常に10年先を見据えて。35回目を迎えた『ランドクルーザーズミーティング』を支えるスタッフが思い描く未来予想図

11月20日(土)と21日(日)の2日間、静岡県にある大路地ファミリーキャンプ場にて「第35回ランドクルーザーズ・ミーティング(LCM)」が開催されました。
ランドクルーザーズ・ミーティングとは、年に1度、東と西で交互に開催される、ランドクルーザーオーナーが最も楽しみにしているミーティングの一つです。

参加車両は60年以上も前に生産されたものから、先日発売開始された最新型300系までが顔をそろえ、それぞれに趣向を凝らし、色とりどりなランドクルーザーが集まります。
そして、そのランドクルーザー1台1台に、そのオーナーの想いや使い方が色濃く刻まれ、素敵なカスタマイズへのこだわりや、へこみや傷なども勲章かのようにお話される姿はとても印象的です。
会場はキャンプ場をベースとして土日の2日間で行われるので、集まるだけでなくキャンプやバーベキューなど、参加者のみなさんが思い思いに楽しんでいるのは、ランドクルーザーというクルマならでは。

ただ、この「ランドクルーザーズ・ミーティング」は、こうした参加者の方々にその場を楽しんでもらうだけでなく、常に10年先を見越しながら運営を行っているといいます。
そこにはランドクルーザーという歴史のあるクルマであること、そしてこのイベント長く愛されるための秘訣を受け継いでいくことが関連しているようです。

GAZOO編集部は、その秘訣がどのようなものなのか知るべく、運営に携わっているスタッフの皆さんを取材しました。

今回の開催は、コロナ禍ということもあり、密になるイベントを避け、静岡県のイベント開催ガイドラインに基づき台数制限が設けられ行われました。

実行委員長の菊地能充さんは、「北は北海道、南は沖縄からと、1年に1度、大切なランドクルーザー仲間に会うために参加してくださっている方々が沢山いらっしゃいます。ランドクルーザーは今年で70周年、ランドクルーザーズ・ミーティングは35回目となりますが、70年の歴史のなかで半分もファンミーティングが開催されているクルマって素敵だなと感じるんです。これからも、みんなが楽しめるミーティングであってほしいと思います」と笑顔で話してくれました。

ミスター・ランクルこと“小鑓貞嘉さん”も参加

また、会場にはランドクルーザーの開発に携わった、ミスター・ランクルこと主査の“小鑓貞嘉さん”の姿もありました。プライベートでの参加とは知りつつも……、せっかくなので小鑓さんにLCMについてお話を伺いました。

「2009年から参加しているんですけど、何にも束縛されずにランクルの隣で語り合っているのが大好きなんです。このクルマをきっかけに、年齢や性別を問わずに沢山の方とつながることのできるイベントって、なかなかないですからね」とのこと。

そんな小鑓さんは、来場者とランクルに対する愛着やカーライフについて話すことを大事にしているそうです。
「一方的に改善点をオーナーに聞くのではなく、オーナーがどういう人で、どんな風に使っているからココが嫌なんだな、と深く知ることが大事だと思っているんです。だからこそ僕は、LCMに毎年参加しています。12年参加していると、誰がどこでどんなランクルに乗っているのか覚えてきますよ(笑)。オーナーさんがランクルをどう感じているのか、どう思っているのか?を受け取りたいし伝えたいんです」と話してくれました。

そして、最近は若い年齢層の来場者も目立つようになり、また違ったおもしろさが出てきたそうです。
「世界中にオフロードカーと呼ばれるクルマは沢山ありますが、オーナーの世代がここまで幅広いクルマって珍しいです。行きたいところに行って帰れる、ということを忠実に守っているシンプルなクルマ。そんなランドクルーザーの魅力に取り憑かれた人が沢山いるというのが、じつに面白いじゃないですか」と愛しそうに会場に並ぶランクルを眺めていた小鑓さんも、そのうちの1人です。

「こういったイベントは、ずっと続けてほしい」と言い残し、次のオーナーさんのところへ颯爽と歩いて行く姿がとても印象的でした。

LCMを続けていくために、若い世代を取り込む

LCM運営チームのメンバーは有志で集まり、会場では無線を持って駆け回っているところをよく目にしました。メンバーには若い方も多く見られ、LCM総監督の勝間田拓己さんは、「今いる若いスタッフを育てていくことがLCMを続けていくために必要なことなんです」と話してくれました。

LCMを続けていくために、若い世代を取り込むことの大切さについて聞くと、「古いクルマのイベントは、衰退していく一方なんです。なぜかと言うと、クルマの値段が上がっていき、若い子が手に入れづらくなるからです。10年後、20年後のLCMのことを考えると、若い世代を取り込んでいくことが重要だと思うんです。10年経ったら、僕は60歳ですからね。そしたら今と同じようには動けないですよ」と勝間田さん。

50代に突入し、やっと余裕ができてきた今、次の世代を育てていきたいという想いを語ってくれた勝間田さん。LCM自体のモチベーションを下げずに、10年後のこのミーティングを考えて行動しているそうです。
「クルマの魅力はもちろんありますが、こんなにLCMが続くのは人間の魅力が強いからだと思うんです。集うクルマも人も魅力的だからこそ、ランクル好きから愛されるミーティングになっているんだと思います」とのこと。

歴史と人気があるクルマということだけに頼っていては、ミーティングが衰退していってしまう。どんなことでも、人の力、魅力というのは大切ということですね。
実際に、参加者の方がスタッフの方とすれ違う時に、挨拶や立ち話などしている場面が、取材中も多くみられました。

合言葉は、「私達の」ランドクルーザーズ・ミーティング

そんな若い世代として象徴的なのが副実行委員長を務めた野村勝太郎さんと宇山浩和さんのふたり。
1人より2人の方がお互いの悪いところを補えるという理由から、今年のLCMの副実行委員長は1人ではなく、野村さんと宇山さんの2人で務めることになったそうです。

大事なのは、みんなで盛り上げていくことであって、そのためならいろいろな形があっていいじゃないかというスタンスのイベント運営、そしてスタッフの柔軟な考え方。合言葉は「私達のランドクルーザーミーティング」で、会場にいる人達全員のミーティングだということに重きを置いているそうです。

そこで次からは、未来のランドクルーザーミーティングを支えていくであろう、29歳の若手2人組にインタビューをしました。

最初にお話しを聞いたのは宇山さん。
「先輩方がしっかりしているので、今回の副実行委員長はとても楽しくできました。僕達2人が少しは役に立てたかなと思うのは、若い人達に情報を伝えるときに、言われたことを咀嚼して伝えたり、SNSを活用したりするなど自分達世代へのアプローチができたところです」と、若い世代らしい考えを教えてくれました。

野村さんにお話しをうかがうと、「今まで先輩にしてもらったことを、自分達も次の代にしていきたいんです。LCMには、年齢や性別の違う方々が沢山いらっしゃいます。いろいろな出会いがあるので、視野が広がるし、さまざまなことを経験できます。ランクルに興味がある人に、こういう楽しい世界があるんだよと伝えていきたいと思っています」という言葉から熱い想いが伝わってきました。

総監督の勝間田さんがおっしゃる、ランドクルーザーズ・ミーティングが継続していくための秘訣「若いスタッフを育てること」「人間の魅力」の継承は、着実に進んでいるようです。

インタビュー中に、自分が80歳になってもLCMに参加できるように、今は若手の自分達ができることをして、後継者を絶やさないようにしたいとも話してくれたふたり。
「80歳だと、足腰とか悪くなってるのかな?」
「いや、その前に長生きしなくちゃだな」
と、すでに50数年後のことを思い笑っていた2人を見て、この野村さんと宇山さんの2人なら大丈夫だと感じました。

イベントを終えて

イベントを終えて感じたのは、全国津々浦々から、この日のために何時間も運転をして大路地ファミリーキャンプ場にやってきたオーナー達は、それぞれ思い思いに充実した時間を過ごしているということです。

帰りに前を歩いていた少年が「大きくなったらランクルに乗りたい」と言っていたのを見て、ランクルの魅力はしっかりと若い世代へと受け継がれているなと感じた筆者なのでした。来年の「ランドクルーザーズ・ミーティング」も楽しみです!

(文:矢田部明子 / 撮影:奥隅圭之)

[ガズー編集部]

愛車広場トップ

MORIZO on the Road