電動スクーターは来年中に、ガソリン車よりも良くなければ…ヤマハ発動機 日高社長[インタビュー]

ヤマハ発動機 日高祥博 社長
ヤマハ発動機の日高祥博社長は静岡・磐田市にある本社で報道各社のグループインタビューに応じ、電動化への対応や、ゴルフカートをベースにした超低速自動運転車を使った実証実験の取り組みなどについて語った。

◆電動バイクの市場性と、新開発のモーター

----:「東京モーターショー2019」で新型の電動スクーターを世界初公開したが、ヤマハ発動機の電動化への取り組み状況は

日高社長(以下:敬称略):東京モーターショーで新型のスクータータイプ『E01』、『E02』を出したが、もう商品は、ここ1年以内にレディツーゴーというところまで来ている。ほぼモノとしては来年中には発表できるということで開発が進んでいる。

それ以外にも、ゴルフカートの領域では、もともと鉛電池を使っているが、リチウムイオン電池への対応。またフューエルセルも含めた環境対応といったところの技術も進んでいる。とくにリチウムイオンはもう実際に街で使えるレベルまで来ている。


新しい取り組みという点では、ヤマハ発動機という会社はもともと小型の原動機エンジンをコアコンピテンシーとして成長してきたが、当然、電動化ということになるとそれが生かせない時が、いずれくる。そういうことを考えて今、外販できるモーターを開発している。

このモーターはスクーターなどの小型向けの出力ではなく、もうちょっと大きい出力で、あわよくば四輪車メーカーに使って頂きたいというものを開発している。使って頂けるプロトタイプレベルのものには来年早々には仕上がると思う。

----:電動バイクを巡っては国内二輪メーカー4社が2019年にコンソーシアムを立ち上げたが

日高:いろいろと検討していく中で、やはり最後はバッテリーの規格をどうするのかという点になる。
同じバッテリーをみんなが使えるようにしないと、お客様も不便だし、インフラ投資も2重3重にかかるということで、今、コンソーシアムではバッテリーの共用化の議論をしている。すでにホンダがいろいろと実証実験しているので、それをベースに4社が納得できる共用バッテリーの規格を確認していくということを、みんなで協議しているところ。

----:電動バイクの市場性は


日高:値段、性能、使い方にあった航続距離がガソリンエンジン車よりも良いということにならないと普及しない。もしくはエンジン車を売ってはならないと国が決めた瞬間に電動車しかないようになる。電動バイク普及の条件は、この2つしかないとシンプルに思っている。

我々は前者のガソリン車に負けない性能、もしくはお客様側から見た使い勝手、利便性がどこで電動車が上回るようになるかをみているが、結局バッテリーをどれだけ積むかということと、その際の充電頻度をどうコントロールするかということになってくる。

ガソリン車の『ビーノ』は3リットルの給油で最低2週間、場合によっては1か月くらいは持つが、原1相当の電動『eビーノ』はバッテリー1個で実用レベルで29kmくらいしか走らない。坂があると20kmくらいまでしか走れない。そうすると20kmごとに充電が必要になるが、それが毎日5~6kmくらいしか乗らないという人であれば3日に1回くらいで済むし、お客様が毎日家に帰ってから充電しても良いというのがスタンダードになれば、バッテリーを2つ積めるようになる。

そうなれば最高時速を上げながら、航続距離もそれなりのものができるようになる。そのバランスが、どこでお客様の利便性とコストとがクロスするかを今見ているところ。規制がなければ、急激に電動にシフトするようなことはないと思う。

◆厳しい原付1種、少子高齢化と自動運転の可能性


----:国内の二輪市場の見通しは

日高:原付2種、軽二輪、自動二輪は何とか対前年でプラスが続くようなマーケットになってきた。これはやはり各社が、とくに原2でいうとホンダがものすごく海外からのラインアップを広げて頑張っていらっしゃる。軽二輪の方は私どもも含めて各社が、若い人でも買いやすい50万円台の250ccスポーツが出てきているので、若い人が少し増えてきている。自動2輪の方はカワサキの『Z900RS』、スズキの『カタナ』がずっとブームになっていてリターンライダーが戻ってきてくれているということで、趣味財中心に良い感じになってきている。

だが引き続き厳しいのが原付1種。若者のモビリティ離れ、電動アシスト自転車や軽自動車も含めて選択肢が増えていることもあって、原付1種は減少している。それでも原付1種を必要とされている方がいるので、なんとかこれを維持しようと努力するとともに、若い人にまず原付1種に乗ってもらおうということに一所懸命、各社が取り組んでいる。

その一例がシェアリングやレンタル。もちろん新車が売れるようになった方が良いが、そもそも乗る機会がないと二輪離れは進んでしまうので、乗る機会を少しでも増やそうということでシェアリングや、中古車による月極レンタルなどもやっている。


----:ヤマハ発動機はゴルフカートをベースにした超低速自動運転車の実証実験を各地域で行っているが、その成果や課題は

日高:いろんな他業種の方々と連携をとりながら、日本のかなりの地域で実証実験が進んでいる。我々が期待しているのは時速20km未満の低速で走るので、事故が多分少ないだろうということ。仮に多少の接触があっても軽い車両でしかもスピードが出ていないということで被害も小さくなる。安全性という意味で、普通乗用車に比べればはるかに安全度は高い。またコストも安く提供できる。

ドライバーの高齢化が進み、公共交通機関がどんどんなくなるということが日本の地方で結構出てきている。一方で運転手を確保できても市民の税金をつぎ込んで維持しているという点では、低速自動運転車をものにしなといけないというのも大事なポイントだと思う。

石川・輪島市では道路に電磁誘導線を埋め込んで自動運転を目指しているが、路側駐車があると止まってしまう。路側駐車してるクルマがどかないと前に進まない、たったそれだけのことで自動運転が寸断されて定期運航ができない。結局、運転手が乗って、何かあると運転手がそれを回避するようにしなければならない。

電磁誘導をやっても、実際の交通環境の中では本当の自動運転にはならないということがよくわかった。やはりライダーなど様々なセンサーを使いながらレベル3ができるようにならないと、本当に必要としているところに低コストでラストワンマイルの足を提供することができないと私自身も思った。

(レスポンス 小松哲也)

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