【池原照雄の単眼複眼】マツダ、200万台体制へ脱・「一括企画」の商品開発とは?

マツダCX-5
◆2021年稼働の米新工場を機に本格成長を描く

マツダの小飼雅道社長は、4月27日の決算発表の席上、5年後の2023年度に200万台のグローバル販売を目指す中期の成長戦略を提示した。その実現のために商品開発でのアーキテクチャー(設計概念)は、同社の強みでもあった「一括企画」から、商品のサイズによって「スモール商品群」と「ラージ商品群」の2つに分ける手法へと転換する方針だ。これにより次世代マツダ車の魅力をどう高めていくのか、同社の持続的な成長力を左右する新たな開発手法が注目される。

マツダの2018年度(19年3月期)グローバル販売計画は166万2000台(前期比2%増)であり、200万台を狙う23年度にはこれを2割拡大させる。供給面でその裏付けとなるのが21年に稼働予定でトヨタ自動車とともに建設・運営する米国新工場である。これによってグローバルでの生産能力は、現在の180万台レベルから200万台(いずれもフル稼働時)へと拡大する。小飼社長は「米国新工場の稼働を契機に21年度以降の本格的成長を目指していく」と、力を込める。

そして、200万台への成長に欠かせないのが開発手法の見直しと決断した。マツダのこれまでの製品開発は、年150万台前後と生産規模がそう大きくない自動車メーカーならではの創意を凝らしたもので、トヨタなど大手も一目を置く「一括企画」という手法だった。同社では「コモンアーキテクチャー」とも呼んでいる。言い換えれば「汎用性のある設計概念」とでもなろうか。

◆120万台の「スモール商品群」と80万台の「ラージ商品群」に転換

コモンアーキテクチャーでは、5年から10年というレンジで先を読みながら実用化する(すべき)技術や、市場での受容性の高いモデルを描きながら、ひと括りで商品を企画する。そのうえで、車体やシャシーの骨格構造などは、全てのモデルで同一の考え方に基づいて設計し、サイズや味付けを変えて個々のモデルに展開していく。車種も生産量も少ないメーカーならではの効率的な開発だ。

マツダは06年から始めた生産現場の改善活動である「モノ造り革新」と、この「一括企画」を表裏一体で推進してきた。モデルは異なっても基本骨格や主要部品が相似形で設計されているので、生産設備も汎用機が多く使え、設備投資の削減や段取り時間の短縮などによってコスト競争力も高めることができた。その成果が表れるのは、同社の新技術群であるSKYACTIVを全面採用した12年2月発売の『CX-5』からで、13年3月期の赤字脱却やその後の着実なグローバル販売拡大へとつながった。

しかし、「一括企画」は「年120万台から160万台規模への成長を効率よく実現してきたが、台数が増えるに連れてさまざまな非効率も発生してきた」(小飼社長)という。とくにサイズの大きいクルマについては「パワートレインやボディー構造、シャシーのレイアウトといったレベルでの最適解を求めた時に、これまでのアーキテクチャーでは限界が見えてきた」(同)のだ。

このため、新たな開発手法としてモデルを「スモール商品群」と「ラージ商品群」に分離し、それぞれのアーキテクチャーを導入していくこととした。スモールは『CX-3』や新たに開発するCXモデルなどを中心とし、一方のラージは『CX-5』を中心に『CX-8』や『CX-9』などを対象とする。年間販売が200万台に達する時点では、スモールが120万台、ラージが80万台水準と想定している。

◆「まず、セダン系をしっかり造る」は不変

新手法は、同社でSKYACTIV第2世代と呼ぶ次世代商品群から導入し、その第1弾モデルは18年度末ごろに市場投入する。小飼社長によると米国工場で生産する車種はスモールに属するそうだ。ただし、「米国で販売するので、サイズはそんなに小さくはない」ともしており、新開発するCX系が有力視される。

『アクセラ』(海外ではマツダ『3』)などセダン系も、それぞれの商品群に区分けされるが、詳細はまだ明らかにしていない。ただし、2つのアーキテクチャーでは「セダン系をしっかり開発するところからスタートするのはこれまでと変わりない」(小飼社長)という。「一括企画」ではアクセラを中核として開発を進め、他のモデルに展開していったが、それと同様の手法とする。小飼社長は「われわれは欧州のプレミアムブランドに勝てる操縦安定性能や走行性能、人馬一体感を目指しており、まずセダン系でしっかりした足回りを造っていく」というアプローチは「不変」と表明した。

新アーキテクチャーによるスモール商品群には台数の成長、ラージ商品群には高付加価値とブランド力向上を託す。収益の伴う200万台への道筋に、脱・「一括企画」は避けて通れないプロセスだろうが、モデルの増加による非効率やブランドイメージの拡散といったリスクは、しっかりコントロールしなければならない。

(レスポンス 池原照雄)

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