【試乗記】ホンダ・フリードG Honda SENSING(7人乗り)(FF/CVT)

ホンダ・フリードG Honda SENSING(7人乗り)(FF/CVT)【試乗記】
ホンダ・フリードG Honda SENSING(7人乗り)(FF/CVT)

打倒! N-BOX

取り回しのしやすさと利便性の高さで人気を博す、ホンダのコンパクトミニバン「フリード」がマイナーチェンジ。新デザインとなった改良モデルは、従来型からどのような進化を遂げたのか? ベーシックな1.5リッターのガソリン車に試乗し、その出来栄えを確かめた。

軽ばかり売れても困る

2019年10月にマイナーチェンジを受けた「フリード」。標準車のフロントマスクは、アッパーグリルを廃したシンプルな意匠となった。
2019年10月にマイナーチェンジを受けた「フリード」。標準車のフロントマスクは、アッパーグリルを廃したシンプルな意匠となった。
インテリアは広々とした視界が特徴。マイナーチェンジモデルでは、ダッシュボードの装飾パネルが、白木目調からブラウンもしくはブラックのウオールナット調に変更されている。
インテリアは広々とした視界が特徴。マイナーチェンジモデルでは、ダッシュボードの装飾パネルが、白木目調からブラウンもしくはブラックのウオールナット調に変更されている。
標準車のシート表皮には、モカのファブリック(写真)と、ブラックのコンビ表皮(合成皮革+ファブリック)の2種類が用意される。
標準車のシート表皮には、モカのファブリック(写真)と、ブラックのコンビ表皮(合成皮革+ファブリック)の2種類が用意される。
いま一番売れているホンダ車は、軽の「N-BOX」である。ホンダ車No.1どころか、ここ26カ月(2019年10月まで)、白ナンバーも含めて日本で一番売れている。

しかしそこがまさにホンダの悩みの種といえる。安い軽ばかりでは収益が悪くなる一方だからだ。雪崩のような軽シフトは避けたい。白ナンバーチームも売れてもらわないと困る。そんな期待を背負ってマイナーチェンジしたのが1.5リッター級コンパクトミニバン、フリードである。もともとフリードは販売的にも健闘していたが、3年ぶりのブラッシュアップで“ストップN-BOX”も狙いたいところだろう。

機構的に大きな変更はないが、フェイスリフトが施され、安全運転支援システムの「ホンダセンシング」が全グレードに装備された。軽ハイトワゴンでは両立しなさそうなちょっぴりSUVルックの新グレード「クロスター」も加わった。

試乗したのは、7人乗りの「G Honda SENSING」。全車標準装備なら、もう「Honda SENSING」と名乗らなくてもいいんじゃないの? と思うが、名乗りたいなら仕方ない。ハイブリッドではないフリードの上級モデルである。ちなみに、ひとこえ40万円アップするハイブリッドの販売比率は、約半分だという。ナマの1.5リッターエンジンモデルも重要な品ぞろえである。

2019年10月にマイナーチェンジを受けた「フリード」。標準車のフロントマスクは、アッパーグリルを廃したシンプルな意匠となった。
2019年10月にマイナーチェンジを受けた「フリード」。標準車のフロントマスクは、アッパーグリルを廃したシンプルな意匠となった。
インテリアは広々とした視界が特徴。マイナーチェンジモデルでは、ダッシュボードの装飾パネルが、白木目調からブラウンもしくはブラックのウオールナット調に変更されている。
インテリアは広々とした視界が特徴。マイナーチェンジモデルでは、ダッシュボードの装飾パネルが、白木目調からブラウンもしくはブラックのウオールナット調に変更されている。
標準車のシート表皮には、モカのファブリック(写真)と、ブラックのコンビ表皮(合成皮革+ファブリック)の2種類が用意される。
標準車のシート表皮には、モカのファブリック(写真)と、ブラックのコンビ表皮(合成皮革+ファブリック)の2種類が用意される。

より自然になったCVTの制御

走りに関する点では、ガソリン車のCVT制御を変更。下り坂などで、ブレーキ操作に応じて自動でギア比を落とし、エンジンブレーキを利かせるダウンシフト制御が採用された。
走りに関する点では、ガソリン車のCVT制御を変更。下り坂などで、ブレーキ操作に応じて自動でギア比を落とし、エンジンブレーキを利かせるダウンシフト制御が採用された。
パワートレインには1.5リッターガソリンエンジン(写真)と、1.5リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニットの2種類が用意される。
パワートレインには1.5リッターガソリンエンジン(写真)と、1.5リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニットの2種類が用意される。
「フリード」にはアダプティブクルーズコントロールや各種予防安全装備からなる運転支援システム「ホンダセンシング」が全車標準装備となる。
「フリード」にはアダプティブクルーズコントロールや各種予防安全装備からなる運転支援システム「ホンダセンシング」が全車標準装備となる。
フリードに乗るのは、現行モデル登場時以来だから、3年ぶりだ。そのときも今回と同じ7人乗りのG Honda SENSINGだった。走りだしの第一印象は以前よりちょっとロードノイズが大きくなったように思えたが、走り進むうちに気にならなくなった。

129PSの1.5リッター4気筒に対して、車重は1360kg。決して余裕のある馬力荷重ではないが、動力性能に不満はない。街中ではキビキビ走るし、高速道路でもパワー不足を感じることはない。

CVTには新たに“ブレーキ操作ステップダウン制御”が組み込まれた。下り坂でフットブレーキ操作に連動して、CVTがステップダウンシフトを行う。峠の下りで試してみると、無段変速機なのに、右足のブレーキングに呼応してたしかにシフトダウンが起き、自然なエンジンブレーキがかかる。そのほか、フル加速したときにエンジンが高回転に張りついたままになるCVT特有の性癖も、以前より気にならなくなった。ひとことで言うと、普通の有段ATっぽくなったと感じた。

ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)がリファインされて、自動的な加減速がよりスムーズになったという。ただし、このACCは全車速対応型ではなく、下限速度は30km/h。渋滞時には使えないし、ETCゲートを右足フリーの追従走行で通過することもできない。

ひとつ気になったことといえば、高速道路でACCとLKAS(車線維持支援システム)を使っていると、ダッシュボードの奥でカチカチという、リレーが断接するような小さな音が聞こえた。

走りに関する点では、ガソリン車のCVT制御を変更。下り坂などで、ブレーキ操作に応じて自動でギア比を落とし、エンジンブレーキを利かせるダウンシフト制御が採用された。
走りに関する点では、ガソリン車のCVT制御を変更。下り坂などで、ブレーキ操作に応じて自動でギア比を落とし、エンジンブレーキを利かせるダウンシフト制御が採用された。
パワートレインには1.5リッターガソリンエンジン(写真)と、1.5リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニットの2種類が用意される。
パワートレインには1.5リッターガソリンエンジン(写真)と、1.5リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニットの2種類が用意される。
「フリード」にはアダプティブクルーズコントロールや各種予防安全装備からなる運転支援システム「ホンダセンシング」が全車標準装備となる。
「フリード」にはアダプティブクルーズコントロールや各種予防安全装備からなる運転支援システム「ホンダセンシング」が全車標準装備となる。

ユーザーフレンドリーなクルマとしての課題

2列目に3座のベンチシートが用意されるのは標準車のみ。クロスオーバースタイルの新モデル「クロスター」は、全車2座のキャプテンシートとなる。
2列目に3座のベンチシートが用意されるのは標準車のみ。クロスオーバースタイルの新モデル「クロスター」は、全車2座のキャプテンシートとなる。
サードシートは座面、背もたれともに厚みのあるつくりとなっているが、着座位置がいささか低いのが気になった。
サードシートは座面、背もたれともに厚みのあるつくりとなっているが、着座位置がいささか低いのが気になった。
サードシートの格納は左右跳ね上げ式。セカンドシートは、キャプテンシート仕様では前にスライドするだけだが、ベンチシート仕様にはタンブルフォールディング機構が備わっている。
サードシートの格納は左右跳ね上げ式。セカンドシートは、キャプテンシート仕様では前にスライドするだけだが、ベンチシート仕様にはタンブルフォールディング機構が備わっている。
2列シートの「フリード+」もあるが、ふつうのフリードにはサードシートが標準装備される。2列目をひとり一席ヒジかけ付きのキャプテンシートにしたのが6人乗り。一般的なセカンドシートを備え、2+3+2で座らせるのが7人乗りだ。いずれにしても、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」と同じ4.3mのボディー全長に3列席を与えている。3.4mの軽自動車には逆立ちしてもマネのできないコンパクトミニバンのアドバンテージである。

ただし、このサイズだからサードシートは補助イス的だ。2列目席は10cmほど前後スライドするから、レッグルームは塩梅できるとしても、イスの脚が短いので、大人だと体育座りの姿勢をしいられる。子ども用と割り切ったほうがいいだろう。

サードシートをなくして荷室として使いたいときは、5:5分割のイスを左右の壁に跳ね上げてストラップでとめる。先代から続いている格納方式だが、現行フリードのサードシートはクッションも背もたれもかなり分厚いので、場所を食う。壁にかかったイスとイスのあいだは65cmしかない。高さのある嵩モノを積むときはいかにも邪魔くさい。格納するときも、そこそこの力仕事だし。

その点、ガチンコライバルの「トヨタ・シエンタ」は、本来、ホンダが得意とする床下ダイブダウン方式(セカンドシートの下にサードシートが格納される)を採用し、3列レイアウトと荷室の使い勝手を両立させている。車内に大小12カ所の収納スペースを持つと謳うユーザーフレンドリーなフリードとしては、今後の課題だろう。

2列目に3座のベンチシートが用意されるのは標準車のみ。クロスオーバースタイルの新モデル「クロスター」は、全車2座のキャプテンシートとなる。
2列目に3座のベンチシートが用意されるのは標準車のみ。クロスオーバースタイルの新モデル「クロスター」は、全車2座のキャプテンシートとなる。
サードシートは座面、背もたれともに厚みのあるつくりとなっているが、着座位置がいささか低いのが気になった。
サードシートは座面、背もたれともに厚みのあるつくりとなっているが、着座位置がいささか低いのが気になった。
サードシートの格納は左右跳ね上げ式。セカンドシートは、キャプテンシート仕様では前にスライドするだけだが、ベンチシート仕様にはタンブルフォールディング機構が備わっている。
サードシートの格納は左右跳ね上げ式。セカンドシートは、キャプテンシート仕様では前にスライドするだけだが、ベンチシート仕様にはタンブルフォールディング機構が備わっている。

コストパフォーマンスが素晴らしい

メータ類はダッシュボードの奥まった位置に配置。ドライバーの視野をさえぎらないよう、平たい横長のデザインとなっている。
メータ類はダッシュボードの奥まった位置に配置。ドライバーの視野をさえぎらないよう、平たい横長のデザインとなっている。
豊富に用意された収納スペースも「フリード」の魅力。ダッシュボードのドリンクホルダーとテーブルは格納式で、使わないときは邪魔にならないようしまっておける。
豊富に用意された収納スペースも「フリード」の魅力。ダッシュボードのドリンクホルダーとテーブルは格納式で、使わないときは邪魔にならないようしまっておける。
標準車のボディーカラーは全9色。テスト車には、有償色の「プラチナホワイト・パール」が採用されていた。
標準車のボディーカラーは全9色。テスト車には、有償色の「プラチナホワイト・パール」が採用されていた。
運転席にいて、フリードの一番いいところは、運転のしやすさである。発売が延び延びになっている新型「フィット」も「気持ちのいい視界」が開発テーマとされるが、フリードも負けていない。低い位置にあるダッシュボードのおかげで、視野の天地がたっぷりしている。左右のグラスエリアも広い。運転席に座ると、“肉眼”より視界がいいんじゃないかと感じるクルマである。

ハンドルは街中だとすごく軽いが、速度を上げると適度な重さになる。今回、別件で直前にN-BOXに乗っていた。フリードで高速道路に上がると、やっぱり軽とは違うなあと実感した。腰から下の安定感が格違いだ。それは安心感の余裕につながる。

2台の価格を調べてびっくりした。7人乗りフリードG・Honda SENSINGは218万2400円。一方、軽もいまや200万円コースが珍しくないのだが、N-BOXの人気グレード「カスタムEXターボ」という軽自動車も199万6500円する。軽しか買ってもらえないなら、軽を高く売るしかない。消費者からみると、そんなふうにも感じられる状況にあって、軽との波打ち際にいるコンパクトミニバンはいまコスパ赤丸急上昇中ではないか。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

メータ類はダッシュボードの奥まった位置に配置。ドライバーの視野をさえぎらないよう、平たい横長のデザインとなっている。
メータ類はダッシュボードの奥まった位置に配置。ドライバーの視野をさえぎらないよう、平たい横長のデザインとなっている。
豊富に用意された収納スペースも「フリード」の魅力。ダッシュボードのドリンクホルダーとテーブルは格納式で、使わないときは邪魔にならないようしまっておける。
豊富に用意された収納スペースも「フリード」の魅力。ダッシュボードのドリンクホルダーとテーブルは格納式で、使わないときは邪魔にならないようしまっておける。
標準車のボディーカラーは全9色。テスト車には、有償色の「プラチナホワイト・パール」が採用されていた。
標準車のボディーカラーは全9色。テスト車には、有償色の「プラチナホワイト・パール」が採用されていた。

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