トヨタ クラウン 新型、ブランド統合と先進技術搭載で内外装はどう進化した?

トヨタ クラウン(プロトタイプ)
すでに2018年4月下旬から新型車両の概要を明らかにして予約受注も開始している15代目となる新型『クラウン』。

6月26日全国7箇所で開催される 「The Connected Day」、これが新型クラウンの発表日になるはずだ。それに先立ち、クローズドコース限定ではあるがプロトタイプの試乗会が開催された。

◆“最もクラウンを知る男”が新型も総括

まず最初にCE(チーフエンジニア)を務める秋山晃氏について説明したい。氏は1986年入社でこれまでクラウン、『アリスト』、『セルシオ』のNV(音と振動)周りの担当、その後 MCプラットフォームの開発を務め、製品企画として13&14代目のクラウンを担当。

秋山氏に最初に会ったのは14代目の登場時で当時の山本卓CEの時だった。すでに山本CEの元で開発主査として活躍していたが14代目のマイナーチェンジ時にCEに昇格。クラウンコンセプトの事前映像などで15代目クラウンを総括することはわかっていたが、3代にわたってトヨタの基幹車種のひとつであるクラウンを担当することは珍しい。ましてや今回の新型は時代の要求とともに大きな変革も求められる。穏やかかつ爽やかな印象を持つ秋山CEだが実際話をするといつも情熱的でエネルギッシュ。15代目を総括するのも当然のことであり、期待も高まる。

◆大胆なブランド統合…コンセプト

会の冒頭、秋山CEから新型クラウンにかける思いについて説明を受けた。その思いとは「世界基準で全てを凌駕するクルマを作る」ということだ 。

最大の特徴はこれまでフォーマルなロイヤル、ハンドリング性能を高めたアスリート、そしてホイールベースを75 mm拡大したショーファー仕様のマジェスタの3種類を設定していたが、なんと今回は標準仕様とスポーティなRSの2種類に設定。クラウンとしては大胆にもそれを1台に集約、それが新しい「ザ・クラウン」なのである。

アスリートに関してはまだブランドとしては若く、マジェスタに関しては後述するが、40年近くにわたりクラウンブランドの代表格でもあったロイヤルサルーンを廃止するということはなかなかの英断である。ゆえにその意気込みは自ずと伝わってくる。

◆かつての伝統もあっさり転換!?…エクステリア

新型クラウンは2軸による車作りを提案している。一つが「デザイン・走り・安全性能の進化」そしてもう一つが「クルマの機能を拡張するコネクティッド」だ。「コネクティッド」に関しては6月26日に発表されるため、ここではキャッチのみで詳細については語られることはなかったが、まあお楽しみというところだろう。ただ過去2016年11月には『プリウスPHV』が発売される直前に行われた記者会見でトヨタのコネクティッド戦略についての将来像が語られた事があった。それらを実際の車両やインフラに組み込み新しいサービスを展開するのではないかと予想できる

デザインに関しての最大の特徴は東京モーターショー2017でコンセプトモデルが展示された時も話題となったクラウン初となる6ライトウインドウである。これも含めフロント及びリアのボディの絞り込みなど全体としては今まで重厚な印象のあったボディをスポーティに、また洗練されたイメージに仕上げているのが特徴と言っていいだろう。またヘッドランプに関しても現在のトレンドである LEDの積極採用や AHS(アダプティブ・ハイビーム・システム)の採用など標準/RSともデザインは異なるものの共通のシステムを組み込んでいる。

クラウンは言わずと知れた日本専用車両であるゆえに、これまでのコアユーザーも含めボディをいたずらに大型化する手法はマーケットを考えた場合得策ではない。プラットホームは元々レクサス『LS』に採用されていた GLAプラットフォームを改良したもの。1800mmという全幅や最小回転半径5.3m(タイヤサイズにより異なる)はそのあらわれだろう。開発者に話を聞くといわゆる“GLAナロー”という考え方で日本市場に向き合ったクルマ作りを行っているという 。

この他にも秋山CEは日本人の体格にあったドアハンドルの位置や高さ、そして角度。手にぴったりフィットする断面形状や空力性能を考慮した外形などをあげている。またドアパネルの発生面積を大きくすることでドアを閉めた時の低音を増幅する構造も組み込んでいると言う。ドアは乗降時に常に開け閉めするもの。「欧州車などはドアの閉めた時の音がいいんだよね」としたり顔でのたまふ人もいるが、そんな人にも一度聞いて貰いたい仕上がりだ。細かい部分ではあるが、そういう部分への配慮もクラウンユーザーにとっては重要なことなのである。

◆ダブル画面の新インフォテインメントシステムを採用…インテリア

インテリアも大きな変化を遂げている。乗り込んでまず目に飛び込んでくるのはインパネ上部とセンターコンソール中央に設置された2つのディスプレイである。パッと見た感じのサイズは1面あたり8インチ位だろうか? 大画面化が当たり前になってきている昨今のインフォテイメント事情だがセンターコンソール上部に設置されたディスプレイは遠視点で見やすく、また手前に設定されたディスプレイはダイレクトタッチを可能にすることで使いやすさを向上させている。

昨今の流れからすれば高級車はセンターコンソール手前にいわゆるコマンドコントロールの類を設定するのがトレンドの一つであった。欧州の輸入車勢もそうだが、レクサスブランドの車両にもリモートタッチと呼ばれるタッチパッド系デバイスが採用されているが、クラウンというクルマの性格から考えた場合、手元操作と実際の視点合わせを同時に行う際には何らかの乖離が発生する可能性がある。要はダイレクトに画面にタッチすることが一番わかりやすい。いくら若返りを図るとはいえ平均年齢が65歳を超えるこれまでのクラウンのユーザーも重要だ。そのユーザーに対し未来的なUI(ユーザーインターフェース)は少々ハードルが高いのではないだろうか。つまりこれまでの視線移動による焦点合わせの問題や操作性におけるネガの部分を解消する発想と言えるだろう。

同時に新規開発のメーターは スピード&タコメーターが浮き上がったようなデザインで先進感を表現していると言う。過去クラウンにはフル液晶メーターを採用した時期もあった。また昨今の高級車は同様の手法でナビゲーション画面も含めた多彩な表示機能を採用するなど先進性をアピールしている、しかし新型クラウンにはそれらの装備は一切設定されていないようだ。ではそれは何故か? 筆者の分析では、前述したようにクラウンのユーザー層を考えた場合、先進的な装備も重要だが、最も求められるのは高い(わかりやすい)視認性だというだ。液晶パネルの場合、表示される項目によっては焦点が合わせにくいと言う欠点も存在する。失礼を承知で言わせていただければ老眼の人がスマホを見づらいというのに近い感覚であろう。

センターコンソールに設置されているカップホルダーにも注目だ。通常はフラットなデザインだが飲み物を上から押し込むようにすることでホールドしてくれる。また使わない時はフォルダー内側面のボタンを押すとスーッと上がって元の位置に戻る。実はこの動きが非常に心地いい。トヨタは元々この手の装備に関してこだわりが強く、また実際作り込みも上手い。助手席前のグローブボックスの開閉も同様で、かゆいところに手が届くと言うかちょっと古いが「お・も・て・な・し」の心がユーザーのちょっとした満足度を高めることをよくわかっているということだろう。

(レスポンス 高山 正寛)

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