【試乗記】トヨタRAV4ハイブリッドG/ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース(後編)

トヨタRAV4ハイブリッドG/ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース(後編)【試乗記】
トヨタRAV4ハイブリッドG/ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース

日本が誇る“カイゼン”

1990年代半ばのデビューからの浮沈の歴史が、面白いように似ている「トヨタRAV4」と「ホンダCR-V」。比較試乗記の後編となる今回は、ハイブリッドパワートレインの出来栄えに加えて、細かなユーティリティー性能をチェックする。

RAV4の4WDシステムは3タイプ

「RAV4」のハイブリッドモデルに搭載される4WDシステムは後輪を独立したモーター(最高出力54ps)で駆動する「E-Four」。前後輪間のトルク配分は100:0~20:80の間で制御される
「RAV4」のハイブリッドモデルに搭載される4WDシステムは後輪を独立したモーター(最高出力54ps)で駆動する「E-Four」。前後輪間のトルク配分は100:0~20:80の間で制御される
ドライブモードセレクターの前方には「TRAILモード」のスイッチがレイアウトされる。同モードでは空転したタイヤを制動して反対側のタイヤにトルクを配分することで、スタック状態から脱出しやすくなる。
ドライブモードセレクターの前方には「TRAILモード」のスイッチがレイアウトされる。同モードでは空転したタイヤを制動して反対側のタイヤにトルクを配分することで、スタック状態から脱出しやすくなる。
パワーユニットは2.5リッター直4エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド。リアモーターも含めたシステム最高出力は222ps。
パワーユニットは2.5リッター直4エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド。リアモーターも含めたシステム最高出力は222ps。
テスト車の「RAV4ハイブリッドG」にはダンロップのオンロードSUV向けタイヤ「グラントレックPT30」が装着されていた。
テスト車の「RAV4ハイブリッドG」にはダンロップのオンロードSUV向けタイヤ「グラントレックPT30」が装着されていた。
(前編からの続き)
今回はオフロードでの試乗はできなかったが、RAV4もCR-Vもしっかりとした4WD機構を備えている。RAV4には3種類もの方式があって、ガソリンエンジン車は前後駆動配分50:50の「ダイナミックコントロール4WD」と、走行状況に応じて後輪へのトルク伝達を左右独立で制御する「ダイナミックトルクベクタリングAWD」から選べる。

試乗したのはハイブリッド車なので、後輪をモーターで駆動する「E-Four」だった。路面状況に応じて前後輪トルク配分が100:0から最大20:80まで自動的に変化する。モーターならではの素早いコントロールができるはずだ。

CR-Vでは実際に雪道を走ったことがある。こちらは2リッター直4エンジンに2つのモーターを組み合わせた「SPORT HYBRID i-MMD」の4WD。シャーベット路や圧雪路を走ってみて、十分な走行性能を備えていることを確認した。本格的なオフロードを走るクルマではないので、スキー場に乗り入れることができれば合格である。

乗り心地はCR-Vのほうが少しだけマイルドに感じたが、大きな差があるわけではない。ミドルクラスのSUVらしく、ボディーが揺さぶられる感覚はある。「トヨタC-HR」や「ホンダ・ヴェゼル」のようにスポーティーでタイトな感覚の走りとは明確に異なる。高速道路をゆったりと静かに巡航するのに向いているクルマだ。

「RAV4」のハイブリッドモデルに搭載される4WDシステムは後輪を独立したモーター(最高出力54ps)で駆動する「E-Four」。前後輪間のトルク配分は100:0~20:80の間で制御される
「RAV4」のハイブリッドモデルに搭載される4WDシステムは後輪を独立したモーター(最高出力54ps)で駆動する「E-Four」。前後輪間のトルク配分は100:0~20:80の間で制御される
ドライブモードセレクターの前方には「TRAILモード」のスイッチがレイアウトされる。同モードでは空転したタイヤを制動して反対側のタイヤにトルクを配分することで、スタック状態から脱出しやすくなる。
ドライブモードセレクターの前方には「TRAILモード」のスイッチがレイアウトされる。同モードでは空転したタイヤを制動して反対側のタイヤにトルクを配分することで、スタック状態から脱出しやすくなる。
パワーユニットは2.5リッター直4エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド。リアモーターも含めたシステム最高出力は222ps。
パワーユニットは2.5リッター直4エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド。リアモーターも含めたシステム最高出力は222ps。
テスト車の「RAV4ハイブリッドG」にはダンロップのオンロードSUV向けタイヤ「グラントレックPT30」が装着されていた。
テスト車の「RAV4ハイブリッドG」にはダンロップのオンロードSUV向けタイヤ「グラントレックPT30」が装着されていた。

軽快なRAV4、重厚なCR-V

「CR-V」の4WDシステムは前輪の滑りを検知して後輪にトルクを配分する「リアルタイムAWD」。伝達機構のクラッチはモーターによって制御する。
「CR-V」の4WDシステムは前輪の滑りを検知して後輪にトルクを配分する「リアルタイムAWD」。伝達機構のクラッチはモーターによって制御する。
「CR-V」には「スポーツ」「エコ」「EV」の3つのドライブモードが用意される。4WDシステムを手動で制御する機構は備わっていない。
「CR-V」には「スポーツ」「エコ」「EV」の3つのドライブモードが用意される。4WDシステムを手動で制御する機構は備わっていない。
パワーユニットは2リッター直4エンジンに2つのモーターを組み合わせた「スポーツハイブリッドi-MMD」。エンジンが駆動を担当するのは高速巡航時のみで、モータードライブが基本となる。
パワーユニットは2リッター直4エンジンに2つのモーターを組み合わせた「スポーツハイブリッドi-MMD」。エンジンが駆動を担当するのは高速巡航時のみで、モータードライブが基本となる。
テスト車の「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」にはブリヂストンのプレミアムSUV向けタイヤ「デューラーH/L33」が装着されていた。
テスト車の「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」にはブリヂストンのプレミアムSUV向けタイヤ「デューラーH/L33」が装着されていた。
山道を走ってみると、違いが鮮明だった。RAV4が軽快な動きを見せるのに対し、CR-Vには重厚さがある。スペックでは言い表せないような違いがあった。スポーティーさではRAV4が勝り、安定感ではCR-Vに軍配が上がる。好みの分かれるところだろう。

2台並べてエンジンルームを見ると、RAV4のほうがはっきりとエンジンの位置が低かった。見てわかるほどだから、重心の低さに貢献しているはずである。「カムリ」をベースにした低重心プラットフォームの恩恵なのだろうか。TNGAはトヨタ車の走行性能を全体的にボトムアップさせている。

CR-Vは1.5リッター直4直噴ターボ版にも乗ったことがある。正直に言って、パワーは物足りなかった。エンジンの回転が上がるばかりでなかなか加速せず、CVTの振る舞いにじれったい思いをした記憶がある。ターボ版でも街なかや高速道路ではさほど不満はなかったが、たまにはスポーティーに走りたいというならばハイブリッド車を選んだほうがいい。

燃費はRAV4のほうが良好な数値を示した。重量を考えると、どちらも優秀な成績である。エコ性能は、欧米のSUVに対して日本車が共通して持つアドバンテージだろう。パワフルさと低燃費を両立させていることに、もはや驚きはない。

「CR-V」の4WDシステムは前輪の滑りを検知して後輪にトルクを配分する「リアルタイムAWD」。伝達機構のクラッチはモーターによって制御する。
「CR-V」の4WDシステムは前輪の滑りを検知して後輪にトルクを配分する「リアルタイムAWD」。伝達機構のクラッチはモーターによって制御する。
「CR-V」には「スポーツ」「エコ」「EV」の3つのドライブモードが用意される。4WDシステムを手動で制御する機構は備わっていない。
「CR-V」には「スポーツ」「エコ」「EV」の3つのドライブモードが用意される。4WDシステムを手動で制御する機構は備わっていない。
パワーユニットは2リッター直4エンジンに2つのモーターを組み合わせた「スポーツハイブリッドi-MMD」。エンジンが駆動を担当するのは高速巡航時のみで、モータードライブが基本となる。
パワーユニットは2リッター直4エンジンに2つのモーターを組み合わせた「スポーツハイブリッドi-MMD」。エンジンが駆動を担当するのは高速巡航時のみで、モータードライブが基本となる。
テスト車の「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」にはブリヂストンのプレミアムSUV向けタイヤ「デューラーH/L33」が装着されていた。
テスト車の「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」にはブリヂストンのプレミアムSUV向けタイヤ「デューラーH/L33」が装着されていた。

販売面での差はどこでついた?

「RAV4ハイブリッドG」では荷室のデッキボードの裏面が樹脂(表面はカーペット)になっており、水にぬれたものを積むときなどに役立つ。
「RAV4ハイブリッドG」では荷室のデッキボードの裏面が樹脂(表面はカーペット)になっており、水にぬれたものを積むときなどに役立つ。
リアシートの背もたれをすべて倒したところ。シートバックの部分にはわずかに傾斜が残っている。
リアシートの背もたれをすべて倒したところ。シートバックの部分にはわずかに傾斜が残っている。
「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」は、荷室側面のレバー操作で後席の背もたれを倒すことができる。
「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」は、荷室側面のレバー操作で後席の背もたれを倒すことができる。
後席の背もたれをすべて倒すと、ほぼフラットといえる空間が広がる。低床設計と相まって使い勝手がいい。
後席の背もたれをすべて倒すと、ほぼフラットといえる空間が広がる。低床設計と相まって使い勝手がいい。
細かいポイントも見てみよう。後席を倒して荷室を拡大できるのはもちろんだが、現れる床面の形状に差がある。CR-Vのほうがはっきりとフラットになるのだ。さらに、荷室の左右に備わるレバーでシートを倒すことができるのが便利である。対するRAV4は、床面が低くて奥行きがある。荷物の出し入れがしやすいのはRAV4だ。

RAV4は荷室に100V・1500Wのコンセントがあった。アウトドアでの調理などにはありがたい装備である。スマホの充電などに使えるUSBソケットは、RAV4は2.1Aが前後に2つずつで、CR-Vは2.5Aが同じく2つ。細かすぎて書いていてイヤになるが、コンセプトが同じでサイズもパワーユニットの実力も似通っているのだから、2台に大きな違いが生まれないのは当然だ。

しかし、販売面では差がついているように見える。RAV4は発売1カ月で月販目標3000台の8倍にあたる約2万4000台の受注があったというが、CR-Vにはそんな景気のいい話は聞こえてこない。明暗を分けた要因は何だったのだろうか。

インテリアのイメージなど、アメリカンな感覚はCR-Vのほうがストレートに伝わる。おおらかさが大ざっぱと受け取られてしまったのかもしれない。RAV4は日本車的なおもてなし感が強く表れているようだ。ワイルドさを見せながらも街なかで普通に乗りたいユーザーにとっては、RAV4のわかりやすい上質感が好ましく思えた可能性がある。

「RAV4ハイブリッドG」では荷室のデッキボードの裏面が樹脂(表面はカーペット)になっており、水にぬれたものを積むときなどに役立つ。
「RAV4ハイブリッドG」では荷室のデッキボードの裏面が樹脂(表面はカーペット)になっており、水にぬれたものを積むときなどに役立つ。
リアシートの背もたれをすべて倒したところ。シートバックの部分にはわずかに傾斜が残っている。
リアシートの背もたれをすべて倒したところ。シートバックの部分にはわずかに傾斜が残っている。
「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」は、荷室側面のレバー操作で後席の背もたれを倒すことができる。
「CR-VハイブリッドEX・マスターピース」は、荷室側面のレバー操作で後席の背もたれを倒すことができる。
後席の背もたれをすべて倒すと、ほぼフラットといえる空間が広がる。低床設計と相まって使い勝手がいい。
後席の背もたれをすべて倒すと、ほぼフラットといえる空間が広がる。低床設計と相まって使い勝手がいい。

ファッションにもクルマにも通じるもの

WLTCモードの燃費値は「CR-V」が20.2km/リッターで、「RAV4」が20.6km/リッター。360kmあまりを走った今回のテストの満タン法の燃費値はCR-Vが13.8km/リッターで。RAV4が16.3km/リッターだった。
WLTCモードの燃費値は「CR-V」が20.2km/リッターで、「RAV4」が20.6km/リッター。360kmあまりを走った今回のテストの満タン法の燃費値はCR-Vが13.8km/リッターで。RAV4が16.3km/リッターだった。
両車とも先進安全装備は充実しており、渋滞追従機能付きACCやステアリングアシスト、誤発進抑制制御、夜間の歩行者にも対応する緊急自動ブレーキなどを標準装備する。
両車とも先進安全装備は充実しており、渋滞追従機能付きACCやステアリングアシスト、誤発進抑制制御、夜間の歩行者にも対応する緊急自動ブレーキなどを標準装備する。
「CR-V」は高めの価格設定のため装備が充実しているのが特徴。写真の7インチスクリーンのカーナビは全車に標準装備となる。
「CR-V」は高めの価格設定のため装備が充実しているのが特徴。写真の7インチスクリーンのカーナビは全車に標準装備となる。
「RAV4」はエントリーグレード(ガソリンのFF車)が260万8200円と、間口の広い価格設定。オプション装備は数多くラインナップされている。写真の9インチの「T-Connectナビ」の価格は23万9760円。
「RAV4」はエントリーグレード(ガソリンのFF車)が260万8200円と、間口の広い価格設定。オプション装備は数多くラインナップされている。写真の9インチの「T-Connectナビ」の価格は23万9760円。
価格も購入時には気になるだろう。車両本体価格で見ると、RAV4のほうが50万円ほど安いのだ。CR-Vは素のままで装備が充実しているので、オプションを加えた試乗車では差が縮まる。ただ、まずは本体価格で比べてしまうものであり、心理的にはRAV4のほうが選択肢に入れやすい。ホンダはヴェゼルの販売を維持するためにCR-Vの価格をあえて高めに設定したという話もあるが、トータルで得をしたのかどうかはよくわからない。

RAV4には「好きにまみれろ!」、CR-Vには「OPEN MIND VEHICLE」というキャッチコピーが付けられている。カタチにとらわれない自由なクルマというメッセージは同じだ。今や乗用車のメインストリームとなったSUVは、市街地から高速道路、アウトドアまでどこでも快適に走れるオールマイティーなクルマという地位にある。

中でもミドルサイズのクロスオーバーSUVは最新のトレンドといっていい。この2台以外にも、「マツダCX-5」「日産エクストレイル」「スバル・フォレスター」と日本勢は多士済々だ。アメリカで生まれたSUVの文化は、日本で磨き上げられることで新たな価値を獲得した。オリジナルをつくることは苦手でも、改良と改善、付加価値の付与は大の得意とするところである。

前編の冒頭で触れた『AMETORA』は、日本人がアメリカのアイビーやジーンズを取り入れ、いかに洗練させていったかをたどって分析した本である。

「重要なのは、日本人がアメリカのスタイルの上に、奥深い、新たな意味を積み上げたこと――そしてその過程でオリジナルを護り、強化してくれたおかげで、双方が利益を得たことだった」

これはファッションについて書かれた言葉だが、同じことがクルマにも当てはまるのだ。

(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

WLTCモードの燃費値は「CR-V」が20.2km/リッターで、「RAV4」が20.6km/リッター。360kmあまりを走った今回のテストの満タン法の燃費値はCR-Vが13.8km/リッターで。RAV4が16.3km/リッターだった。
WLTCモードの燃費値は「CR-V」が20.2km/リッターで、「RAV4」が20.6km/リッター。360kmあまりを走った今回のテストの満タン法の燃費値はCR-Vが13.8km/リッターで。RAV4が16.3km/リッターだった。
両車とも先進安全装備は充実しており、渋滞追従機能付きACCやステアリングアシスト、誤発進抑制制御、夜間の歩行者にも対応する緊急自動ブレーキなどを標準装備する。
両車とも先進安全装備は充実しており、渋滞追従機能付きACCやステアリングアシスト、誤発進抑制制御、夜間の歩行者にも対応する緊急自動ブレーキなどを標準装備する。
「CR-V」は高めの価格設定のため装備が充実しているのが特徴。写真の7インチスクリーンのカーナビは全車に標準装備となる。
「CR-V」は高めの価格設定のため装備が充実しているのが特徴。写真の7インチスクリーンのカーナビは全車に標準装備となる。
「RAV4」はエントリーグレード(ガソリンのFF車)が260万8200円と、間口の広い価格設定。オプション装備は数多くラインナップされている。写真の9インチの「T-Connectナビ」の価格は23万9760円。
「RAV4」はエントリーグレード(ガソリンのFF車)が260万8200円と、間口の広い価格設定。オプション装備は数多くラインナップされている。写真の9インチの「T-Connectナビ」の価格は23万9760円。

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