乗客とドライバーをマッチングさせるライドシェア、タクシーをさらに進化させる配車アプリ

現在世界ではライドシェアという少人数の公共交通機関が生まれている。ライドシェアとは乗客とドライバーをスマートフォン経由でマッチングさせることで、街を走っている自家用車と、タクシーに変わる移動手段を必要としている乗客の両方のニーズを満たす新しい交通サービスだ。

その一方で、国によってはライドシェアが法律的に問題になる場合も。日本においても、プロのタクシー乗務員ではなく自家用車を運転するドライバーが営業することは、法律的には「白タク」にあたるため、ライドシェアは法律的に認められていない。その一方で、タクシーと乗客をマッチングさせる配車アプリが登場し、乗客の利便性を向上させる取り組みが始まっている。

ライドシェアとはITを利用して乗客とドライバーをマッチングさせる仕組みのこと

ライドシェアとは、乗る(ライド)を共有(シェア)するという意味で、街中を走っている車を、乗客の輸送に活用するというサービスのことを意味している。グローバルに大規模にいち早くサービスを開始したのが、米国のUber(ウーバー)社で、乗客のスマートフォンとUberと契約したドライバーのスマートフォンの両方にアプリを入れ、スマートフォンの位置情報(GPSや携帯電話の基地局などからそれぞれの位置が特定される)、乗客の目的地を参考にして、コンピュータが乗客とドライバーをマッチングさせるというのが大まかな仕組みとなる。

これまでの少人数を目的地に輸送する公共交通サービスの主役はタクシーだった。タクシーは駅や空港といった大人数の公共交通機関でお客が来るのを待ったり、街中で空車状態のまま流しながら乗客を見つけたり、あるいは乗客がタクシーの予約センターに電話することで必要としている乗客のもとに駆けつけたりという仕組みで乗客を拾っていた。特に街中を流している状態では乗客が見つかるかどうかは偶然に左右されるため、タクシー会社としても効率がいいとは言えない状況だった。

そこでライドシェアではそうした配車の仕組みにITを活用することで効率を上げる仕組みが導入された。まず乗客は自分のスマートフォンのライドシェアのアプリを立ち上げる。そうするとライドシェアのアプリは、スマートフォンの「位置情報」(GPSやWi-Fiなどを利用してスマートフォンがある場所を特定する仕組みのこと)を利用して、ユーザーが今どこにいるのかを判別する。そしてユーザーが目的地を設定すると、それらの情報をライドシェアの企業のコンピュータへ送信する。

ITを活用することで、利用者とその近くにいる契約ドライバーをマッチングさせるライドシェア
ITを活用することで、利用者とその近くにいる契約ドライバーをマッチングさせるライドシェア

一方、ライドシェアと契約しているドライバーはライドシェアの企業から提供されているアプリを自分のスマートフォンへ導入する。すると、やはりスマートフォンからドライバーの位置情報が刻々とライドシェア企業のコンピュータへと常時送信され続ける。これらの情報を得たコンピュータは、乗客の位置情報と契約ドライバーの位置情報を照らし合わせてマッチングを行ない、近くにいるドライバーなどを選んで乗客のもとへ行かせる。あとはドライバーが乗客の元へ向かい、コンピュータが指し示したルート通りに乗客を送り届ける。

タクシードライバーではなく、Uberに登録した一般のドライバーが、自分の車で送迎するのがライドシェアの特徴
タクシードライバーではなく、Uberに登録した一般のドライバーが、自分の車で送迎するのがライドシェアの特徴

料金はあらかじめ乗客がアプリに登録しておいたクレジットカードなどで決済される。このため一切現金を利用する必要が無く、領収書もメールで送られるなどスマートな決済が実現するようになっている。

こうしたライドシェアは世界で初めて大規模にサービスを開始したのは米国のUberだが、既に米国では競合としてLyft社が参入しているほか、中国ではDiDi(滴滴)、シンガポールではGrabといったベンチャー企業が参入しており、地域に即したサービスが展開されている。

明朗会計、カンタン精算、そしていつ来るのか、いつ着くのかが可視化されたスマートなサービス

ライドシェアを乗客が利用する利点は3つある。1つ目は料金がタクシーに比べて明快になり、かつタクシーに比べて低価格になることだ。タクシーが当局などに定められたメーターを装着していても、遠回りのルートを走られるといった問題は避けられない。また、米国などのチップ文化の国では、料金に加えてチップを要求されることもあって、料金が不明朗というイメージを持たれることは少なくない。それに対して、ライドシェアではあらかじめルートなどは設定されており、それを元に料金が計算され、注文する前にユーザーに対して通知する形になっている。また、決済も含めてオンラインになっているので、全体的にコストを削減でき、多くの場合はタクシーを使うよりも安価な料金設定になっていることが多い。

2つ目のメリットは決済がすべてオンラインで済むことだ。タクシーでも日本や米国などでは電子マネーによる決済やクレジットカードによる決済に対応していることが少なくないが、それでも現金のみというタクシーが世界的に見れば圧倒的に多い。ライドシェアでは決済はすべてインターネット経由で完結する仕組み。いちいち現金やクレジットカードを出さないでいいし、領収書はメールで送られてくるので経費精算は楽になる。

スマホを使うことで、最寄りのドライバーを見つけられ、さらに目的地までのルートとその料金が事前に明確になり、決済まですべてオンラインで済ませられる
スマホを使うことで、最寄りのドライバーを見つけられ、さらに目的地までのルートとその料金が事前に明確になり、決済まですべてオンラインで済ませられる

3つ目のメリットとしては迎えの車が自分のところに来るまでの時間や目的地に到着するまでの時間が可視化されることだ。ライドシェアではスマートフォンアプリの地図に自分のところに向かっている車が今どのあたりまで来ているかが表示されるので、「そば屋の出前」状態でイライラすることはない。また、目的地に向かうときにも待ち合わせ相手におおよその到着時間を教えることができる。もちろん、渋滞などの状況により前後することも少なくないのだが、それでもいつ来るのかわからなくてイライラするというストレスがないのは快適だ。

国によってライドシェアは法律で禁止されており、タクシー会社がそれに変わるサービスを導入

現時点では日本においてはこうしたライドシェアはサービスインされていない。米国のUberは日本法人を作りサービスインを目指しているが、日本の現在の法律ではライドシェアのサービスはいわゆる「白タク」に相当するために、違法となってサービスできないのだ。このため、Uberが現在日本で行なっているのはライドシェアではなく、ハイヤーを呼び出すというライドシェアではないタクシー配車サービスだ。

日本における配車サービスでは、タクシーの運営会社「日本交通株式会社」のグループ会社となるJapanTaxi株式会社が提供しているタクシー配車アプリ「JapanTaxi」などがよく知られている。

タクシー配車アプリ「JapanTaxi」では、事前にルートやおよその金額を確認したり、あらかじめ日時や乗る場所を予約しておくこともできる
タクシー配車アプリ「JapanTaxi」では、事前にルートやおよその金額を確認したり、あらかじめ日時や乗る場所を予約しておくこともできる

こうしたタクシー配車アプリでは、従来はユーザーが配車センターに電話をしていたプロセスを、スマートフォンアプリに置き換えたものだ。タクシー配車アプリでも、やはりスマートフォンの位置情報をタクシー会社のコンピュータへ送信し、その周囲にいるタクシーとのマッチングを行なうことで、配車を実現する。ただし、日本のタクシー運賃は国土交通省から認可を受ける必要があるため、ライドシェアのように事前に決まるのではなく、タクシーに備え付けのメーターで決まる。この点は大きな違いだが、ユーザーが望めばタクシーが目的地に到着し確定した運賃をアプリに登録しておいたクレジットカードを利用して決済することも可能になっており、ライドシェアの使い勝手に近づきつつある。

地域は限られるがJapanTaxiアプリを使えば、QRコードを読み取ることで、降車前にスマホで決済を終えることもできる
地域は限られるがJapanTaxiアプリを使えば、QRコードを読み取ることで、降車前にスマホで決済を終えることもできる

このような状況は日本だけでなく,イギリスやフランス、ドイツ、韓国などUberが違法とされている国もある。そうした国では日本と同じようにタクシー配車サービスが地元のタクシー会社により提供されているなど、国や地域によって状況が異なっているのが現状だ。

[ガズー編集部]

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