事故が起きたら自動でドクターヘリ要請、D-Call Netの強みと弱点【岩貞るみこの人道車医】

ドクターヘリ
【ドクターヘリと交通事故】2019年3月28日、緊急自動通報システムD-Call Netに、新たに、スバル、日産、マツダの車両が加わった。これで対応車種を持つ自動車メーカーは、以前から対応していたトヨタ、ホンダに加えて5メーカーになったわけである。

◆D-Call Netってなに?

D-Call Netは、乗用車が関係する交通事故が発生したときに、119番通報を介さずにドクターヘリの出動が要請されるシステムである。Dは、ドクターのDというわけだ。

ドクターヘリが医師と看護師を患者のもとに運び、いち早く患者と接触して初期治療を開始するメリットはすでに証明済みだが、これまでドクターヘリの出動要請は、119番通報から始まっていた。

1)事故が起きる
2)当事者や目撃者が119番通報をする
3)119番通報を受けた消防指令室が、ドクターヘリを要請する(先に救急車を出して、現場に行った救急隊が要請することもあり)

でも、119番通報~消防指令室とのやりとりの時間が短縮できたら、もっと早く患者の元に行けると考えて開発されたのがD-Call Netである。

◆弱点と対策

これまで、ヘルプネットのように、車両が衝撃を感知したらそのまま、ヘルプネットのコールセンターにつながり、救急車の手配などをするシステムがあったけれど、D-Call Netはさらにその先を行き、衝撃と同時に該当するエリアの消防本部と基地病院に通報して、ドクターヘリを出動させようというもの。時間が短縮されるだけでなく、だれも目撃者のいない場所での単独事故でも、即座に通報されるメリットがある。

どのくらいの衝撃ならドクターヘリが出動するかのアルゴリズムは、すでに構築済み。重症で医師の早期介入が必要になる事故のみに対応することになっている。

このように、D-Call Netは交通事故の強い味方ではあるものの、ただ、まだ改善点はたくさんある。

ひとつはクルマの問題。冒頭で、5メーカーが参加したと書いたものの、車種によってはシステムが搭載されていないものがあること。

そして、ドクターヘリの運航の問題。ドクターヘリは、朝8時半~日没くらいまでしか稼働しないため(基地病院によって異なる)、夜間の事故には対応できない。また、雨でも飛べるけれど、霧で視程が短かかったり、台風のような強風のときは飛べない。

さらに、県に1機のドクターヘリ(北海道は3機)では、重複して要請があったときは、対応しにくいこと(隣県応援の体制があるところもある)。

でも、そういった弱点を補うべく、千葉県や群馬県などでは、病院に常駐するドクターカーで医師を運ぶシステムを組み合わせているところもある。D-Call Netはドクターヘリから始まったけれど、今後は、救急対応できるドクターカーを活用すれば、もっと交通事故の対応が可能になるはずだ。

ただ、病院の外に医師や看護師がどんどん出ていくことになると、今ですらブラック企業なみに過酷な勤務状態の救急医たちが、倒れるんじゃないかと心配になる。我々自動車ユーザーはD-Call Netにお世話にならないよう気をつけなければと改めて思うのである。

◆東京都には、ドクターヘリがない

そして、もうひとつの課題は、東京を活動拠点にしている私にとってものすごく重要なのだが、東京都には、ドクターヘリがないことだ。

えー。ダメじゃん!

隣県応援の体制があるといっても、もともとドクターヘリを持っていない東京では、周囲の県のドクターヘリは応援に来てくれない。だって、東京消防庁がドクターヘリの呼び方を知らないんだもん。D-Call Netは、消防と病院に通報するといっても、今のルールでは、消防が「出動お願いします」と声を上げなければ、病院で待機するドクターヘリは飛び立てないのだ。

確かに、東京23区内であれば、必要ないかもしれないけれど、23区外は有効だと思う。さらに、今後、オリンピックで人が集まる場所、羽田空港や、競技会場のある臨海部でなにかが起きたときに、患者を広域に運び出すときも、ドクターヘリは有効なんだけど、そのあたり、どうするつもりなんだろう。せめて千葉県や埼玉県ドクターヘリを呼べるように訓練しておいたらって思うんだけど、どうなんでしょう、東京都?

※D-Call Netは、HEM-Netの登録商標です。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

(レスポンス 岩貞るみこ)

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