レクサスUX vs トヨタC-HR 比較試乗レポート(その1)

新型クロスオーバー、レクサスUXの乗り味はどのようなものなのか? 先行して発売されたトヨタのSUV、C-HRと比較しながら、走りの質や使い勝手についてレポートする。

同じプラットフォームを持つ兄弟

立ち上がりは好調。発売1カ月で8800台のオーダーが集まったというから、新たなエントリーモデルとしてブランド初のコンパクトクロスオーバーを用意するというレクサスの英断は、まずは大成功といってよさそうだ。

そもそも今、コンパクトなSUVセグメントは大ブレイク中で、ここ数年の間にもさまざまなニューモデルが投入された。世界的な状況も一緒で、輸入車の選択肢も一気に増えて、このセグメントへの視線はますます熱くなってきている。そんなタイミングも味方したのは間違いないだろう。

レクサス初のコンパクトクロスオーバーとして誕生したUX。ハッチバック車とSUVの長所を兼ね備えるモデルとして開発された。
レクサス初のコンパクトクロスオーバーとして誕生したUX。ハッチバック車とSUVの長所を兼ね備えるモデルとして開発された。

このUXは、レクサス車としては初めてトヨタ自動車の新世代車体構造であるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)のGA-Cプラットフォームを用いて生み出された。GA-Cといえば現行トヨタ プリウスに始まりC-HR、カローラ スポーツにも用いられ、特にその走りの質の高さが評価されている。

あるいはUXの購入を検討している人の中には、C-HRも気になるという方、いるかもしれない。価格帯が異なるだけに直接比較されることは少ないだろうが、どれだけ違うのか、あるいは同じなのかは確かに興味深いところだろう。

そこで、ここではこの2台をじっくり比較してみることにした。俎上(そじょう)に載せるのは、UXが2リットルの自然吸気エンジンを積むUX200“version L”、C-HRが1.2リットルターボエンジン搭載のG-Tである。

今回乗り比べるのは、UXと同じプラットフォームを持つトヨタC-HR。個性的なスタイリングが大きな特徴のひとつとなっている。
今回乗り比べるのは、UXと同じプラットフォームを持つトヨタC-HR。個性的なスタイリングが大きな特徴のひとつとなっている。

C-HRは好みが分かれる?

とはいいつつも、あらためてこの2台を並べると、成り立ちを知らなければ同じジャンルにくくる気にはならなかったかもしれない、とも思ってしまう。

UXは全高を多くの立体駐車場に入る1540mmに抑えながら前後フェンダーの塊感を強調したフォルムによって、SUVの力強さとハッチバック的な軽快感をうまく両立させている。コンセプト通り、街中での使いやすさを想起させ、しかも街中で映えるデザインは秀逸だ。

2台の試乗車を並べてみる。今回ピックアップしたレクサスUX200“version L”(写真左)のボディサイズは全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm。対するトヨタC-HR G-T(右)は同4360×1795×1550mm。
2台の試乗車を並べてみる。今回ピックアップしたレクサスUX200“version L”(写真左)のボディサイズは全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm。対するトヨタC-HR G-T(右)は同4360×1795×1550mm。

一方のC-HRも実は全高は1550mmと低いのだが、その全高の半分近くまで達する大径タイヤと、それとは対照的にコンパクトにまとめられ、前後ウインドゥが思い切り寝かされたクーペのようなキャビンによって、まるでオフローダーの様式をデフォルメしたかのような迫力あるデザインを生み出している。機能美うんぬんより思い切りファンな要素に振った存在感は独特だ。ただし、率直にいうと、その個性は少々アクの強さにもなっている。デビューから2年がたって街で見かける機会も相当多くなっただけに、ちょっと見飽き始めたという感もなくはない。

張り出した前後フェンダーにコンパクトなキャビン、大きく傾斜したリヤウインドゥ……。C-HRのスタイルは、見るものにインパクトを与える。
張り出した前後フェンダーにコンパクトなキャビン、大きく傾斜したリヤウインドゥ……。C-HRのスタイルは、見るものにインパクトを与える。

積載能力に大きな差

インテリアのテイストもまったく異なる。UXは、落ち着いた仕立て。ガラスの向こうのフェンダーの隆起からダッシュボード左右の峰まで連続したような造形は、室内と外界がつながっているかのような面白い演出だ。10.3インチの大型ディスプレイを採用しながらも、その高さを抑えることで視界をクリアにしているのも好印象。体形を問わず直感的な操作を可能にできるようオーディオスイッチを先端に配置し、前後長にも余裕をもたせたアームレストなど、操作系の配置もよく練られている。

一方のC-HRはスイッチひとつひとつの意匠まで大胆で、若々しい印象だ。フェイクステッチが入れられたソフトパッドが広範囲に使われるなど見た目のクオリティ感も十分に満足できる。TNGAで部品共通化が進んだことで、こうした部分にコストを割り振れるようになったのだろう。

  • UXのインテリア。和紙の質感を思わせるダッシュボードをはじめ、ところどころに日本ならではの美意識が表現されている。
    UXのインテリア。和紙の質感を思わせるダッシュボードをはじめ、ところどころに日本ならではの美意識が表現されている。
  • C-HR(写真)もUXと同様、左右非対称型のインストルメントパネルが特徴。センタークラスターは運転席側に傾いている。
    C-HR(写真)もUXと同様、左右非対称型のインストルメントパネルが特徴。センタークラスターは運転席側に傾いている。

いずれもスペース的には前席優先。良好なドライビングポジションがとれるのもTNGAの恩恵によるものだ。特にC-HRはシートのホールド性が非常に高く、座るだけでスポーティな気分が盛り上がる。とはいえ、後席も決して狭くはない。外観からは広さが期待できなそうなC-HRですら、頭上、足元には十分な余裕がある。後方に向けて低くなっているルーフラインと、リヤウインドゥの小ささによって若干の閉塞(へいそく)感があるかな、というくらいだ。UXもドア開口部は大きくないが、居住性については、よほど大柄な方でない限り不満は出ないだろう。

  • 今回試乗したUX200には、コバルトと名付けられた鮮やかなブルーとホワイトのシートが装着されていた。
    今回試乗したUX200には、コバルトと名付けられた鮮やかなブルーとホワイトのシートが装着されていた。
  • 本革とニットを組み合わせたC-HR G-Tのフロントシート。格子状のパターンも個性的だ。
    本革とニットを組み合わせたC-HR G-Tのフロントシート。格子状のパターンも個性的だ。
  • UXのリヤシート。シートのカラーバリエーションは、グレードによるデザインの違いを含めて全9種となっている。
    UXのリヤシート。シートのカラーバリエーションは、グレードによるデザインの違いを含めて全9種となっている。
  • 囲まれ感のあるC-HRのリヤシート。UXとは異なり、左右席用のアームレストは備わらない。
    囲まれ感のあるC-HRのリヤシート。UXとは異なり、左右席用のアームレストは備わらない。

両車が大きく異なるのはラゲージスペースだ。C-HRは後席使用時で容量318リットル。広くはないが、まずまず使える。一方、UXのそれはたったの220リットルしかないのだ。ゴルフバッグひとつ積むのにも後席を倒す必要があるが、そこはアーバンクロスオーバーを名乗るUXで、「大人4人が乗りラゲージスペースを満載にする機会はそうそうないはず。ゴルフに行くなら後席を倒せばいいし、それ以上のスペースを求めるならNXがある」という明快な割り切りがある。もちろん便利な方がいいが、アレコレ欲張った挙げ句に凡庸な見た目と走りになるぐらいなら、この考えもアリだろう。

  • UXのラゲージスペース容量は220~995リットル。床下には、51リットル(ハイブリッド車は44リットル)の予備スペースが確保される。
    UXのラゲージスペース容量は220~995リットル。床下には、51リットル(ハイブリッド車は44リットル)の予備スペースが確保される。
  • C-HRのラゲージスペース容量は標準で318リットル。リヤシートを倒すことで最大1112リットルにまで拡大できる。
    C-HRのラゲージスペース容量は標準で318リットル。リヤシートを倒すことで最大1112リットルにまで拡大できる。

どちらも期待以上の走り

走りのレベルは、両車ともに非常に高い。本来なら同じプラットフォームを使ってはいても、レクサスの方がはるかにコストを掛けられるものだが、C-HRはそうした枠組みを強行突破するかのようにボディ剛性向上のために構造用接着剤を用い、トヨタ初というウレタン製アッパーマウントを使い、ザックス社製ダンパーを装着するなど走りの資質を徹底的に引き上げている。おかげでボディは剛性感に富み、サスペンションが正確に動いているという実感が得られる。ストロークはしなやかだが安心感は失われず、素早い切り返しでも安定しきっている。強いていえばステアリングフィールがやや薄味なのが難点というぐらいである。

高速道路を行くC-HR。その足まわりにはザックス社製のダンパーが標準装備されている。
高速道路を行くC-HR。その足まわりにはザックス社製のダンパーが標準装備されている。

UXの走りは、まるでコンパクトハッチバックを操っているかのような軽快感に満ちている。ステアリングの手応えは軽いが“冗舌”で、切り込むとクルマがスッと向きを変えていく。フラッグシップのLCにもどこか通じる乗り味に、ブランド内で横串がしっかり通っていることを実感する。ただし、ランフラットタイヤのおかげで乗り心地はやや硬め。またロードノイズも少し気になる。快適性を大幅に引き上げるオプションのNAVI・AI-AVS(電子制御式ショックアブソーバー)+パフォーマンスダンパーのセット、装着はマストだ。

UXのリヤまわりで特徴的なのが、一文字型のリヤコンビランプ。レーシングカーのリヤスポイラーを思わせるフィン型のデザインで、空力性能も向上させる。
UXのリヤまわりで特徴的なのが、一文字型のリヤコンビランプ。レーシングカーのリヤスポイラーを思わせるフィン型のデザインで、空力性能も向上させる。

エンジンはC-HRが1.2リットルの直4ターボで、最高出力116PS。UX200は2リットルの直4自然吸気で、こちらは最高出力174PSを発生する。いずれもトランスミッションはCVTである。

C-HRは低回転域からすぐにブーストが立ち上がるターボのおかげで想像以上に力強く、街中ではとても軽快に走ってくれる。元気よく行きたい時には確かに「もう少しパワーを」という気持ちになるが、総じてスペックから期待する以上といっていい。UXは、文句なしに爽快。実用域ではCVTがトルクバンドをうまく使ってスムーズな走りを実現する一方、いざアクセルを深く踏み込めば、今度はCVTがステップ変速に変わり、高回転域の伸びの良さを存分に味わわせてくれる。今、あえて自然吸気とするメリットは十分。過給ユニットに比べて実用燃費も期待できそうなのがなおのことうれしい。

  • 水冷式インタークーラーが備わるC-HRの1.2リットル直4ターボエンジン。最高出力116PS、最大トルク185N・mを発生する。
    水冷式インタークーラーが備わるC-HRの1.2リットル直4ターボエンジン。最高出力116PS、最大トルク185N・mを発生する。
  • UX200には自然吸気の2リットル直4エンジンが搭載される。最高出力174PSと最大トルク209N・mは、ともにC-HRよりも大きな値となっている。
    UX200には自然吸気の2リットル直4エンジンが搭載される。最高出力174PSと最大トルク209N・mは、ともにC-HRよりも大きな値となっている。

安全装備は「さすがレクサス」

運転支援装備、先進安全装備についても、ともに充実している。C-HRは昼間の歩行者検知機能付のプリクラッシュセーフティなどを含むToyota Sefety Senseや、Bi-Beam LEDヘッドランプなど、主要なものは全車に標準。さらにUXでは三眼フルLEDヘッドランプ、アダプティブハイビーム、そして昼夜の歩行者、昼間の自転車運転者まで検知するプリクラッシュセーフティ、全車速追従機能付のレーダークルーズコントロール、その作動中に車線維持を支援するレーントレーシングアシストなど、まさに最先端の内容が盛り込まれたLexus Sefety System+が搭載される。この辺りは、さすがレクサスというべきだろう。

こうして比べてみると、思ったより似たところもあれば、想像以上に違いも大きかった、この2台。それでもあえて性格分析をするならば、開発意図の通り街中を中心とした普段使いで上質さを感じ、心地よく使えるのがUXで、C-HRはもっと走りを楽しみたい、荷物を積み込んで出掛けたいといったアクティブな層にアピールする存在だといえそうだ。個人的な思いを記すならば、ボディカラーや内装のバリエーションの豊かさ、気の利いた雰囲気にエンジンの気持ちよさで、UX推しというのが結論である。

(text:島下泰久/photo:田村 弥)

[ガズー編集部]

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