UL Japan 鹿島EMC試験所に次世代モビリティ棟、EHV Chamberを東日本初導入…電動化・高電圧化にワンストップ対応

UL Japan 鹿島EMC試験所
成田空港から東関東自動車道を伝って東へクルマで30分。鹿島臨海工業地帯の手前、佐原香取ICで下りて山道を行くと、のどかな田園風景のなかに真新しいラボが見えてくる。これが UL Japan 次世代モビリティ棟。鹿島EMC試験所内に完成した最新のEMC試験施設だ。

UL Japan は12月2日、コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化のCASEという自動車トレンドに順応させるこの次世代モビリティ棟(千葉県香取市)をメディアに公開。同社コンシューマーテクノロジー事業部 橋爪正人事業部長はじめ、現場担当者らの案内のもと、車載EMC暗室や電気試験室、校正室など、電動化トレンドを全方位でワンストップ受注する現場を歩いてみた。

EMC(電磁両立性)は、電子機器から発生する電磁波が他の電子機器に妨害する電磁波妨害(EMI:Electromagnetic Interference)と、その電子機器が外部からのノイズにどれだけ耐えられるかのノイズ耐性、電磁感受性(EMS:Electromagnetic Susceptibility) の両立を意味する。

今回、UL Japan 次世代モビリティ棟が出現した鹿島EMC試験所は、愛知県みよし市のオートモーティブテクノロジーセンター(ATC)をはじめ、三重県伊勢市の本社EMC試験所、神奈川県平塚市の湘南EMC試験所などに次ぐ、東日本エリア最新施設。2020年1月6日のサービス開始を前に「すでにオーダーが入っている」という。

UL Japan 次世代モビリティ棟の最大の売りは、愛知県みよし市のATCにしかない EHV Chamber を、2基配備したこと。UL Japan にとっては「第四の投資」で、約11億円をかけ、ここ鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟に EHV Chamber を2基導入。これで、東日本でも国際規格「CISPR 25 :2016 Ed.4 Annex I」(シスプル)、「ISO 11452-2 Ed.3 Clause 8」、そして中国の国家標準規格「GB/T 36282-2018」に対応するEMC試験が実施できるようになった。

◆背景にクルマの電動化・高電圧化、新規参入企業増

UL Japan が千葉県香取市にある鹿島EMC試験所に EHV Chamber を配備した最新暗室を設置した背景には、加速するクルマの電動化・高電圧化、これまでとは違う業種・業態の企業がEV関連に続々と新規参入するといったトレンドがある。また、前出の CASE のように、コネクテッドや自動運転の実現にむけてさらにEMC試験の需要が増えていくのに対応し、東日本エリアに先手を打つ格好もある。

こうした背景のもと、UL Japan が次の一手として打った鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟へ入ってみる。と、愛知県みよし市のATCよりもさらに清潔感とゆとりがある空間がまず印象的。車載器やEV駆動用モータなどを搬入搬出するさいにもスムーズに移動できる。

1階フロアには、車載EMC暗室+オペレーションルームが3ブロック、うち2ブロックが EHV Chamber +試験用ダイナモを備えている。さらに電気試験室が3室、外部に情報がもれないように配慮した個室(ビジタールーム)などをレイアウト。2階フロアには、大人数を収容できる会議室や食堂がある。

UL Japan EMC試験所の最大の売りである EHV Chamber は、最高トルク125Nm、最高回転数1万2000rpm、動力吸収容量170kWの実負荷までを再現できる固定型ダイナモメーターを搭載。また、ダイナモの減速機を暗室外側に配置するよう再設計し、電波暗室内に配置する金属物の大きさを最小限にとどめることで、金属物の影響をより受けにくくし、より確かな測定ができるようになった。

愛知県みよし市 ATC のEHV Chamber と違うのは、そのダイナモのレイアウト。ATCは仮想シャシー左側に設置していたのを、鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟では右側にレイアウトし、より実車に近い環境で測定することをめざした。

もうひとつ、鹿島EMC試験所の特長は、GM、フォード、ジャガーランドローバー、マツダの認定試験所として、EHV Chamber でも各車両メーカーの認定を受ける予定で、各メーカーの規格に対応した各種試験を実施できる点。「とくにフォード向け各種試験などは需要がある。国内にはフォード向け認定ラボが3社があるなか、ここ鹿島EMC試験所は、フォードの各種試験をすべてワンストップで対応できるのが強み」という。

◆高電圧対応電気試験室や、国内最大級の校正室も備えトータルに対応

最近の電気自動車やハイブリッド車のバッテリーが12・24・48・300Vと高電圧化し、その要求事項が激しく変化しているといういま、鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟の電気試験室も高電圧化に対応。最大1000V 240Aの双方向高電圧DC電源を備え、愛知県みよし市 ATCや伊勢本社EMC試験所の対応設備を上回る高電圧電源で幅広い測定を実現。LLC用チラーなどによる冷却設備も充実させ、実車に近い試験環境を再現できる。

そして最後に見学した施設が、校正室。校正というと、出版業界などの誤りや不備を正す作業を連想してしまうが、EMC試験所の校正は、測定器が示す値と真の値の関係を求め目盛の補正などを行う作業。国内最大級規模を誇るこの鹿島EMC試験所の校正室では、他社の測定器などの校正オーダーが相次ぎ、「こうしたISO/IEC17025認定校正サービスなどの派生サービスも充実していることから、ワンストップでEMC試験を任せられるという点で、UL Japan EMC試験所が支持されている」とも伝えていた。

鹿島EMC試験所では、このEMC測定機器校正のほか、アンテナ校正、磁界メータ校正、電界プローブ校正などの各種サービスも展開。「無線試験などもワンストップで対応する」とアピールする UL Japan は、今回の次世代モビリティ棟がオープンすると、日本国内で24基の電波暗室が稼動し、第三者機関の商用施設としては国内最大規模になるという。

さらに、UL Japan はもうひとつホットな話題がある。建設機械分野で先手を打って出たというニュースで、本社がある伊勢市に建設機械などの大型機器に対応する大型EMC試験棟をいままさに建設しているところ。この「第三者機関として国内初の建機向け電波暗室」もいよいよ出現し始め、今後の市場拡大に備える建機メーカー各社も UL Japan の動きに注目している。

(レスポンス 大野雅人)

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