『クルマはトモダチ』進化型GRヤリス、欲しくてたまらない!…山田弘樹連載コラム

  • トヨタ・GRヤリス

みなさん、ゴキゲンよう!
つ・い・に、キタ━(・∀・)━!!!!
来ましたね、新型GRヤリス。いや、正確に言うと「進化型GRヤリス」だそうです。

その姿は東京オートサロンで世界初公開され話題になりましたが、これを先行して袖ケ浦フォレストレースウェイでは、プロトタイプ試乗会が行われていました。私もカービューでインプレッションしたので、お時間があるときに読んでみてくださいね。

そしてこのコラムではいつも通り、「クルマ好き目線」でその印象を、がっつりレポートします!

というわけで、新しくなったGRヤリスですが。
その走りを思い出す度に、わたくしニヤニヤします。
そして、心の中で「欲しいなぁ」とつぶやくたびに、心臓がドキドキします。……歳かなぁ。

つまり進化型、すっごくいい!

もともと私は、大のGRヤリス推し。
ただ自分で買うと想定したとき、ちょっと迷いがありました。
「このクルマ、スゴ過ぎるんだよなぁ」って。

小さなボディに、ガッシリとした足周り。そこに可変トルク型4WD「GRーFOUR」を組み合わせた走りは、まさにナンバー付きのラリーカーです。1.6直列3気筒ターボの加速力も、Bセグハッチとしてはハンパない。

でもサーキットでガッツリ走らせると、なーんかちょっと、運転しにくかった。その速さにうまく対処できなくて、「もっと自然に曲げられたらなぁ」とか、「オレが下手くそなんだろうなぁ」って、乗る度に感じていたんです。

運転がイマイチなのは、間違いない(笑)。
しかし進化型GRヤリスは、すごく気持ち良く運転できたんです。
しかもその懐が、か~なり深かった。

  • トヨタ・GRヤリスのフロント

    進化型のフロントバンパーには、モータースポーツ参戦のノウハウがぎっしり。リップのサイド部分が3分割となるのは全日本ラリーからのアイデアで、クラッシュ時の交換コストを抑えるため。またフロントグリルのスチールメッシュ化は、スーパー耐久からのアイデア。従来フォグランプを配置した部分は、左側がATFオイルクーラー用、右側がサブラジエター(オプションのクーリングパッケージ装着)用の冷却用開口部となった。

  • トヨタ・GRヤリスのリア

    ハイマウントストップランプ位置が下がったのは、スポイラーをカスタムしやすくして欲しいというユーザーの声を受けて。またラリーでバンパーをヒットした際、損傷を防ぐためにバックランプを上部へと移設し、かつ走行風のバンパー溜まりを解消するために下部がメッシュ化された。正に闘うマシンのカッコよさ。

ちなみに試乗当日は、あいにくの雨。とても緊張感の高いコンディションでした。
そんな状況でも進化型GRヤリスの乗り味は、実にしなやかでした。ブレーキングではその荷重をきちんと受け止めた上で、サスペンションが突っ張ることなく沈み込む。そしてこれをリリースしながらハンドルを切って行くと、フロントのグリップが高まって、“スーッ”と穏やかに向きが変わる。
ものすごく理想的な、ターンインの挙動なんです。
もうこれだけで、「買う!」って思いました。

さらにブレーキのリリース時間を長めれば、向きを大きく変えることも可能。そしてアクセルの踏み方次第で、そのアングルや滑る量までコントロールできたんです。

  • サーキットを走行するトヨタ・GRヤリス

    ウェット路面のサーキットで、抜群のコントロール性を見せた進化型。ただ実は雨だと、現行型も向きは変えやすかった。もちろん足周りの洗練度は進化型の方が上だが、今回のようにタイヤへの入力が小さいコンディションであれば、そのステア特性はかなり良い。

エンジンパワー、304PSに上がってるんですよ?
それなのに、コントロール性がとっても素直なんです。
イージーな言い方をすれば、「オレでもGRヤリスでドリフト、できちゃったよぉ!!!!」という喜び。
気分は、ラリースト。「奥さん、コレ買ってもいいですかぁ!!!!? 」と、心で叫びました。

  • トヨタ・GRヤリスのエンジン

    エンジンは最高出力が従来の272PS/6500rpmから、304PS/6500rpmへ向上。最大トルクは370Nm/3000-4600rpmから、400Nm/3250-4600rpmまで引き上げられた。その値はGRカローラと同等となったが、最大トルクの発生回転数は250rpmほどGRヤリスの方が高い。現行型で進化型を追いかけてみたが、ぶっちぎられた……。

そして、この感じ何かに似ているなぁ? と思ったんですね。
思いついたのは、「シビック タイプR」でした。先代FK8型って、確かに速かった。クルマの完成度も当時はすごく高いと感じていたけれど、一方でなーんか、ちょっと怖い感じがしたんですよね。
しかし現行モデルになったとき、その“うすら怖さ”がなくなりました。そして「あぁ、こういうのを進化というわけね!」って思ったんです。

いくらすごいと感じても、怖いと感じさせるようじゃ、まだまだ。
「速くて楽しい!」のが、成熟したスポーツカーなんだなーって。
これは私の、ジャーナリストとしての学びにもなりました。

その要となったのは、ボディ剛性です。
進化型GRヤリスはラリー現場からの要求で、ダンパーのトップマウントをボルト1本締めから、3本締結にしました。
さらにスポット溶接を13%、構造用接着剤の塗布面積は24%増やしています。
だから出力アップに対してサスペンション剛性を高めても、これを狙い通りにストロークできるのです。

GRヤリス最大の特徴である4WDの前後トルク配分は、今回から加わった「GRAVEL」(グラベル)モードが一番良かった。
ちなみに通常の制御は、60:40で変わらず。これまで30:70としていた「スポーツモード」がなくなり、「TRACK」モードが30:70~50:50まで、状況に応じて可変するようになりました。

  • トヨタ・GRヤリスのホイールとタイヤ

    タイヤサイズは225/45R18(ミシュラン Pilot Sport PS4S)のまま変更なし。サスペンション剛性は高められたようだが、ボディ剛性が上がったことでむしろ現行型よりもしなやかだと感じた。エンジンルームのアッパーマウント部が、3本締めになっているのは要注目。

  • トヨタ・GRヤリスの運転席

    進化型の操作性を大きく引き上げていたのがシートポジションの変更。たった25mmのローポジション化で体の重心が下がり、ペダルと足の角度も良くなって、とても運転しやすくなった。シートそのものに変更はないとのことだったが、シートバックを寝かせられるようになった分、体への密着度も上がった気がする。

そして開発ドライバーである大嶋和也さんも「名前はグラベルですけど、サーキットでもこのモードがお勧めです」と教えてくれたわけですが、私もこの“大嶋モード”がベストだと感じました。

それはきっと進化型の足周りが、より曲がりやすいセッティングになったからなんでしょうね。ターンインでリアを穏やかにスライドさせて向きを変え、トラクションを掛けて行く場面では、フロントトルクで引っ張るグラベルモードの方が、コントローラブルなのだと思います。

でもこれって、雨の日だからできたのかな?
すると大嶋さんは「ドライの方が、もっと楽しいですよ!」と教えてくれました。そして「 本当は、ドライで乗っていただきたかったです」と、少し残念そうにされていました。
そんなの聞いたら、ドライで乗ってみたくなっちゃう!
とはいえ、雨の日にこれだけ感激できるスポーツカーも、なかなかないですよ。

  • トヨタ・GRヤリスの8速「GRーDAT」のシフトノブ
  • トヨタ・GRヤリスの6速MTのシフトノブ

    新開発した8速「GRーDAT」のラインナップもセリングポイント。ただ変速スピードはかなり速かったが、8速クロスレシオという割には、ピックアップが6MTより鋭くなっている印象はなかった。むしろATなのに6速MTと同等以上の加速が得られ、ヒール&トゥを気にせず運転に集中できることがメリットか。ちなみに8ATは、パワステの手応えも軽めだった。ユーザー層を考えた敢えてのセッティングかと思いきや「本来は同じようにしたかった」とのこと。こうした部分も含めて、少しずつ進化させて行くのがGRヤリスなのだろう。

うーん、困りました。
ファースト・インプレッションを終えてワタクシ、進化型GRヤリスが欲しくてたまりません。家に帰って奥さんの横で、それとなくつぶやいてみましたが、華麗にスルーされました。

進化型GRヤリスの発売は、春ごろと言われていますね。
走りにこだわるなら、絶対進化型。現行型はまだ販売中ですが、それが進化というものです。そして中古車市場で現行型が、少しでも買いやすくなれば、これも意義あることだと思います。

うーん、進化型GRヤリス欲しい。

  • トヨタ・GRヤリスのインパネ
  • トヨタ・GRヤリスのインパネの操作イメージ

    賛否両論を巻き起こしている、話題のインパネ(笑)。フルハーネス状態でも手が届くようにスイッチ類が配置され、中央モニターを50mm下げて視界を良くした上に、ドライバー側へ15度傾斜した。ただ車両情報は既にメーターで得られているし、雰囲気は出るけどナビまで傾ける必要があったのかは疑問。ラップタイムやロギングデータが確認できるなど、今後の拡張性で驚かせて欲しいところ。

山田弘樹

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。


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