【試乗記】アウディA6セダン55 TFSIクワトロ(4WD/7AT)

アウディA6セダン55 TFSIクワトロ(4WD/7AT)【試乗記】
アウディA6セダン 55 TFSIクワトロ(4WD/7AT)

ため息がこぼれる

2019年3月に日本導入が始まったアウディの新型「A6」。同時にデビューした「セダン」とステーションワゴンの「アバント」のうち、まずは3リッターV6エンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み込んだセダン「55 TFSIクワトロ」の印象を報告する。

アウディらしい潔癖さ

2019年3月12日に日本での販売を開始した新型「A6」。現行モデルは、1968年に誕生した「アウディ100」から数えて8世代目となる。
2019年3月12日に日本での販売を開始した新型「A6」。現行モデルは、1968年に誕生した「アウディ100」から数えて8世代目となる。
今回の試乗車「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、「HDマトリクスLEDヘッドライト」を標準装備する。
今回の試乗車「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、「HDマトリクスLEDヘッドライト」を標準装備する。
前後のフェンダー上部をブリスター化するなど、1980年に誕生した通称「ビッグ・クワトロ」のエクステリアデザインをモチーフとしている。
前後のフェンダー上部をブリスター化するなど、1980年に誕生した通称「ビッグ・クワトロ」のエクステリアデザインをモチーフとしている。
「A6セダン」のサイズは全長×全幅×全高=4950×1885×1440mm、ホイールベース=2925mm。
「A6セダン」のサイズは全長×全幅×全高=4950×1885×1440mm、ホイールベース=2925mm。
パッと見ていかにも高そうだということでは、今のアウディの右に出るものはないと思う。彫り込んだようなキャラクターラインや手が切れそうなエッジ部分、きめ細やかで立体的な前後のLEDライトなどのエクステリア、細部に至るまでわずかな隙さえない上等なインテリアは、今や世界中の自動車メーカーのベンチマークとなっている、と実際にライバルメーカーのデザイナーから聞いたことがある。

アウディと対峙(たいじ)するといつも、こちらも何というか意地になって矯めつ眇(すが)めつ見渡してみるのだが、細く真っすぐなトリムラインはあくまで真っすぐであり、ピシリとはめ込まれたフラットなディスプレイパネルは執拗(しつよう)なまでに緻密で平滑である。

先に登場した「A8」同様、物理的なボタンやスイッチを極力省いてタッチスイッチに置き換えたMMIタッチレスポンスを採用した新型A6は、さらにクリーンで現代的になり、まるで入念に仕上げられた工芸品のようだ。美しく清潔に整えることに対するアウディの執念さえ感じるほどの潔癖さと言えばいいだろうか。アウディにはここまでなら許容範囲とする公差という言葉が存在しないかのようだ。

もっとも、緻密で端正なその佇(たたず)まいには、あまりに隙がなくて息苦しさを感じる人もいるかもしれない。自動車にタフな道具感を求める人にはなおさらだろう。当然ながら、オプションを含まない本体価格でこの「Sライン」は1060万円と高価なモデルではあるが、いわゆる知覚品質だけでなくダイナミックな面でも、それを納得させるだけのクオリティーに満ちていることは間違いない。

2019年3月12日に日本での販売を開始した新型「A6」。現行モデルは、1968年に誕生した「アウディ100」から数えて8世代目となる。
2019年3月12日に日本での販売を開始した新型「A6」。現行モデルは、1968年に誕生した「アウディ100」から数えて8世代目となる。
今回の試乗車「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、「HDマトリクスLEDヘッドライト」を標準装備する。
今回の試乗車「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、「HDマトリクスLEDヘッドライト」を標準装備する。
前後のフェンダー上部をブリスター化するなど、1980年に誕生した通称「ビッグ・クワトロ」のエクステリアデザインをモチーフとしている。
前後のフェンダー上部をブリスター化するなど、1980年に誕生した通称「ビッグ・クワトロ」のエクステリアデザインをモチーフとしている。
「A6セダン」のサイズは全長×全幅×全高=4950×1885×1440mm、ホイールベース=2925mm。
「A6セダン」のサイズは全長×全幅×全高=4950×1885×1440mm、ホイールベース=2925mm。

3リッターV6のクワトロのみ

デイタイムランニングライトは、5本のラインが並ぶ特徴的なデザインを採用。
デイタイムランニングライトは、5本のラインが並ぶ特徴的なデザインを採用。
メカニカルスイッチを大幅に減らしたインストゥルメントパネル。フラッグシップ「A8」譲りのデザインといえる。
メカニカルスイッチを大幅に減らしたインストゥルメントパネル。フラッグシップ「A8」譲りのデザインといえる。
「Sライン」にはバルコナレザー表皮の電動スポーツシートが備わる。
「Sライン」にはバルコナレザー表皮の電動スポーツシートが備わる。
今回の試乗車は、リアシートヒーターやリアウィンドウブラインドなどがセットになるリアコンフォートパッケージを装備していた。
今回の試乗車は、リアシートヒーターやリアウィンドウブラインドなどがセットになるリアコンフォートパッケージを装備していた。
言うまでもなくA6はアウディの中核モデルであり、アウディブランドを確立した代名詞的存在だ。さらにステーションワゴンをアバントという名で根付かせた立役者でもある。

1994年にそれまでの「100」からA6という名称に変更されて5代目、1968年デビューのアウディ100からの通算では8世代目に当たる新型A6は、フラッグシップたるA8と何がどう違うのかと混乱するぐらいのレベルに仕上がっている。

日本仕様のパワーユニットは今のところガソリン3リッターV6ターボのみでトランスミッションはDCTの7段「Sトロニック」、駆動方式もクワトロに限られる。さらにグレードもSラインと特別仕様の「デビューパッケージ」の2本立てとなっている。

本国では2リッター4気筒直噴ターボや3リッターV6ディーゼルターボを積むモデルも設定されているものの、要するに日本にはトップグレードが真っ先に導入されたことになる。

Vバンクの間にツインスクロールターボを押し込んだ3リッターV6ターボエンジンを積む新型A6は、A8から導入された新しい呼称法によって「55 TFSI」(55は最高出力245~320kW)というモデルネームになる。

デイタイムランニングライトは、5本のラインが並ぶ特徴的なデザインを採用。
デイタイムランニングライトは、5本のラインが並ぶ特徴的なデザインを採用。
メカニカルスイッチを大幅に減らしたインストゥルメントパネル。フラッグシップ「A8」譲りのデザインといえる。
メカニカルスイッチを大幅に減らしたインストゥルメントパネル。フラッグシップ「A8」譲りのデザインといえる。
「Sライン」にはバルコナレザー表皮の電動スポーツシートが備わる。
「Sライン」にはバルコナレザー表皮の電動スポーツシートが備わる。
今回の試乗車は、リアシートヒーターやリアウィンドウブラインドなどがセットになるリアコンフォートパッケージを装備していた。
今回の試乗車は、リアシートヒーターやリアウィンドウブラインドなどがセットになるリアコンフォートパッケージを装備していた。

すべてマイルドハイブリッドに

3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボエンジンに「48Vマイルドハイブリッドテクノロジー(MHEV)」を組み合わせて搭載。最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生させる。
3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボエンジンに「48Vマイルドハイブリッドテクノロジー(MHEV)」を組み合わせて搭載。最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生させる。
「Sライン」では、「5アームダイナミックデザイン」と呼ばれる写真の19インチホイールが標準装備される。試乗車には245/45R19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」タイヤが組み合わされていた。
「Sライン」では、「5アームダイナミックデザイン」と呼ばれる写真の19インチホイールが標準装備される。試乗車には245/45R19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」タイヤが組み合わされていた。
幅1050mm、容量530リッターのラゲッジスペースを持つ「A6セダン」。後席シートバックはステーションワゴンの「アバント」と同様に、40:20:40の分割可倒式になっている。
幅1050mm、容量530リッターのラゲッジスペースを持つ「A6セダン」。後席シートバックはステーションワゴンの「アバント」と同様に、40:20:40の分割可倒式になっている。
ドアやボンネット、フロントフェンダー、トランクリッドなどにアルミニウムを採用。オプションを装着した試乗車の車両重量は1900kgとなっている。
ドアやボンネット、フロントフェンダー、トランクリッドなどにアルミニウムを採用。オプションを装着した試乗車の車両重量は1900kgとなっている。
新しいA6のパワートレインは6気筒でも4気筒(日本未導入)でもすべて、いわゆるマイルドハイブリッドシステムを装備しているのが特徴だ。最高出力340ps(250kW)/5200-6400rpmと最大トルク500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpmを発生する3リッターV6ターボエンジンは、48V駆動のBAS(ベルトドリブン・オルタネーター・スターター)を備え、4気筒版はもっと簡易的だが同様の12Vシステムを増備するという。

条件が許せば高速道路をアダプティブクルーズコントロールで追従走行中でもエンジンを停止させてコースティングするようで、そこからの再始動も極めてスムーズであり、メーターを見ていない限り停止も再始動もまったく感じ取れないほどだ。またマイルドハイブリッドシステムのおかげでアイドリングストップも22km/h以下なら作動するようになり、しかもストップ/再スタートの制御に違和感がなく、信号に向かって軽くブレーキングしながら速度を落としている最中にガクンとエンジンが止まるということもない。

ちなみに同じA6クワトロでも、3リッターV6ターボ+7段SトロニックとV6ターボディーゼル+8段AT用では4WDのシステムが異なり、55 TFSIは例えば「Q5」同様、センターデフの代わりの電子制御カップリングに加えてプロペラシャフトの前端に後ろの駆動系を切り離せるAWDクラッチを備える「ウルトラ クワトロ」と呼ばれるタイプだ。もちろんFWDで走行している場合もさまざまなパラメーターからあらかじめ必要性を判断し、いざという場合には0.2秒で4WDに復帰するという。クワトロの本家たるアウディにしても、アイドリングストップやコースティングと合わせて、それほどまでにできる限りの燃費向上策を導入しなければいけない時代なのである。ちなみに最も優れたモデルでは空気抵抗係数はCd=0.24だという。

実際に燃費は優秀なようで、特に燃費走行したわけではないが、高速道路区間では車載コンピューターは14km/リッターを超える数字を表示していた。燃料タンクは73リッター入りだから、走っても走ってもなかなかレンジの数字は減らない。

3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボエンジンに「48Vマイルドハイブリッドテクノロジー(MHEV)」を組み合わせて搭載。最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生させる。
3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボエンジンに「48Vマイルドハイブリッドテクノロジー(MHEV)」を組み合わせて搭載。最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生させる。
「Sライン」では、「5アームダイナミックデザイン」と呼ばれる写真の19インチホイールが標準装備される。試乗車には245/45R19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」タイヤが組み合わされていた。
「Sライン」では、「5アームダイナミックデザイン」と呼ばれる写真の19インチホイールが標準装備される。試乗車には245/45R19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」タイヤが組み合わされていた。
幅1050mm、容量530リッターのラゲッジスペースを持つ「A6セダン」。後席シートバックはステーションワゴンの「アバント」と同様に、40:20:40の分割可倒式になっている。
幅1050mm、容量530リッターのラゲッジスペースを持つ「A6セダン」。後席シートバックはステーションワゴンの「アバント」と同様に、40:20:40の分割可倒式になっている。
ドアやボンネット、フロントフェンダー、トランクリッドなどにアルミニウムを採用。オプションを装着した試乗車の車両重量は1900kgとなっている。
ドアやボンネット、フロントフェンダー、トランクリッドなどにアルミニウムを採用。オプションを装着した試乗車の車両重量は1900kgとなっている。

静かな浮遊感

「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、MHEVによって22km/h以下でエンジンスタート/ストップ機能が働くほか、55~160km/hの間でエンジン休止走行のコースティングも行える。
「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、MHEVによって22km/h以下でエンジンスタート/ストップ機能が働くほか、55~160km/hの間でエンジン休止走行のコースティングも行える。
12.3インチの液晶パネルを使用する「バーチャルコックピット」と呼ばれるメーター。ナビ(写真)のほか、各種車両情報が切り替え表示可能になっている。
12.3インチの液晶パネルを使用する「バーチャルコックピット」と呼ばれるメーター。ナビ(写真)のほか、各種車両情報が切り替え表示可能になっている。
メカニカルスイッチを極力使用しない、シンプルでクリーンなセンターコンソールデザインを採用。トランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7段のDCTを搭載する。
メカニカルスイッチを極力使用しない、シンプルでクリーンなセンターコンソールデザインを採用。トランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7段のDCTを搭載する。
徹底したフラッシュサーフェス化と、アンダーフロアをパネルで覆うなどの空力対策を行い、空気抵抗係数は0.24をマーク(欧州仕様値)する。JC08モードの公称燃費値は12.3km/リッター。
徹底したフラッシュサーフェス化と、アンダーフロアをパネルで覆うなどの空力対策を行い、空気抵抗係数は0.24をマーク(欧州仕様値)する。JC08モードの公称燃費値は12.3km/リッター。
新型A6でのクルージングは、静謐(せいひつ)な茶室が滑るように移動している感じである。直接比べればA8のほうが若干静かかもしれないが、そんな比較が無意味なぐらい文句なしに静粛で滑らかである。

Sラインのサスペンションは通常のスプリングに可変ダンパー(オプションの「ドライビングパッケージ」に含まれる)を組み合わせたスポーツサスペンションということになっているが、低速域での当たりの滑らかさはエアサスペンションを備えたA8よりもむしろ上回っているのではないかと感じたほど。ドライブセレクトでシフトプログラムやダンピングなどの設定を切り替えることが可能だが、どのモードでもフラットでしなやかな基本キャラクターに変わりはない。

オプション装備のドライビングパッケージには、可変ギアレシオのダイナミックステアリングと、60km/h以下では前輪と逆位相に、それ以上では同位相に切れる後輪操舵システムを組み合わせたダイナミックオールホイールコントロールが含まれているが、そのおかげかハンドリングは軽快であり、高速域でも糸を引くように正確に意図したラインをたどる安心感は抜群である。もちろんパフォーマンスに不足のあるはずはなく、スロットルを深く踏めば控えめな排気音とともに豪快に加速する。0-100km/h加速は5.1秒という俊足である。

クールでスマートなカッコよさだけがアウディの特徴ではない。そのハイクオリティーが極めて高度で精密なエンジニアリングに裏付けされているということは、新型A6に乗ってもらえれば必ず分かるはずである。

(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)

「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、MHEVによって22km/h以下でエンジンスタート/ストップ機能が働くほか、55~160km/hの間でエンジン休止走行のコースティングも行える。
「A6セダン55 TFSIクワトロSライン」は、MHEVによって22km/h以下でエンジンスタート/ストップ機能が働くほか、55~160km/hの間でエンジン休止走行のコースティングも行える。
12.3インチの液晶パネルを使用する「バーチャルコックピット」と呼ばれるメーター。ナビ(写真)のほか、各種車両情報が切り替え表示可能になっている。
12.3インチの液晶パネルを使用する「バーチャルコックピット」と呼ばれるメーター。ナビ(写真)のほか、各種車両情報が切り替え表示可能になっている。
メカニカルスイッチを極力使用しない、シンプルでクリーンなセンターコンソールデザインを採用。トランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7段のDCTを搭載する。
メカニカルスイッチを極力使用しない、シンプルでクリーンなセンターコンソールデザインを採用。トランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7段のDCTを搭載する。
徹底したフラッシュサーフェス化と、アンダーフロアをパネルで覆うなどの空力対策を行い、空気抵抗係数は0.24をマーク(欧州仕様値)する。JC08モードの公称燃費値は12.3km/リッター。
徹底したフラッシュサーフェス化と、アンダーフロアをパネルで覆うなどの空力対策を行い、空気抵抗係数は0.24をマーク(欧州仕様値)する。JC08モードの公称燃費値は12.3km/リッター。

[提供元:(株)webCG]Powered by webCG

あわせて読みたい「アウディ」関連記事

  • 【アウディ A7スポーツバック 新型試乗】例えるならそう、氷の微笑って感じ…今井優杏
    【アウディ A7スポーツバック 新型試乗】例えるならそう、氷の微笑って感じ…今井優杏
  • アウディ・クワトロ…WRC参戦マシンのベース車特集
    アウディ・クワトロ…WRC参戦マシンのベース車特集
  • ドイツ車の覇権 メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ(1985年)
    ドイツ車の覇権 メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ(1985年)

カタログ

  • アウディ A6
    アウディ A6

試乗記トップ

  • 試乗記トップへ
    試乗記トップへ