MTも設定される。ギアやクラッチが強化されているほか、6速をよりハイレシオとすることで高速巡航時の静粛性が高められている。
自然吸気エンジンモデルには、「S660」のものをベースにFF化および商用車に最適化された6段MTも設定される。ギアやクラッチが強化されているほか、6速をよりハイレシオとすることで高速巡航時の静粛性が高められている。
6段MT車のペダルレイアウトはご覧の通り。アクセルペダルは吊り下げ式となるが、ステーの形状を工夫することで、奥へと踏み込むのではなく、上から下へと踏み下ろせるようになっている。
6段MT車のペダルレイアウトはご覧の通り。アクセルペダルは吊り下げ式となるが、ステーの形状を工夫することで、奥へと踏み込むのではなく、上から下へと踏み下ろせるようになっている。
「G Honda SENSING」のリアシートは、ヘッドレストが省略されている。
「G Honda SENSING」のリアシートは、ヘッドレストが省略されている。
荷室の広さと低さを保つため、スペアタイヤはフロア下に格納。3分割構造のリアバンパー中央部を外すとアクセスできるようになっており、万が一のときでも荷物を降ろさずに交換できる。
荷室の広さと低さを保つため、スペアタイヤはフロア下に格納。3分割構造のリアバンパー中央部を外すとアクセスできるようになっており、万が一のときでも荷物を降ろさずに交換できる。
パワースライドドアの採用を見送ったのは、コストダウンのためではない。プロの現場では、電動でゆっくり開閉するのではまだるっこしいのだ。「トヨタ・ジャパンタクシー」でも、ドライバーと客の双方から不評だという。手でサッと開け閉めできるのでなければ仕事にならない。アイドリングストップも、車両が完全に停止してからでないと作動しない設定にした。ストップ&ゴーが多くてブレーキを踏む回数は乗用車の3倍以上になるため、ギクシャクするのを嫌う人が多いそうだ。

トランスミッションはCVTが基本だが、6段MTも選べる。高齢者の中には、ATモデルは怖いという人もまだまだいて、根強い需要があるらしい。MT仕様車に乗ろうとして、まずパーキングブレーキで面食らった。CVT車は足踏み式だが、MT車では昔懐かしいスティック式なのだ。少し引っ張って回すと解除される。このMTは「S660」のものをベースにし、FF用に改造したもの。スポーツカーからの転用だからといって、操作してものすごく楽しいということはない。N-VANはあくまで商用車なのだから、実用的で使いやすいMTである。

販売台数の7割は、ベースグレードのGとLになるという。機能性が最優先で後席にはヘッドレストもなく、ボディーカラーは白かシルバーしか選べない。仕事で使うのだから、低価格であることが重要なのだ。それでも動力性能や乗り心地は上級グレードと変わらないので、実際に乗るプロドライバーにとっては魅力的なモデルに映るはずだ。

+STYLEも多くは商用で使われることが見込まれている。荷物の運搬だけでなく、物品販売車やキッチンカーとして使われることも多いだろう。「ルノー・カングー」からの乗り換え需要もあるというから、オシャレ系商用車だと受け止められているようだ。

自転車やオートバイを積むこともできるし、車中泊にも対応している。レジャー用のアクセサリーがいろいろ用意されているので、工夫次第でパーソナルユースの可能性が広がるだろう。N-BOXよりN-VANのほうがライフスタイルに合うという家族は多いはずだ。断じてN-BOXの安いやつということではないので、選ぶことをためらう必要はない。ただし、価格もそれなりに高いことは事実なのだが。

(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

短時間ながら最廉価グレードである「G Honda SENSING」の6段MT仕様にも試乗できた。テストしたFF車の価格は126万7920円。
短時間ながら最廉価グレードである「G Honda SENSING」の6段MT仕様にも試乗できた。テストしたFF車の価格は126万7920円。
自然吸気エンジンモデルには、「S660」のものをベースにFF化および商用車に最適化された6段MTも設定される。ギアやクラッチが強化されているほか、6速をよりハイレシオとすることで高速巡航時の静粛性が高められている。
自然吸気エンジンモデルには、「S660」のものをベースにFF化および商用車に最適化された6段MTも設定される。ギアやクラッチが強化されているほか、6速をよりハイレシオとすることで高速巡航時の静粛性が高められている。
6段MT車のペダルレイアウトはご覧の通り。アクセルペダルは吊り下げ式となるが、ステーの形状を工夫することで、奥へと踏み込むのではなく、上から下へと踏み下ろせるようになっている。
6段MT車のペダルレイアウトはご覧の通り。アクセルペダルは吊り下げ式となるが、ステーの形状を工夫することで、奥へと踏み込むのではなく、上から下へと踏み下ろせるようになっている。
「G Honda SENSING」のリアシートは、ヘッドレストが省略されている。
「G Honda SENSING」のリアシートは、ヘッドレストが省略されている。
荷室の広さと低さを保つため、スペアタイヤはフロア下に格納。3分割構造のリアバンパー中央部を外すとアクセスできるようになっており、万が一のときでも荷物を降ろさずに交換できる。
荷室の広さと低さを保つため、スペアタイヤはフロア下に格納。3分割構造のリアバンパー中央部を外すとアクセスできるようになっており、万が一のときでも荷物を降ろさずに交換できる。

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