圧倒的なグリップ力の進化を実感…ブリヂストン「POTENZA RE-71RS」試乗体験記

POTENZA RE-71RS
「まるで小宇宙だな」 目の前に、黒いゴムの塊がある。それをしげしげと眺めていてふっと頭の中で駆け巡ったのがこの思いである。

空気入りタイヤが発明されたのが1888年。それから24年後の1912年にタイヤは黒くなった。炭素粉末の「カーボンブラック」を混ぜ込むことで、耐久性が飛躍的に高まることが発見されたのからだ。

それまでのようにゴムの樹脂を固めて成型しただけでは耐久性に劣る。それ以来108年、いまだにタイヤは「カーボンブラック」に依存しており、黒いままでいる。

口にいれるお米やパンでさえ赤くなったり茶色くなったりするのに、タイヤはいつまでたっても黒いままでいる。もうそろそろ、白くなったり赤くなったりしてもいいころだと思う。

黒いだけじゃなく、丸いという点でも変化がない。さすがに三角になったり四角になったりしては転がりづらそうなのは感覚的に想像がつくけれど、真円運動するホイールを包むようにして路面と接するというスタイルは、空気入りタイヤが発明される前から違いがないのだ。いつまでも「葉書一枚」で接するだけでクルマを支えている。これはもう、絶対に背くことのできない物理の法則と同質のような気がする。

だというのに、タイヤの開発技術とは恐ろしいもので、日々進化を遂げていくから不思議である。特に、スポーツカーとの相性が良いスポーツタイヤの進化には腰を抜かし掛けるのだ。

◆見た目の変化は小さくとも、性能の進化は歴然

今回テストドライブしたブリヂストン「ポテンザRE71RS」を履いてつくづく実感したのがそれ。先代の「ポテンザRE71R」とは視覚的に大きな違いはない。ネーミングに「S」の文字が付け加えられただけであり、路面に触れる葉書一枚で路面に接するトレッドデザインには変更があるものの、気に留めて凝視しなければただの「黒くて丸いゴムの塊」のままだ。だというのに、履いて走らせると違いは歴然なのである。

単純に言えば、グリップ力が高いのである。トヨタ『86』とスズキ『スイフト』という、駆動方式が異なる2モデルに履かせた印象は、「ガッチリ接地する」という点で共通していた。

コーナーに飛び込む際の、ハンドルを切り込む過程の挙動にもフィーリングにも「RE71R」との極端な違いはないのだが、本格的に限界まで追い込み、タイヤが激しく悲鳴をあげそうになる瞬間になって違いが露わになる。そんな過激な状況でも、タイヤがしっかりと路面に吸い付いていてくれたのである。先代の「RE71R」でさえ充分に高性能だと満足していたのだが、さらに進化していたことは驚きだった。

ハンドルを切り込んで、これ以上は曲がれないだろというタイミングでさらにハンドルを切りたしても、グリップ力は衰えない。その特性に甘えて、ついついハンドルを切りすぎてしまう場面があったほどである。

つまりは、タイヤが路面と接するトレッド面の外側にクルマの体重でのしかかっても、それには負けない剛性が確保されているということだ。

一般的には、荷重をかけ過ぎるとグリップ力が破綻し始める傾向にある。タイヤが転がる方向と実際の進行方向のずれが大きくなると、スリップアングルが破綻することもある。その現象が軽微なのである。

そもそもゴムが路面に吸い付くような感覚がある。ゴムが路面に微細な凹凸に、爪を立てるように喰い込む。そして握って離さない。そもそも接地力が強いうえに、舵角を増やしていっても吸い付いたままなのだから、こんな頼もしいことはないのである。

◆0.2秒/kmほどの性能差を実感

旧型のRE71Rに比較して、0.2秒/kmほどのサーキットアドバンテージがあるように感じた。2kmのコースを走ったら0.4秒である。1周6kmの鈴鹿サーキットで勝負をしたら、1.2秒もの大差をつけること可能である。ライバルはバックミラーの中で小さくなっていることだろう。

コンペティションの世界での0.2秒/kmは、決定的な差である。勝者と敗者であるばかりではなく、例えばそれがレースだったらポティウムでシャンパンシャワーを振り撒けるか、その飛沫を、勝者を見上げながら浴び屈辱的に耐えるかの差になる。致命的な性能差といって良いだろう。

◆速さが増しているのに、耐摩耗性もアップ

ブリヂストンの資料によれば、それでいて、磨耗ライフも伸びているというのだから感心する。グリップ性能と耐摩耗性は、一般的には相反する性能だとされているからである。速いタイヤは減るというのが相場なのに、それを実現したというのだから技術の進歩はとどまることを知らないかのようだ。

改めてRE71RSを眺めて「タイヤは小宇宙」であるとの思いが甦ってくる。この黒くて丸い塊の中で、まるで惑星や衛星が互いに干渉しあって銀河系を形成しているかのように、ミクロの分子が躍動してタイムを削り取っているのである。

(レスポンス 木下隆之)

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