【試乗記】トヨタ・カローラ スポーツ ハイブリッドG“Z”(FF/CVT)

【試乗記】トヨタ・カローラ スポーツ ハイブリッドG“Z”(FF/CVT)
トヨタ・カローラ スポーツ ハイブリッドG“Z”(FF/CVT)

守るための革新

トヨタ伝統のロングセラーである「カローラ」シリーズに、久々のハッチバック「カローラ スポーツ」が登場。ライバルひしめくCセグメントのど真ん中に投入されたニューモデルの出来栄えを、ハイブリッドモデルの試乗を通して確かめた。

そういう生き方もアリかもしれない

仕様に応じて複数のインテリアカラーが用意される「カローラ スポーツ」。テスト車の「ハイブリッドG“Z”」には写真のブラックのモノトーンのほか、有償オプションで赤と黒のツートンカラーも用意される。
仕様に応じて複数のインテリアカラーが用意される「カローラ スポーツ」。テスト車の「ハイブリッドG“Z”」には写真のブラックのモノトーンのほか、有償オプションで赤と黒のツートンカラーも用意される。
「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に装備されるオプティトロンメーター。中央部には速度計の表示機能を備えた、7インチのインフォメーションディスプレイが備わる。
「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に装備されるオプティトロンメーター。中央部には速度計の表示機能を備えた、7インチのインフォメーションディスプレイが備わる。
スポーティーな意匠のヘッドレスト一体型スポーツシートは、「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に標準装備。オプションで本革シートも用意される。
スポーティーな意匠のヘッドレスト一体型スポーツシートは、「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に標準装備。オプションで本革シートも用意される。
ボディーカラーは全8色の設定。テスト車のボディーカラーは「オキサイドプロンズメタリック」。
ボディーカラーは全8色の設定。テスト車のボディーカラーは「オキサイドプロンズメタリック」。
わが家に初めてマイカーなるものがやってきたのは1967年生まれの僕がまだ1歳にも満たぬ頃のこと。当時としてはちょっとぜいたくだったのかもしれないが、後日聞いた話だと、公立学校の教員だった父が週に幾度か離れた村区の学校に通わなければならないという事情があって、思い切って購入したそうだ。

最初のクルマは中古の「トヨタ・パブリカ」。そこから中古の「三菱ミニカ」とつないで3台めのマイカーとしてわが家にやってきたのは新車の「スプリンター」だった。なんでカローラにしなかったのかという話はこれまた後日聞いたわけだが、その勇ましき名前にほれたわけでもアンチメジャー的な判官びいきでもなく、ただ単にやんちゃな教え子が販売店=当時出来たてのトヨタオート店に就職したからだという。以降、僕が知恵をつけて「スカイライン」だの「カペラ」だのと騒ぎ立てる中、わが家のマイカーは一片もブレることなくトヨタで固められ、先ごろ父は「クラウン」にたどり着くことなく「プレミオ」を最後に免許を返納した。

トヨタにクルマの一切合切を委ねるほどつまらない人生はない……とクルマ好きには久しくそう言われてきたし、僕も普通にそう思っていた。道にあふれるカローラをみるたび、思考なき衆愚どもめと思っていたクルマ革命戦士はしかし、今やクルマ周り以前に胴回りとの戦いで精いっぱいの50歳超えである。トヨタの所業に逐一目くじらを立てるのも面倒なら、長いものにはとっとと巻かれて勝ち馬にせっせと乗り続ける人生も悪くはないという事例も数々目にしてきた。今や他人のトヨタ漬け人生をみても、そうだよねぇと理解もできる。

仕様に応じて複数のインテリアカラーが用意される「カローラ スポーツ」。テスト車の「ハイブリッドG“Z”」には写真のブラックのモノトーンのほか、有償オプションで赤と黒のツートンカラーも用意される。
仕様に応じて複数のインテリアカラーが用意される「カローラ スポーツ」。テスト車の「ハイブリッドG“Z”」には写真のブラックのモノトーンのほか、有償オプションで赤と黒のツートンカラーも用意される。
「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に装備されるオプティトロンメーター。中央部には速度計の表示機能を備えた、7インチのインフォメーションディスプレイが備わる。
「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に装備されるオプティトロンメーター。中央部には速度計の表示機能を備えた、7インチのインフォメーションディスプレイが備わる。
スポーティーな意匠のヘッドレスト一体型スポーツシートは、「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に標準装備。オプションで本革シートも用意される。
スポーティーな意匠のヘッドレスト一体型スポーツシートは、「G“Z”」と「ハイブリッドG“Z”」に標準装備。オプションで本革シートも用意される。
ボディーカラーは全8色の設定。テスト車のボディーカラーは「オキサイドプロンズメタリック」。
ボディーカラーは全8色の設定。テスト車のボディーカラーは「オキサイドプロンズメタリック」。

強力なライバルひしめくCセグメントへ

2018年6月にデビューした「カローラ スポーツ」。カローラシリーズとしては、2006年に絶版となった「カローラ ランクス」以来、久々のハッチバックモデルとなる。
2018年6月にデビューした「カローラ スポーツ」。カローラシリーズとしては、2006年に絶版となった「カローラ ランクス」以来、久々のハッチバックモデルとなる。
純正ナビに搭載されるコネクティッド機能およびサービス「T-Connect」の操作画面。「カローラ スポーツ」には「DCM」と呼ばれる通信モジュールが搭載されており、トヨタは新型「クラウン」と並んで「初代コネクティッドカー」と位置づけている。
純正ナビに搭載されるコネクティッド機能およびサービス「T-Connect」の操作画面。「カローラ スポーツ」には「DCM」と呼ばれる通信モジュールが搭載されており、トヨタは新型「クラウン」と並んで「初代コネクティッドカー」と位置づけている。
荷室容量は352リッター。床面の高さを2段階に調整できるデッキボードに加え、オプションで荷室を3分割にできる「4:2:4分割アジャスタブルデッキボード」も用意される。
荷室容量は352リッター。床面の高さを2段階に調整できるデッキボードに加え、オプションで荷室を3分割にできる「4:2:4分割アジャスタブルデッキボード」も用意される。
「カローラ」の名を冠する「カローラ スポーツ」だが、実質的にはCセグメントハッチバック車「オーリス」の後継モデルにあたる。
「カローラ」の名を冠する「カローラ スポーツ」だが、実質的にはCセグメントハッチバック車「オーリス」の後継モデルにあたる。
しかし、そんな最近の自分でさえ、2012年に登場した現行のカローラは理解の難しいクルマだった。どうしても5ナンバーでなければならないオジさんのためのセダンと、後席を頻繁に使う法人向けの「プロボックス」代わりのワゴン……と、街中で見かけるそれらからは積極的選択の気配がしない。時は移ろい国民車の座は「プリウス」と「アクア」で分かち合っている。もはやカローラという名前に特別な思い入れを抱く人もわずかになったということだろう。

が、トヨタ内部では今もってカローラの名前は会社の出世を支えた聖なるものだ。それは過去形ではなく、世界に目を向ければ100万台を超えるカローラが毎年生まれている。仕向け地によって形は異なれど、車名別でいえば「カムリ」との2トップであることは変わらない。その故郷である日本において、カローラの名がつくクルマがなくなることなどあってはならないという思いもあってのことだろう。新しいカローラシリーズは世界市場と同等のグローバルスペックで新たな門出となった。

「カローラ ランクス」以来のハッチバックとなるカローラ スポーツのネタ元は、欧州においてカローラの後継的位置づけで3代にわたり展開されている「オーリス」だ。日本でも定着しかかったその名を捨ててまでカローラを名乗らせるのだから、そこからもトヨタの意気込みは十分感じられる。オーリスは欧州市場において間もなくワゴンが発表されるが、それが「カローラ フィールダー」の後継的位置づけで展開される可能性は十分考えられるだろう。風のうわさではセダンの存在もささやかれているが、詳細は不明だ。が、5ナンバー枠という退路を断った新世代カローラの前方に広がるのは、日本車では「マツダ・アクセラ」や「スバル・インプレッサ」とがっぷり四つ、欧州Cセグメントともガチという、なかなかのいばら道である。

2018年6月にデビューした「カローラ スポーツ」。カローラシリーズとしては、2006年に絶版となった「カローラ ランクス」以来、久々のハッチバックモデルとなる。
2018年6月にデビューした「カローラ スポーツ」。カローラシリーズとしては、2006年に絶版となった「カローラ ランクス」以来、久々のハッチバックモデルとなる。
純正ナビに搭載されるコネクティッド機能およびサービス「T-Connect」の操作画面。「カローラ スポーツ」には「DCM」と呼ばれる通信モジュールが搭載されており、トヨタは新型「クラウン」と並んで「初代コネクティッドカー」と位置づけている。
純正ナビに搭載されるコネクティッド機能およびサービス「T-Connect」の操作画面。「カローラ スポーツ」には「DCM」と呼ばれる通信モジュールが搭載されており、トヨタは新型「クラウン」と並んで「初代コネクティッドカー」と位置づけている。
荷室容量は352リッター。床面の高さを2段階に調整できるデッキボードに加え、オプションで荷室を3分割にできる「4:2:4分割アジャスタブルデッキボード」も用意される。
荷室容量は352リッター。床面の高さを2段階に調整できるデッキボードに加え、オプションで荷室を3分割にできる「4:2:4分割アジャスタブルデッキボード」も用意される。
「カローラ」の名を冠する「カローラ スポーツ」だが、実質的にはCセグメントハッチバック車「オーリス」の後継モデルにあたる。
「カローラ」の名を冠する「カローラ スポーツ」だが、実質的にはCセグメントハッチバック車「オーリス」の後継モデルにあたる。

進化を続けるTNGAプラットフォーム

パワープラントは現行型「プリウス」から導入が進められている、1.8リッター直4エンジンに大幅改良を受けたハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせ。燃費はWLTCモードで25.6km/リッターとなっている。
パワープラントは現行型「プリウス」から導入が進められている、1.8リッター直4エンジンに大幅改良を受けたハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせ。燃費はWLTCモードで25.6km/リッターとなっている。
可変ダンパーとセットでオプション設定される5段階のドライブモードセレクト機能の操作画面。パワートレインやステアリング、エアコンなどの制御を切り替えることができる。
可変ダンパーとセットでオプション設定される5段階のドライブモードセレクト機能の操作画面。パワートレインやステアリング、エアコンなどの制御を切り替えることができる。
「AVS」とは、4本のダンパーの減衰力を個別に調整できる電子制御サスペンションのこと。同オプションの装着車では、ドライブモードセレクト機能でダンパー減衰力の調整も可能となる。
「AVS」とは、4本のダンパーの減衰力を個別に調整できる電子制御サスペンションのこと。同オプションの装着車では、ドライブモードセレクト機能でダンパー減衰力の調整も可能となる。
その中で、カローラ スポーツの大きな武器となるのはやはりハイブリッドだろう。ちなみにディーゼルにまつわる諸問題が噴出した欧州でも電動化シフトが著しく、コンシューマー向けでは苦戦していたハイブリッドにも商機が訪れている。プリウス→C-HRの流れをくむ1.8リッター&THS IIの総合出力は122ps。かつて苦手としていた130km/h高速巡航レベルでの燃費も含め、総合的に1.6リッターディーゼルと対峙(たいじ)する能力は備えているといえる。

日本の環境であれば動力性能的な不満はもちろんないが、注目すべきはパワートレインの質感だろう。まずマネジメントがモーターを積極的に用いる側に振られていて、得たい加速に対してエンジン側がガッと吹け上がる無駄ぼえ的な稼働が少なくなっている。特に、街中から郊外路での穏やかな加速をみれば、以前との差は明らかで、静粛性や走行フィールなどでメリットを生んでいる。そしてTNGAプラットフォームも新型車ごとのアップデートの中で剛性向上が果たされており、それがマウントものの硬度選定や支持精度にもいい影響を与えているのだろう。エンジン稼働時の振動はプリウスやC-HRに対してさらに低減されている印象だ。

パワープラントは現行型「プリウス」から導入が進められている、1.8リッター直4エンジンに大幅改良を受けたハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせ。燃費はWLTCモードで25.6km/リッターとなっている。
パワープラントは現行型「プリウス」から導入が進められている、1.8リッター直4エンジンに大幅改良を受けたハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせ。燃費はWLTCモードで25.6km/リッターとなっている。
可変ダンパーとセットでオプション設定される5段階のドライブモードセレクト機能の操作画面。パワートレインやステアリング、エアコンなどの制御を切り替えることができる。
可変ダンパーとセットでオプション設定される5段階のドライブモードセレクト機能の操作画面。パワートレインやステアリング、エアコンなどの制御を切り替えることができる。
「AVS」とは、4本のダンパーの減衰力を個別に調整できる電子制御サスペンションのこと。同オプションの装着車では、ドライブモードセレクト機能でダンパー減衰力の調整も可能となる。
「AVS」とは、4本のダンパーの減衰力を個別に調整できる電子制御サスペンションのこと。同オプションの装着車では、ドライブモードセレクト機能でダンパー減衰力の調整も可能となる。

オーリスの名を捨てた是非

サスペンションは、前がマクファーソンストラット式、後ろがダブルウイッシュボーン式。「G"Z"」「ハイブリッドG“Z”」のタイヤサイズは225/40R18で、切削光輝加工とダークグレーメタリック塗装を用いた18インチアルミホイールが組み合わされる。
サスペンションは、前がマクファーソンストラット式、後ろがダブルウイッシュボーン式。「G"Z"」「ハイブリッドG“Z”」のタイヤサイズは225/40R18で、切削光輝加工とダークグレーメタリック塗装を用いた18インチアルミホイールが組み合わされる。
リアシートは全車共通で6:4の分割可倒式。広さや座り心地はともかく、静粛性についてはいささか難があった。
リアシートは全車共通で6:4の分割可倒式。広さや座り心地はともかく、静粛性についてはいささか難があった。
発売からの1カ月で“月販目標”の4倍を受注するという滑り出しを見せた「カローラ スポーツ」。販売比率は、約7割がハイブリッド、約3割がターボとなっている。
発売からの1カ月で“月販目標”の4倍を受注するという滑り出しを見せた「カローラ スポーツ」。販売比率は、約7割がハイブリッド、約3割がターボとなっている。
加えていえば、皆々が指摘する運動性能の高さについても、TNGAのアップデートによる影響は無視できない。バネ下の転がりの滑らかさや足まわりの精度感はカローラ スポーツの動的印象をひと回り上質なものとしている。乗り心地に関しても微小入力域から奇麗に動くアシがあるからこそ新しいダンパーも生かされるわけで、TNGAがもたらす好循環はソロバンより先にエンジニアの側に福音をもたらしている。

それに対して、すぐにでも改善を望みたいのは後席の快適性、ひとえに音環境の悪さだ。中高速域での盛大なロードノイズは音質も不快で、高速道路では前席側との会話もためらうほどだった。ハンドリングに費やす情熱の一片でも、後席の音消しに振り向けてもらえればと思う。

カローラ スポーツがもたらしたこの成果は、当然マイナーチェンジを控えるプリウスはじめ、今後登場する他のモデルにも反映されるはずだ。が、現時点で1.8リッター+THS IIのハイブリッドモデルを検討するなら、このクルマが最右翼の選択肢であることに疑いはない。“最新は最良”とは100%のクルマに当てはまるものではないが、カローラ スポーツに関しては、その体幹がカローラのイメージを激変させたと言っても過言ではないだろう。オーリスの名に別れを告げてまでカローラを生かしたトヨタの決定の是非は、このあと国内の販売台数が示すことになる。

(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

サスペンションは、前がマクファーソンストラット式、後ろがダブルウイッシュボーン式。「G"Z"」「ハイブリッドG“Z”」のタイヤサイズは225/40R18で、切削光輝加工とダークグレーメタリック塗装を用いた18インチアルミホイールが組み合わされる。
サスペンションは、前がマクファーソンストラット式、後ろがダブルウイッシュボーン式。「G"Z"」「ハイブリッドG“Z”」のタイヤサイズは225/40R18で、切削光輝加工とダークグレーメタリック塗装を用いた18インチアルミホイールが組み合わされる。
リアシートは全車共通で6:4の分割可倒式。広さや座り心地はともかく、静粛性についてはいささか難があった。
リアシートは全車共通で6:4の分割可倒式。広さや座り心地はともかく、静粛性についてはいささか難があった。
発売からの1カ月で“月販目標”の4倍を受注するという滑り出しを見せた「カローラ スポーツ」。販売比率は、約7割がハイブリッド、約3割がターボとなっている。
発売からの1カ月で“月販目標”の4倍を受注するという滑り出しを見せた「カローラ スポーツ」。販売比率は、約7割がハイブリッド、約3割がターボとなっている。

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